1 現在に残る「公爵」
中世ヨーロッパ風ファンタジーで欠かせないのが、爵位である。
●●公爵、とか●●男爵、○○子爵、といったのはよく見るように思う。
そもそも爵位とは何なのか、国王とは、爵位とは、皇帝とは、それらの違いといった話を書いていく。
現在様々な国家があり、君主制の国は複数ある。
その称号のうち、一番多いのが「王」であるが、「大公」と訳される国が一つ、「公」と訳される国が3つある。
大公は
ルクセンブルク大公国(Groussherzogtum Lëtzebuerg)
公は
アンドラ公国(Co-Principat d'Andorra)
モナコ公国(Principauté de Monaco)
リヒテンシュタイン公国(Fürstentum Liechtenstein)
の三つである。
正式な国名をそれぞれ書いてみたが、気づくだろうか。
ルクセンブルクはルクセンブルク語
アンドラはカタルーニャ語
モナコはフランス語
リヒテンシュタインはドイツ語
とどれも言語が違うが、似たようなところがあるので気付く人は気付くかもしれない。
それぞれの君主の称号を英語に訳してみると
ルクセンブルクは
Grand Duke
Grandは大公の「大」の部分である。
アンドラは
Co-Princes
アンドラは共同公といって、君主が二人いるので、共同を意味する「Co」が付く
モナコは
Prince
リヒテンシュタインは
Prince
である。
日本語に訳すとき「公」と訳される単語が二種類あるのが分かるだろうか。
Duke と Prince
である。
この二つは明確に違う意味でつかわれる。
英語をある程度勉強した人間なら、Princeというとロイヤルファミリーの一員でしょう?と思うだろう。
現にオックスフォード辞典では、Princeはロイヤルファミリーの一員に与えられる称号、と書かれている。
一方Dukeは貴族の最上位、もしくは小さな領域の君主、と書かれている。全く別の意味合いの二つが、日本語に訳される時に同じものとされてしまっているのだ。
さらにリヒテンシュタインのところに書かれているドイツ語の「Fürst」に注目してもらいたい。
Fürstは英語に訳すとPrinceだが、歴史好きだとこれの日本語訳について公と訳すのに違和感がある人はいるのではないか。
かつて存在した神聖ローマ帝国。その皇帝を選ぶ者を「選帝侯」といった。
このドイツ語は「Kurfürst」である。「Kur」が選定するの意味なので、「fürst」は「候」である。
ここから考えれば、リヒテンシュタインは侯爵であり、候国じゃないのか、ということになる。
現に「リヒテンシュタイン侯国」と書いている書籍のタイトルなんかも存在している。
日本の外務省は、公国としている。
なかなかややこしいが、君主や貴族の称号について、一つずつ話していこうと思う。