3 イギリスの貴族制度
イギリスの貴族制度というのは現在では
公爵 Duke・Duchess
侯爵 Marquess・Marchioness
伯爵 Earl・Countess
子爵 Viscount・Viscountess
男爵 Baron・Baroness
の5つで構成されている。左が男性系で右が女性形だ。
そういう意味では五爵に近い制度である。
このほかに
凖男爵 Baronet・Baronetess
騎士爵 Knight・Dame
といった称号があるが、これらはあくまでHonour、公的な勲章であって、Nobility、貴族ではない。
凖男爵は世襲できる称号ではあるが貴族ではないのだ。
5つの称号のうち、伯爵、だけ男性形と女性形が全く異なる。
Earlというのは古英語を由来としており、ローマを由来とする伯爵、Countとは由来が違うためである。
Earlは歴史が古く、11世紀には使われ始めていたようだが、征服王ウィリアム一世が伯爵夫人に対してEarlessではなくCountessというヨーロッパ大陸由来のCountからの称号を与えたためこんな食い違う称号になっているのである。
ちなみに紅茶のアールグレイは、由来は諸説あるが、グレイ伯爵の意味である。
イギリスにおいて古い称号はもう一つ、男爵Baronである。
Baronの称号自体は領主の意味として使われてきていたが、13世紀後半から、イギリス国王が特許状を与えてBaronを組織化していった。
他の三つに関しては、順次作られていったものである。
DukeはDuke of Cornwallがエドワード黒太子に1336年に創設されたものであるし
Marquessも同じく14世紀
viscountは15世紀にならないと登場しない。
元々、King-Earl-Baronという三段階の慣習だったものが、社会の発展や、ヨーロッパ大陸の状況を参考に順次細分化されてきたのがイギリスの貴族制度なのである。
これはイギリス独自の、かなり特殊な制度であり、他の国にこれをそもまま適用すると、日本の五爵をそのまま適用したときのようにおかしなことが起きやすい。