19話
私はアホ面を晒してシンを見つめるしか出来ない。握られた右手が熱い。
「理由を聞いてもいいかしら?」
母が含み笑いながらシンに聞く。わかる!!私も気になるよ!母よグッジョブ!
「…俺は。同時に何かを護れる程、器用ではない…。護るべきものは、後にも先にもこいつだけだ…。」
シンは真っ直ぐ母の目を見て宣言した。
私、今、生きてる…?息してる…?意識よ、戻ってこい。お前の推しが爆弾発言しているぞ!
「フフフ。本番と同じ状況を作りたいということね。認めましょう。では、シャオリー。あなたが宝です。」
「ハッハイ!あの!!宝って何していたらいいの!?」
よし、身体と意識が合致してきた。手先の感覚もちゃんとある。宝の戦闘許可って有りだと嬉しいな。
「そうね。立地の説明ぐらいかしら?戦闘に参加は認めません。それ以外ならまぁ、認めるわ。」
あくまで非力なお姫さまでいなさいってことか……。
これでもかなり破格の待遇だ。
執事の試験は毎年場所が違うのだ。知識になかったから護れませんでした。なんて通用しない。
我が家ではどんな命令でも遂行するのが執事と位置付けされている。
ロベルト曰く、執事の信条というものが存在するらしい。難しい言い回しが多く、私でも完璧に覚えてない。その中の一つを訳すると《どんな不利な状況であろうとも主を護りきる。我らは最後の砦である》という内容がある。
「……あくまでナビゲーターが私の役目ね……。わかったわ。ありがとう。お母さん。」
よーしっ!推しのサポートを頑張っちゃうぞ!
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五分後に敵が狙いに来ると言われて現在私たちは薔薇の道を走っている。
どこに行きたいのか聞いたらなんと目的地が一番奥にある場所だった。
それにしてもシンの脚、早くない?私ナビゲーターなのに置いていかれそうなんだけど……。
「……もう少し、早く走れない?」
「ご、ごめん!これでも私、全力、出して、いるの!」
ええ、お気づきの方もいるであろう。前世でも運動音痴は今世でも引き継がれたそうです。って、初っぱなから推しのお荷物になっているじゃないの……!
「……五分まであと二分ある。それまでに着けるか?」
「はぁ、はぁ。た、たぶん着く……かな!」
断言は出来ない。馬には乗れるのよ?何故か走るのがダメで……。
推しにはかっこいい私だけを見ていて欲しかった……。こんな、こんな筈ではなかったのに……!
「ち、ちなみに。何、の武器を持ってきた、のッ!」
時間が勿体ない。武器によっては私は邪魔になる。
「……武器は剣一本と短剣数本だ。」
「えっ!罠は、ないの?」
嘘ぉ。罠は必需品だよぉ。
「……俺は罠の使い方は……知らない。」
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。そ、そう。あの。魔法の、基礎は知っている?」
「……基礎ぐらいなら……。」
「こうなっ、たら、好き嫌い、なん、て、いって、は、いられ、ない、わよ!」
ようやく目的地に着いた。
息絶え絶えの私を護って数が少ない武器で対応なんて現実的ではない。
なら、あんなに嫌がっていた魔法を何が何でも使ってもらわなきゃ……!
「……使うにしても、俺は呪文は知らない……。」
「呪文?ぜぇ、はぁ。なら、私が教える!属性は?」
「……属性……は。闇だ。」
「闇?なら初歩のブラインドから教えるわね。」
これでも推しの使える魔法や弱点は私は覚えている……!
闇の属性は私は使えないから覚えていても意味はないけれど。ついでに呪文を覚えていてよかった。
「……おまえ、闇の魔法が使えるのか?」
「いいえ、私は使えないわ。けど、覚えていたら相手が次に何をするかわかるでしょ?」
上級者になれば無詠唱をすると聞いたことはあるけど、大概は呪文を使う。
運動音痴な私でも次にくる魔法の範囲が解れば対処ができる。っと思って現在勉強の途中。まだまだ知らない魔法は沢山あるもの。ゲームの知識にないものは勉強している。
さて、ナビゲーターはおとなしくナビをしますか。
特等席で推しの生戦闘を見れるなんて思わなかったからこれは役得ではないでしょうか?
いつの間にかブックマークが300件越えていました!
評価や感想もありがとうございます!
正直モチベーションがかなり上がります。
なんなら豚もおだてりゃ木に登るという状態です。
行き当たりばったりと忙しい話ですが暖かな目で見て下さると幸いです。