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推しを買っちゃった♪  作者: 速水美羽
18/35

18話


 昼食は軽めにして貰った。

 部屋に戻りハーブティーを飲む。


 シンと別れた後、何故か私が緊張してきて手先が冷たい。貧乏揺すりもしたくなってきた。……はしたないからしないけどね!


 ここでルール説明をしよう。今回は執事の試験で実力を確かめるのだそう。執事の試験は私が知るなかで一番難関な試験だと思う。


 用心棒部門の試験だとある程度のレベルがあればすぐ正社員になれるからね。

 まぁ、それでもソロでC~Dランクの魔物をノルマの数だけ倒すという内容だが、執事に比べると優しい方だと思う。


 試験内容は二つある。

 一つ目は対人戦。武器は刃が潰れた物を使用。武器の種類は自由。

 正々堂々の一本勝負をして今ある実力を見るとのこと。これは誰と対戦するのかは母がその場で指名するとのこと。


 二つ目は薔薇の庭を使った隠密と襲撃にあった場合の対処をみる。

 シンには何か一つ護るモノを決めてもらい、制限時間内までに護りきるというものになっている。

 

 普通に考えて、たった一週間そこらの訓練でクリアできる課題ではない。


 だが、私は《可能性》があることを証明したい。喰らいついてくれればそれだけでアピールになる。


 不遇な運命からの脱却。チャンスがあれば誰でも可能性があることを証明する。

 一人の奴隷の人生の可能性を開花するのがみたい。それは半分以上が私のエゴだ。わかっている。

 だが、一生上に上がれないなんて誰が決めた。


 私は転生先の家族に恵まれていただけだ。断言できる。


 もしも私やあなた、大切な人が転生するとしよう。それがこの世界の奴隷だったらと考えたことはないか?


 私は奴隷制度を知ったとき考えた。考えてしまった。

 ゾッとしたね。後悔しただろう。()なら変える力があるのに何故変えなかったの?……と。


 次があるとは限らない。だが、私は転生した。過去にも転生した人はいるだろう。後の世代に現れるかもしれない。


 転生先は奴隷でしたとか、そこから成り上がる展開なんて小説の中でしかありえない。

 力を持つ人が変えないと変われない。人任せかもしれないが身分制度がある以上、これが限界だ。なら、私は切っ掛けをつくる。


 医療が発展していなくて、魔物も野生の熊並みに蔓延(はびこ)る世界。平均寿命は平民で60歳を過ぎれば大往生。

 そんな世界で親の庇護もなく、ましてや親の都合で底辺に落とされる。

 前世の記憶がなければ生きやすいだろう。だって比較対象がないのだから。

 私がやろうとしているのは結局は自分の保険のため。

 奴隷の身分から自由になる機会を増やすための……。



「……お嬢様、お嬢様!」


 ハッと呼ばれて気づいた。振り向けばロベルトがいた。

 今自分の世界に行っていたわ。……最近何だか呼ばれて気づかない事が多い気がする……。気のせいかしら?


「ごめんなさい。今、考え事をしていて……。」


「大丈夫ですかな?奥様からの伝言です。お嬢様には動きやすい服装で来るようにとのことでした。」


 時計をみればあと30分で約束の時間になる。急がないと間に合わない。


「わかったわ。着替えてきます。……そろそろシンに試験会場の下見をさせたらどう?」


 薔薇の庭はそこそこ広い。行ったらダメな範囲には目印もあるのでその説明をしてもらおう。


「先ほどレイモンドに呼びに行かせたところです。」


「そう。ありがとう。あぁ、今日は肌寒いからブランケットを持ってきてくれる?春先とはいえ寒いでしょ?」


 ロベルトは一礼をし、部屋から退出した。


 言われるがまま、何も考えずに動きやすい服装に着替えた。

 この時、よく考えていればと後悔することになるとは思ってもいなかった。




 先に二つ目の試験からやることになったのか薔薇のに集合になった。


 薔薇の庭に着くと周囲には数台の夜間警備に使っている魔道具がフヨフヨと浮いている。

 実はこれ、戦争で敵を捜すための魔道具だったものを自宅警備用に改良したものだ。センサーを搭載し、不審人物や体温がある者がいれば用心棒部門の自宅警備担当に通報される仕組みになっている。

 今では貴族にも普及されつつあるそうで儲けさせてもらっています。

 

 実は前世の知識でチートした結果の一つがこれである。


 提案当初、凄く喰いついてきたのは我が家の商会に所属する魔法使いたちだ。

 エサを貰った鯉みたいで、もう2度とあいつらには提案したくないと思った程だ。それ以来、母かロベルト経由でしか関わらないようにしている。


 それがあるってことはシンの様子はこれで見るみたい。


 シンはまだ来ていないのかな?一言応援を伝えたいなぁ。


 母が私の近くにきた。父も弟もお茶の準備がされている席に座っている。


「お母さん、シンがまだ来ていないみたいなの。私、様子を見に行きたい。」


「待ちなさい、シャオリー。……あぁ、ちょうど今レイモンドが噂の彼を連れてきたみたいよ。」


 後ろを振り返れば胴着を着たシンがいた。そのすぐ後ろにレイモンドがいる。……ってあれ?シンの顔や腕に包帯が巻かれている。

 えっ!?何で?朝見たときにはなかったのに!


「レイモンド、ご苦労。結果はどうでした?」


「結果は後程伝えましょう。……それではシン。二つ目の課題は説明した通りだ。この中から宝を選べ。」


 嘘……。私の知らないところで、試験があったの……?

 かなり楽しみにしていたからショックは大きい。


「……宝…か。」


 シンが見ているのは机に置かれた大小様々なモノ。


 私だったら一番小さいモノを選ぶかな。時間までどこかに埋めておけばいいし隠すのにもってこいだわ。


「……なら、俺はこいつを宝に選ぶ。」


 そう言って私の右手を掴んで母に宣言した。



 ……私…今日が命日でも……いいや。




 


 

 

 



 



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