表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しを買っちゃった♪  作者: 速水美羽
10/35

10話


 推しを買ってから4日がたった。あれから推しに会えていない。

 報告はロベルトからされるけど、やっぱり推しは生で見たいよね?

 何故会えなかったって?

 私は勝手に外に出歩いた罰として3日間の謹慎を受けていた。謹慎という名の宿題を大量に出されて外に行く暇もなかったのだ。

 …寂しくて半泣きで終わらしたわ!


 今日はね。推しがどんな様子か用心棒部門の稽古場を見学しにきたんだ。

 今の時間はお昼過ぎ、差し入れを持っていざ出発!……と言っても用心棒部門の稽古場は我が家の1本道を挟んだ場所にあり、我が家に何かあればすぐに駆けつけてくれるようになっている。


 朝早くから昼間にかけて男達の稽古の声が響いている。

 お昼から夕方は近所の子どもが習いにきていて将来騎士を目指している子どもが多いかも。

 まぁ、大体は対人戦を想定した稽古だからね。なれてきたら魔物で実践を積むようになる。

 騎士も所属によっては人も魔物も倒すことがあるし、子どもを無償で文字や簡単な計算、体術を教えているところってここぐらいしかないもの。

 立地や状況で人と荷を護ることが多い用心棒部門。脳筋だけでは勤まらない。


 突拍子もないこと言うね。私、割りと何か問題があれば商会を即潰されるかもなって思ってる。

 一代限りの準男爵位(首輪)は現在はない。当主の母が外国の人だからホイホイと爵位を与えられないってことが大きいみたい。


 ……税金を多目に払っているからね。多少は目を瞑ってくれることもあると思うよ。


 勿論何も問題なく商売出来ればいいんだけどね!けど、どこの時代もクレーマや話が通じない相手って一定数いるからさ。関わらないのが一番だわ。



 そんなこんなで稽古場にきた。皆出払っていてとても静か。お弁当を持参している人は残っている筈だし大丈夫だってロベルトに聞いたし誰かしら居るでしょ。

 シンはお弁当を持たせている。

 ……本当は私が手作りしたかったけど、何故か調理場は出入り禁止になっている。何でだろ?ちょっと失敗しただけなのよ?ガスコンロなら使い方解るからイケると思ったのになぁ。まさか釜戸だとは思わなかったわ。ちょっと弄ったら変な音がして壊れちゃったんだ。たぶん老朽化が進んでいたんだろうなぁ。…きっと。


「こんにちは~!見学にきました!」


 奥からダッダッダッ!と大きな足音が駆けてきた。

 出てきたのは今日の当番指導員。ここでは曜日によって指導員が変わる。

 祖父が教える人によって自分に合ったやり方が見つかる筈!!……とのことで当番制ができた。

 今日は剣術の指導だったみたいね。

 2メートルある大きな身体で熊みたいな大男がニコニコしながら案内をしてくれる。

 胴着が汗だくでさっきまで稽古をしていたみたいだ。


「お嬢!ようこそお出でに!先ほど休憩に入ったところで皆昼飯を食いに出払っていますッ!」


「そりゃそうよ。それを見越して来たんだもの。はい、これ差し入れ。後で皆で食べてね。」


 夕方のチビッ子たちならまだしも汗だくな大きな男達に囲まれる趣味はないわ!囲まれるならイケメンがいい!!


 稽古場は母の国の様式になっている。前世で通っていた剣道道場みたいな感じかな?

 ここに畳があれば完璧なのになぁってたまーに思う。


「シンはどう?彼、剣の腕に覚えがあるみたいなんだけど。」


「へぇ、シンですか…。確かにあいつは動きは良いですね。だが先ずは沢山食わせて体重増やさんといざって時に吹っ飛ばされますわ。」


「そうよね。」


 ふむふむ。こればっかりはゆっくりと平均体重に戻していかないとな。医者と相談かな……あ。


「あ、シンを医者に見せてないや。」


 やっば!浮かれすぎだろ私!健康診断受けさせなくちゃ!


「お嬢、それって最初にやることじゃあ…。」


「ま、まぁ!今はシンの様子が気になるし。後でロベルトにお医者様を頼もう。」


 話題を無理やり曲げた。商会だから人の出入りが多い分病気等は特に敏感になる。



 道場の真ん中で寝っ転がっている黒髪の少年がいた。疲れたのかそこから動けてないみたい。


「こんにちは、どう?元気?」


 上からしゃがんで覗きこんだ私の顔をみて眉間に皺を寄せた。


「……おい、秘書に武術って必要か?午後に来るガキどもをどうにかしてくれ。」

 

「まぁ、秘書に武術は必須よね。所載はおいおい話すけど。貴方、子どもたちに大人気なんですって?良かったじゃない。」


 いーな!いーな!子どもたちになつかれてて!何故か私、一緒に遊んでくれないの。グスン。


「良かないわ!あいつら体力無尽蔵にあるんじゃないのか?…俺を放っておいてくれよ。」


 ありゃ、結構参っているみたいね。

 

「そんな君に朗報です。急遽健康診断を受けてもらいまーす!早ければたぶん明日かな?」


 それを聞いてシンはガバッと起き上がった。

 顔が、顔が近い!

 

「マジで?やったぁ!」


 初めて笑顔を見たかも……年相応な無邪気な笑顔。あ、ダメ。昇天しそう。


 この笑顔をいつまでも護っていたい……!


 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ