13話
また今日からぼちぼち書いていきます。
玄関につくと父が母を出迎えていたところだった。
「お帰り蘭花!早く帰って来てくれて嬉しいよ!」
「ただいまエリアス。今回はちょっと相談があるのよ。手紙だと、うまく伝わるかわからないから帰ってきました。」
えぇ!!お母さんが相談!?そんなの一度もなかったのに!
「お母さんお帰りなさい。王都で何かあったの?」
「あらぁ、シャオリー。噂の彼氏は何処にいるのかしら?」
「か、彼氏ではないわ!紹介はちゃんとします。……後で話すけど、取り組みたい事業があるの。だから彼を買ったのよ。」
「そうさ!あんな奴が姉さんの彼氏なんて絶っ対に認めないんだからね!」
エミールがプンプンしながら援護してくれる。
古今東西母親は子どものカレカノを特定したがる生き物なんだろうか?……前世の母も尽く好きな人を聞いてきたなぁ。たぶん娘と恋バナをしたかったんだろうなぁ。
マジで2次元に恋しちゃってますって言えないからさ。親不孝な娘ですまない。
今世の母は口が堅いとはいえ、出来たとしても教えたくないなぁ。……報告する前に特定する能力はあるからどうせバレるだろうけど。
「ロベルトからは報告が来ているわ。いいわよ。明日のお昼過ぎなら時間を空けれるから。」
お昼過ぎっていうと父と母のお茶の時間を割いてくれるってことか。
「ありがとう。お母さん。あ、温泉の報告もあったの。」
「それを先に言いなさいよ。……何か問題があったの?特に問題がなければあなたに任せようと思うのだけど。」
「先に言っておくけど、温泉がある領主と揉めるのは目に見えているから。」
先に面倒なことになると告げておく。
ワンクッションあるだけで衝撃って緩和されるでしょ?
って、まてまて、聞き捨てならないこと言われたんだけど!?
「私に任せるってどういうこと?」
もうすぐ10歳になるとはいえ丸投げされるとは思っていなかったんだが?
「どういうことってそのままの意味よ?だって私忙しいもの。」
確かに、母は忙しい。正論すぎる。……いつかは商会の仕事を任されるとは思っていたけど一つの事業を任せるって……。
「それより、問題の領主って……西?南?それとも北かしら?」
「南です。」
「あぁ、わかったわ。此方で対処しとくよう手配するから。あなたはどんな店にするか考えておきなさい。」
「……では、領主の件も私がどうにかする。この問題を自力で解決出来なければ私にとって意味はないのでは?」
「……そうね、いいわ。やれるところまでやってみなさい。秘書の一人を貸してあげるから領主の件。自力でどうにかしてみなさいな。」
血が沸々と高揚するのがわかる。自分の力でどこまで通用するか試すチャンスだ!
「ありがとう!お母さん。さっそく細かい打ち合わせをしようよ。」
「まぁまぁ。続きはお茶を飲みながらでもしようよ。蘭花が好きな花茶が昨日届いたんだよ。」
「そうね。玄関で立ち話するには些か不安がありますし。シャオリー、仕事の話は明日にしましょ。」
ハッ!父ナイス!これ以上は盗聴されると不味いからね。興奮してそこのところは油断していたよ。
「ねぇ、お母さんの相談って何?」
私と母にしかわからない話題でつまんなさそうにしていたエミールが聞いてきた。
「あぁ、そうだった。それこそお茶を飲みながらする話になるわ。」
母はロベルトに応接室にお茶を持ってくるよう命じた。
本格的に家族会議が行われそうだな。
ーーーーーーー
応接室に家族が集まりロベルトが花茶を入れてくれる。お菓子は王都で今人気の焼き菓子だ。
私は花茶の香りを楽しみ母が本題を出すのを待つ。エミールは花茶より先にお菓子に手をつける。父はポヤポヤしている。
母が一息つき口を開いた。
「まずは報告から。今年中に我が家は爵位を与えられることになったわ。」
へー、そうなんだ。ようやく母の実力が祖父と同じかそれ以上なのに気づいたのか。
また一代限りの準男爵かな?
「ちなみに爵位は男爵位よ。」
な、なんですって!
「おぉー、すごいね蘭花。おめでとう!」
「えっ?準男爵じゃないの?なんで?」
上から父、弟。私はサッと顔色が変わるのがわかった。
「シャオリーは察しているみたいだけど、子どもたちには15歳になったら王都にある高等教育機関の学園に通って貰うことになるわ。」
ゲッ!マナーの授業が厳しくなる!!こっそり街に抜け出す時間がなくなるのでは?ヒィー!事業も手掛けるからシンには急ピッチで色々と覚えて貰わないと!
「シャオリー、あなたはマナーの授業だけではないわよ。ダンスの授業も増えるから。」
「アッ、ハイ。ガンバリマス。」
「あぁ、そうそう。結婚相手は学園で見つけてきなさいね。学園で婚約者がいない人って家になにかしら問題があるはずだからお金の力でどうにかなるなら捕まえておきなさいね。」
はい、終わったー。失礼だが15歳までに婚約者がいないって地雷案件しか残っていないじゃないの。私結婚するならビジネスに理解ある人がいいなー。
「お母さんのオススメの家ってどこ?」
もうエミールが結婚相手より家って言い始めた。切り替え早いなぁ。
反対しそうな父はというと。
「学園か~。僕は通ってなかったけど、好きな人を見つけておいで。……グスッ、グスッ。シャ、シャオリーの花嫁姿……!」
父よ。相手もいないのに泣くのが早いよ。本番ではどうなるのやら。
「お父さん。まだ相手はいないわよ。気が早いんじゃないかしら?」
「何を言っているの?シャオリー、特にあなたが一番嫁ぎ遅れそうなのに。」
何ですと!失礼な!
「私の勘が言っているのよ。あなたは早めに結婚させないといつまでも仕事が恋人なタイプだと。」
ひ、酷い。私には推しを見守るっていう使命があるのに…シクシク。
……最悪、どこかの子どものいない爺さんの後妻に入って母みたいに仕事で生きていくしかないかなぁ。とは思ってはいたけれど……。
こんなにドンピシャに当てられるとは我が母ながら恐ろしい。
「それと、何処かの子どものいない死にかけの爺さんや後妻に入るなんてことは許さないから。」
「なんで!私だけ条件がこんなに厳しいの!」
「だって私孫は早く抱いてみたいもの。」
「後継ぎのエミールがいるでしょ?」
「あのねぇ、姑がベタベタと子どもに触られるってお嫁さんが可愛そうでしょ?大変な時は手伝うけど、子どもの可愛い盛りはお嫁さんが一番堪能したいじゃないの。私だったらイヤよ。」
だからって娘はいいのか!
それに私は子どもを産む気はないのよ?
前世とは違って医療が魔法頼みな所があるから出産死亡率って高そうなんだけど。……後で調べよう。
嫁ぎ先で子どもが必要なら養子をとればいいだけだし。
「……シャオリーなら相手が中々死ななくて気付いたら殺してしまいそうだわ。そっちのが心配。」
それが本音かぁ!!
誤字・脱字報告ありがとうございます。
また何かあれば報告下さい。