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桜色に染まる日々【恋人姉妹番外】

恋人で姉妹の二人が部屋で思う存分いちゃつくだけのお話

※いつもより性的な描写多めです!


【登場人物】

彩歌さくら:高校二年生。姉のもみじとは恋人の仲。土日はほとんど姉の住んでいるマンションに通っている。

彩歌もみじ:大学一年生。大学入学を機に一人暮らしを始めた。親の目がなくなったことで思うまま妹といちゃついている。


 降り注ぐ日差しに少しずつ夏の気配が混じりだした土曜のお昼。彩歌さくらは姉の住んでいるマンションを訪れていた。

 入り口のオートロックを解除しエレベーターで三階に上がり、廊下を進み手前から三つ目の部屋のドアの前に立って合鍵を使い鍵を開ける。まるでここのマンションの住民のように慣れた所作でさくらは部屋の中へと入った。

 姉の彩歌もみじが大学に入学し一人暮らしを始めてから二カ月程が経過した。距離が離れたこと、会える時間が減ったことでの不安はとっくの昔になくなった。平日は毎晩電話をしているし、土日もさくらがもみじのマンションに訪れたり、逆にもみじが家に顔を出したりしているので寂しくなったりはしない。むしろ二人だけの空間と時間が出来たことはより良い変化となって仲を深める結果にもなった。

「ただいま」

 さくらが玄関で小さく呟いた。ここがもう一つの帰る場所だと自覚しているから。

 だが今日は『おかえり、さくら』と明るく出迎えてくれる声はない。玄関にも姉の靴が一足ないのを見ても分かる通り、姉は今外出している。

『大学にレポート出しに行ってくるから勝手に部屋あがってて~』

 もみじからさくらに連絡がきたのは昨日のこと。

 誰もいない姉の部屋に入るのは初めてではあったが、今更知らない場所でもない。

 さくらはカバンを部屋の隅に置くと、自分の首に掛かっていたネックレスのチェーンを引き上げた。チェーンの先にぶら下がっているのは小さな水晶がはめ込まれた指輪。さくらの誕生日にもみじがプレゼントしてくれたものだ。普段から指輪を着けているわけにもいかず、こうやってネックレスとして肌身離さず持ち歩くようにしている。

 身だしなみを軽く整えてからさくらはスマホをチェックした。まだもみじからは帰宅を知らせるメッセージは届いていない。

 さてどうしようか、と考える。いつもだったら姉とこの一週間に何があったかを話したり、一緒にテレビや映画を観たりしているところだが、一人だとどうも時間を持て余してしまう。マンガを読んだりスマホをいじったりなんていうのはせっかく姉の部屋に来ているのに勿体ない。

「掃除でもしよっかな」

 部屋は整理整頓されているし、もみじも定期的に掃除をしているので(汚い部屋にさくらを上げたくないから)綺麗ではある。ただ、掃除は何回してもいいだろうという考えと、少しでも姉の役に立てるならという思いのもと、さくらは掃除をすることにした。

 ハンディタイプのクイックルワイパーで本棚やテレビなどのほこりを取り、フローリングの床に掃除機をかける。キッチンの床も掃除したらシンクとコンロ周りを拭く。トイレとお風呂場もチェックはしたが掃除する必要がないくらい綺麗にされていた。

 三十分ほどで掃除が終わってしまった。

 他に何か出来ることがないかとさくらがうろうろ歩き回って収納スペースの戸を開ける。

 衣装ケースやダンボール箱などが積まれてあるそこには、空いたスペースに掛け布団や枕なども収納されている。

「布団干しとく?」

 もみじに頼まれてもないことを勝手にやっていいものか。もし干すならどれを干すべきか。ベランダはそんなに広くないので干せても一枚か二枚だけ。どうせ干すのならマットレスを干した方がいいんじゃないか。

 さくらが色々と考えていたとき。

「――――」

 すん、と姉の香りを感じた。

 香りの元は分かっている。さくらは畳まれた布団の一番上に乗っている二つの枕うち一つを手に取り、抱き寄せた。

 もみじが家で使っていた枕。一人暮らしをしても使い続けているその枕には当然、姉の匂いが染み込んでいる。

「……すぅ」

 さくらは枕に顔をうずめて鼻からゆっくり息を吸い込んだ。

 体の中心からあたたかさが手足に広がり、全身がリラックスしていく感覚。何故こんなにも好きな人の匂いを嗅ぐだけで幸せになれるのか。

 単純にその匂いが好みだというのもあるかもしれないが、匂いというのは時に記憶と深く結びついたりするものだ。フランスの作家マルセル・プルーストの小説の中で、マドレーヌを紅茶に浸した香りで幼少時代を思い出す、というシーンがある。通称プルースト効果とも呼ばれるこの現象は、多くの人にとって何かしら経験のあることだろう。

 もしかしたら好きな人の匂いというのは、それを嗅ぐことでその人と今まで過ごした日々を思い出し、脳が幸せを感じているのかもしれない。

 さくらにとって姉の匂いは、自分を優しく包んでくれる腕であり、愛を囁いてくれる声であり、キスをしてくれる唇でもある。

「……ちょっと休憩しよ」

 さくらは枕を片手に抱えたままマットレスを床に敷いた。本来ならその上に敷きパッドをセットするところだが、さくらはそのままマットレスに横になった。

 ぎゅう、と枕を抱き締める。

 もしこの枕が姉だったなら、さくらを抱き締め返し、唇にキスをして舌を絡ませ、指先でさくらの肌をなぞっていくだろう。

「ん……」

 想像上のもみじの指がさくらの頬から下へ降りていく。首、鎖骨、胸、お腹、おへそ、更にその下へ。

「っ……」

 優しい指遣いはどこをどう触ればさくらが悦ぶのかをよく知っている。布の上をすべる指先はその場所を探り当てると、擦り、沈み、弾き、刺激を与え始める。

「――ぁっ」

 姉の指は――いや、姉を模倣するさくら自身の指は徐々に動きを速めていった。喘ぎ交じりのさくらの呼吸の間隔が短くなり、吐く息に熱がこもる。

 枕を抱き締めたもう一方の手が姉を求めて自然とさくらの胸の膨らみに伸びる。指先が首から下げていた指輪にかすめた。

「――はっ、ぁ、もみじ、っ、ねぇ――」

 高ぶった感情が体の内側に蓄積していく。痺れるような刺激が背中を伝い、全身を固く強ばらせてもさくらは姉を求め続けた。

 もっと欲しい――もっと姉に触って欲しい――。

 その欲望を実現させるべくさくらは指先に力を込め。

「ただいま~」

 本物の姉の声を耳にした。

「っ!?」

 さくらは飛び起きるや否や枕を抱えたままマットレスを持ち上げて壁に立て掛けた。勢いそのままに枕を収納場所に放り込む。それと同時に帰宅してきたもみじが部屋に入ってきた。

「おまたせさくら~。いやー、レポートの提出日勘違いしててさー」

「お、おかえり、もみじねぇ」

 振り返り、取り繕うさくら。行為の余熱と焦りのせいで、頭からつま先のすみずみまで発熱しているかのように熱い。

「…………」

 もみじがじっとさくらを見て、視線だけで部屋を見回し、再びさくらに視線を戻した。

怪しむような姉の態度にさくらが戸惑う。

「な、なに?」

「今なにかしてた?」

「えっと、もみじねぇが帰ってくるまで掃除してて……掃除機は軽くかけたよ」

「そうなんだ、ありがと」

 にっこりと微笑んだもみじにさくらは内心ほっとした。

 もみじは荷物を置くと台所のシンクで手洗いうがいをして戻ってきた。その表情はまだにこにこしている。

 姉の様子がおかしいとさくらが気付くのと、もみじがさくらを立て掛けたマットレスの方へ押しやるのは同時だった。

「も、もみじねぇ……?」

「さーくら」

 壁ドンをするような体勢で、もみじが語りかける。

「なに、してたの?」

 感づかれたことよりも距離が急に近くなったことで伝わってくる息遣いや匂いがさくらの頭をくらくらとさせる。

「そ、掃除したのはほんとだから……」

「じゃあ掃除した後に何かしてた?」

「……ちょっと横になってた」

「横になってただけ?」

「…………」

「ラインに返信どころか既読も付けないで、横になってゆっくりしてたの?」

 しまった、とさくらが返答に詰まる。スマホを全然見てなかった。いつものさくらだったら返信をしないなんてありえない。

 そのとき姉の左手の薬指にはめられた指輪に気が付いた。もみじの誕生日にさくらが贈った指輪。こちらには小さなオパールがはめ込まれている。もみじもいつもは指輪をネックレスにしているので、部屋に入ってくるときに外して指に着けたのだろう。

 自分の愛する人が誰なのか、一目で分かるように。

「……もみじねぇの枕を抱いて、横になってた」

 さくらは口を開いた。それこそが大好きな姉に愛を伝える簡単な方法だから。

「横になった後は?」

 もみじの囁き声がさくらの脳を揺らす。もう隠し事なんて出来なかった。

「もみじねぇに抱き締められたり触られたりするの想像して…………――た」

 最後の方の声は消えてしまうくらい小さかった。しかし鼻先が触れ合うほど近くにいるもみじにはちゃんと聞こえた。

 もみじが笑う。それはさくらを辱めるためでもからかうためでもなく、喜びと幸せを表した笑顔だった。

「待たせてごめんね」

 真っ赤な顔をしたさくらに、もみじがキスをした。

 想像ではない本物のキス。体温も、柔らかさも、唾液の味も、艶かしい舌の動きも全部さくらが求めていたものだ。

「……ね、マットレス敷こ?」

 もみじの言葉にさくらはこくんと頷いた。

 こんなお昼から、などとは微塵も思わない。大好きな人と触れ合いたいから触れ合う。時間なんて関係ない。

 衣服を脱いで絡み合うように二人はマットレスに横になった。

「自分でどういうふうにしてたか教えて?」

「…………」

 姉に聞かれてさくらはこそっと耳打ちした。いつもは恥ずかしくて言えるはずのない台詞も今この瞬間は平気だった。密着した肌のぬくもりが先程以上に気持ちを高ぶらせているせいなのか。

 もみじは微笑むと、キスを再開し指をさくらの頬へと添えた。そこから徐々に下へと降りていく。首から鎖骨、胸、お腹、おへそ、更にその下へ。それはまるでさくらの想像を再現するかのように。

「――――ぁ」

 さくらの口から声が漏れた。しかしその唇をすぐにもみじが塞ぐ。

「ん、ぅ……っ――」

 体を走る刺激にさくらが身をよじった。もみじの指はさくらの想像よりももっと優しく、かと思えば意地悪で、時々強引にしながらも、さくらが一番欲しいものを与えてくれる。

 だから安心して全身を姉に預けられるのだ。

「さくらも、ね……?」

「ん……」

 もみじの要望に応え、さくらは手を伸ばして姉の体に触れた。さくらの左手の薬指には指輪に嵌まった水晶がきらめいていた。

 愛の証を示す指輪――それが決して形だけのものではないと、手のひらと指で愛を伝える。

「――っ、さくら、はぁっ、さくら――」

「もみじ、ねぇ――っ、ぁ、おねぇ、ちゃ――」

 二人の声が、呼吸が、鼓動が重なる。汗ばんだ肌は相手の肌に吸い付くようにくっつき、互いの熱を共有する。

 溜まった熱は二人から理性を奪い、思考を鈍らせる。けれど今は余計なことなんて考えなくていい。目の前に最愛の人がいるのだから、したいことをすればいい。この部屋(せかい)には二人を邪魔するものは何もない。

 ただ相手を求め、相手に求められ、さくらともみじは『好き』という気持ちを確かめ合った。




「やっぱり私達って姉妹だなぁ」

 マットレスに仰向けになったまま、もみじがしみじみと呟いた。

「何を今更当たり前なことを」

「だって、私もさくらの枕よく抱き締めてるし」

「え?」

「さくらが泊まるときに使ってる枕。さくらがいない夜はだいたい抱いて寝てるかなー」

「そ、そう……」

 照れるさくらにもみじが詰め寄る。

「あれ? 『もみじねぇも一人でしてるの?』とか聞かないの?」

「…………聞かない」

「えー、聞いてくれたら細かく教えてあげるよー?」

「そう言うと思ったから聞かないって言ったの」

 本音を言えば聞きたくないわけではない。興味はある。しかし体の熱もだいぶ治まり冷静になった今のさくらには面と向かってそれを聞くことは恥ずかし過ぎた。

 ふと自分のときのことを思い出し、さくらが会話の矛先を変える。

「そういえばもみじねぇは何で私がその、してたって気付いたの?」

「ん? 部屋に入ったときにピンときたから」

「……そんなに分かりやすかった?」

「うーん、まぁ変に慌ててたし、挙動がおかしかったっていうのもあるけど、一番は――」

 もみじがさくらの顔を覗き込んで微笑む。

「さくらの表情かな」

「……どんな表情?」

「すっごくやらしくて、私のことだけを考えてる表情」

「ほんとに見ただけで分かるの?」

「分かるよ。私、さくらの顔を見るだけで今何を考えてるか分かるんだもん」

「じゃあ今当ててみてよ」

 さくらはわざと無表情を作ってもみじに聞いた。ちょっとした意地悪だ。

 だがもみじは即答した。

「おねぇちゃん大好きって顔してる」

「…………ずるい」

「ね、当たってた?」

「当たってたよ!」

 にやにや笑う姉にさくらは言い放った。そんなのでいいのならさくらにだって当てられる。

 さくらの思考を読み取ったようにもみじが顔を近づけてきた。

「次はさくらの番ね。私の表情読めるかな~?」

「……妹のことが大好き、でしょ」

「それだけ?」

 ちろりともみじが舌なめずりをした。視線もさくらの目より下の位置に向けられている。ちょうど唇の辺りに。

 確かにその表情は、今から何をしたがっているのかがよく分かった。

「……私とキスしたい」

「大正解」

 二人はお互いが満足するまでずっとキスをし続けた。



 終

前話から間が空いてすみません。

姉妹百合欲が高まり過ぎたので書きました。こういういちゃいちゃもたまにはいいかな、と。

直接的な描写は抑えてますが、色々と想像を働かせていただければ。

まぁとにかく、彩歌姉妹は相変わらず仲が良いなぁということです。


次回もまた思い立ったときに書いて投稿する形になると思いますが、よろしくお願いいたします。

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