11話
推しの笑顔で危なく昇天するところだった!危ない!心臓がもつかな?
話題を変えようと何か伝え忘れていないかと思ったらそうだ!伝え忘れがあった。
「あ、そうだ。母に紹介する時、もしかしたら剣の腕を見せるからそのつもりでいてね!」
「紹介するのに剣の腕を見せる?何でだ?」
理由は教えてもいいかな?契約結ぶまで黙っているつもりだったのにな~。
どのみち我が家で働くなら教えてもいい……かな!
推しに対して不誠実な事に耐えれそうもないなぁ。
「“危ない橋を渡っている本人程気づかないものだ。”振り替えると危ない橋だったって経験ない?私もないけど、祖父の名言集の中にある言葉よ。
秘書って一番情報持っているでしょ?産業スパイや敵対している人にとっては簡単に引き出し易い相手じゃない。」
「ゲッ、秘書ってそんなに危険かよ。」
「親い誰かが自分の知らない所で危ない目にあっているかもしれない。そう念頭に入れて行動しろってね。小さい頃に祖父が言っていたわ。」
祖父の残した名言の中には教訓も含まれているのがわかる。その人を護れたのかは知らないけど、小さな私に大きな手で頭を撫でられながら語ってくれたことは深く印象に残っている。
「母の説得に一番分かりやすいのが剣なだけよ。他に確か帝国語がわかるならそっちの線でも貴方の価値を示せるけど?」
私も商人の娘らしく価値が低くてもそれをどう輝かせるのが楽しい。
「私の近くなら色んな経験や学ぶ事も多いでしょう。それを貴方が利用するの。そのために秘書兼護衛が融通が利くわ。」
おねがい。私の意図に気づいて!私の近くなら欲しい情報を手に入れる事ができることもあるんだよ!
外伝であなたは言っていたわ。母国がどうなっているかがわからないのが辛かったって!
「……価値がなかったらどうする気なんだよ。」
「価値がない?フンッそんなの有り得ないわ!」
たぶん今私はどや顔なのがわかる。
「初対面の時点で貴方のいいところは20個は言えるわよ!」
前世の情報を合わせたら推しを褒め殺せるのでは?
推しの呆けた顔。あ、かわいい!超レアなのでは!?カメラが欲しい!何でカメラは存在しないのよ!心のカメラで連写しまくっている。
「最低でも自分の身は守れるようになってね!秘書になるにはやってもらう課題がまだ沢山あるんだから!私は貴方に一番の信を置くつもりよ。」
あら?これ実質告白になっているのでは?え、え、どうしよう!そう考えると羞恥心があとからやってくる。
言いたいことは言えた。ならさっさと退散するしかない!
「今ロベルトに母のスケジュール調整を頼んでいるからあとで教えるわね。ではごきげんよう!」
ーーーーーーー
早速ロベルトにお医者様の派遣を依頼する。
ロベルトがサラッともうしておりますと答えた時は驚いた。流石だわ。
「そういえば、お嬢様が頼んでいた調査の方が終えたと報告がありました。」
「本当!?で、結果はどうだったの?」
「結果は此方に書いておりますよ。お部屋でゆっくりお読み下さい。」
「わかったわ!ありがとう。」
報告書の紙の束をもらい、この場で跳び跳ねたいのを耐える。はしたないとまた宿題を増やされても困る。特にマナーの授業はダルい。抜き打ちでテストしてくるから本当に嫌いだ。
転生して耐えれなかったことが一つある。
それはお風呂。前世は朝と夜にシャワーやお風呂に入浴していたから2日に1回のお風呂は耐えれなかった。これでも多いらしいけどね。入れない日は身体をタオルで拭くとかで耐えてきたけれど、無理だった。
そこで私は思い出した。私は転生者。なら他に転生した人が温泉施設を作ってくれているのではないだろうか?結果はビンゴ。約80年前に作って一躍流行った場所があると。
現在オーナーが亡くなってからは細々と続いているが一部のマニアが訪れる程度。
私は母に相談して調査班を送ってもらった。その結果によってはそこを買いとる算段になっているのだ。
買ったらリフォームして新しく旅館にしてもいいし、近くに避暑地の別荘が多いとのことで貴族層を狙った商売もいいかも。
どのみち温泉一本で続かないのはみての通りだから色々と工夫をしなくちゃね。
絶体私の部屋にお湯を引くよう設定するって決めているんだ。
母の国にも温泉があると聞いていたから理解があってよかったよ。……温泉がなかったら将来は母の国に住もうと考えていた。
「お母さんにこの事も伝えないとね。」
「奥様のご予定事ですが、お伝えすることがあります。」
「ん?どうかしたの?」
「奥さまのご帰宅が明日になりました。何やら王都の商談が早めに終わったそうで。」
「早めに?どうしたんだろう。キャンセルになったのかな?まだ商談がかかりそうなのが二件あるって言ってたけど。」
昨日の定期連絡では相手がゴネて商談があと3日程延びるって書いていたけど。
母は基本忙しい。スケジュールは分刻みで仕事をする人だ。秘書が二人もいる。どちらも腕に自信があって信頼も篤い。シンには彼らのような技能を求めてはいない。私も自分の身は自分で守るつもりだからね。他人を守る余裕はありませんもの。
母は基本的に仕事を持ち帰らない。私が話題に出さなければ会話に出て来ないんじゃないかな?
どこの食べ物屋が美味しかったとか普通の会話。
私はこの世界でまだ普及していない便利な物を母に提案した。今回みたいな温泉はおねだりに入る。……おねだりの規模が違うよね。けど、母も温泉は好きだし。私も毎日お風呂に入りたいし。
まぁ、シンを紹介するのが早めになったと考えよう。もうちょっと食べさせてからでもって思うけど。
シンの紹介にあたり時間があればシンの剣の腕を見せる時間は確実にあるわね。
よし!やることが多くなってきたわ!頑張ろう!