12話
今日は我が家の大黒柱が急遽帰ってくるので皆それぞれが忙しそうだ。人の邪魔にならないように子どもは大人しくしている。
順調なら夕方に帰ってくると連絡があったので私にはまだ時間に余裕がある。なので朝からお医者様を呼びシンの健康診断を受けさせた。
結果は栄養失調気味だが他に目立った病気がないとのこと。
ホッと一息つける。病気が無くてよかったよ。ただ、一つ気になるのが背中にあったムチの痕や根性焼きみたいな火傷の痕があった。
古傷になっているから神聖魔法じゃなければ消えないとのことだ。
神聖魔法とは教会に所属し修行を積むことで神に力を与えてもらう特別な魔法であると教会が唱っている。それが事実かは謎だが。後天的に発現したと数年に一度か二度あるのは事実みたい。
神聖魔法の種類は攻撃・防御・治癒に別れていて特に治癒を持つ神官は少なく、国が保護するレベルと言われている。
乙女ゲームのヒロインである彼女は治癒の魔法が物心がついたときから使える設定だったはず。
まぁ、説明がめんどいので先天的に神の祝福として神聖魔法が使える人と修行をして後天的に神聖魔法を使える人がいると思っていてくれ。
後日にでも教会で治癒魔法が使える神官に消して貰おうかな。
シンが気にならないなら別にいいけど、私の懸念としてはよく物語の中で天気や気圧や寝るときに古傷が痛む描写があるでしょ?それがリアルにあったら嫌じゃない!
お医者様からの診断後はシンは道場に戻るそうだ。まだ母に見せるまでに納得しないとのこと。
「時は有限なんだろ?お前の秘書ってやつになるにはさっさと剣の腕を取り戻す事が今やるべきだと思った。」
お?どんな心境の変化があったんだ?
推しが前向きにこれからを考えているってだけで嬉しい!
「……だから、午後にくるガキどもの相手をする時間がねぇから絡まないようどうにかしてくれねぇか?」
あらら、シンは子どもが苦手みたいね。
「まぁまぁ。あの子達って習いに来ている子もいるけれど、朝早くからご飯の準備を手伝っている子どもも居るでしょ?あの子たちは孤児なの。外から来た貴方に興味津々だから多目にみてね。」
「修行に支障が来そうなら私からあの子たちに伝えるわ。」
シンは少し間を空けてわかったといって道場に戻っていった。
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手持ちぶさたなので部屋で昨日渡された報告書の確認をした。
温泉地はここから約8日ほどかけたところにあるらしい。
ほぅ、距離はまぁまぁいいんじゃない?下手したら国境付近(馬車で約1ヶ月はかかる)にあるって言われるかと思ったもの。
初めの報告書と矛盾はなさそうね。初めの探索は冒険者ギルドに依頼したものだから一応念の為に身内の調査班に行ってもらった物だ。
問題なく話は進むかなって思ったら領主の名前をみて目が止まった。此れも母に報告っと。
……此れは推しの件の他に一波乱来そうだな。
母が帰ってきたと報告があったのは弟と午後のお茶をしていた時だった。
侍女からの報告時、私とエミールは顔を見合わせて母の行動が不自然過ぎることに気がついた。
昨日の定期報告が来たのがお昼過ぎ、王都からの帰りはいつもはゆったりと帰るのに予定より早めに帰ってきた!?
何か王都で無理難題を押し付けられたのかしら?それも早急に。
私たちははしたないが走って母の元へと向かう事にした。
連休中は投稿するのが難しい為おやすみします。