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恋人姉妹はお風呂でリラクゼーションする

恋人で姉妹の二人がお風呂でいちゃつくだけのお話


【登場人物】

彩歌もみじ:高校三年生。受験勉強の追い込み中で妹との触れ合いも抑え気味。

彩歌さくら:高校一年生。頑張る姉のために何かしてあげたい。



 んーっ、と背伸びをする。イスの背もたれがキィと軋んだ。深く息を吐きながら腕を降ろし壁の時計に目をやると、時計の針は深夜の2時をとうに回っていた。勉強に集中していたからかもうこんな時間だ。今日はそろそろこの辺にして眠ろう。

 私は机の明かりを消して問題集を閉じた。このまま寝てもいいが、どうせならお風呂に入って体を温めてから寝たい。

 お風呂場に向かい追い炊きボタンを押してから一旦部屋へ戻っていたとき、二階で妹のさくらと遭遇した。

「あれ、さくらまだ起きてたの?」

「ちょっとトイレに。もみじねぇは?」

「私はお風呂に入ってから寝るとこ」

「そっか」

 さくらはトイレへ行き、私は自分の部屋へ戻った。着替えを用意していると水の流れる音が小さく聞こえてきた。続いてドアの閉まる音。そこで私に閃きが走る。

(今がチャンスなのでは?)

 両親が寝静まった深夜。たまたま鉢合わせした妹。明日は休日。今こそ大好きな妹と存分にいちゃいちゃできるではないか。

 私は足音をたてないように素早く移動し部屋のドア開けて顔を出した。廊下を歩いていたさくらが突然出てきた私の顔にびっくりする。

「もーおどかさないでよ」

「さくら、こっちきて」

 私が手招きをするとさくらはわずかに視線を逸らしてから頷いた。薄暗い廊下でも見て分かる。さくらが恥ずかしがっていて、喜んでいるのが。

 部屋にさくらを入れた途端、ぎゅうっと抱き締めた。勉強が終わったあとのさくら分摂取は疲労回復に最適なのだ。

「あ~、生き返るぅ~」

「……勉強お疲れ様」

 さくらが私の頭の後ろを撫でてくれた。全身を多幸感が包み込む。これさえあればどんなつらいことだって頑張れそうだ。

 ただ、人間満たされれば欲が出るもので。

(このままベッドに連れ込みたい……)

 私の心と体はより強い幸福を求め始めた。もっとさくらといちゃいちゃしたい。肌を触れ合わせて唇を合わせ、互いのぬくもりを重ね合わせたい。

(いやダメだって。お風呂つけっぱなしだし、万が一そのまま寝ちゃったらマズい。ここは私の鋼の精神力で――)

 試験勉強中の禁さくら欲で培った精神力はこんなものでは打ち砕かれない。すぅはぁ、と深呼吸をしてからさくらに微笑みかける。

「お風呂入ってくるから私のベッドで待ってて」

 誰がさくらといちゃいちゃしないと言ったか。当然いちゃいちゃするに決まってる。ただこのまま勢いに任せたらダメだというだけで、ちゃんと準備と対策をすればいちゃいちゃしていいのだ! お風呂なんてカラスの行水でいい。即行終わらせてさくらと寝ながらいちゃいちゃしてやる。

 気が(はや)る私に、さくらが予想外の返答をした。

「……私も一緒にお風呂入っていい?」



 わしゃわしゃと頭皮を刺激してくる指の感触に、目を瞑ったままだらしない笑みが零れる。

「うぇへへ~」

「口開けてると泡入るよ」

「だって~、さくらと一緒にお風呂入るの久しぶりで嬉しいんだも~ん」

 本音を言えば毎日でもさくらと一緒にお風呂に入りたいが、両親と暮らしている以上こういうことはなかなかしづらし、リスクが大きすぎるゆえに私の方からは誘いづらい。でもさくらから誘ってくれたなら話は別だ。今の時間帯なら見られる可能性は低いし、気兼ねなく二人きりのお風呂を楽しめる。

「さくらの洗い方、優しいし気持ちいいし一番好き。なにかコツあるの?」

「コツっていうか、爪たてないようにゆっくりまんべんなく洗ってるだけだけど」

「いやいや、大事なエッセンスあるでしょ?」

「……愛情?」

「それそれ~! ホントは私もさくらを洗ってあげたいんだけどな~」

「私はもうお風呂入ったときに洗ったから」

「だよねぇ。こうなるって分かってたらあらかじめさくらに『髪も体も洗わないで』って言っといたのに」

「それだったらもうお風呂自体後で入るよ」

「あはは、そりゃそうだね」

 話している間に頭を洗い終わったようで、さくらが聞いてくる。

「このまま体も洗うよ?」

「うん、お願い」

 背中に泡まみれの何かが触れる。背中じゅうに泡を塗り広げていく感触に私は首を捻った。タオルでもスポンジでもないそれはもしかして。

「さくら、手で洗ってる?」

「うん。体は手で洗うのが肌にいいって聞いたから」

 それは私も聞いたことがあるし私も手で洗ったりするからいいのだが、いかんせんこの状況でその行為は刺激が強すぎる。視覚がないせいでさくらの手指の動きにいつも以上に伝わってくるのだ。

 さくらの手は背中に泡を広げたあと、上へのぼってきた。耳の後ろから始まり耳の内側を指先で優しく洗い、首から鎖骨、肩から腕、腕から指へ。指は一本一本丁寧に洗ってくれた。

 正直この時点ですでに私の頭は沸騰しそうなくらい熱くなっていたが、これだけではまだ終わらない。

「――――」

 さくらが後ろから抱き着いてきた。いや、腕を前に回して私の体の前側を洗ってくれているだけだが、抱き着いていることには変わりない。

 背中に当たる柔らかくあたたかい感触は泡を伴うことで途端に官能的なものへと変貌する。そして私の腰やお腹を這うさくらの手。一応さくらも遠慮があるのだろう。ゆっくりと様子をみるような手つきで洗ってくれているのだが、そのせいで余計にこそばゆくじれったい。

「……胸も洗うね」

 さくらの囁きにぎこちなく頷く。

 私の胸の下側に指先が触れた。私の反応を確かめながら、徐々に手のひらが私の胸を覆っていく。そのまま表面を撫でるように指や手のひらを動かし始めた。

 肌を重ねるときの愛撫とはまた違った優しい動き。しかし目を瞑っているせいか、さくらの指がすべり、沈み、弾くたびに声が漏れ出てしまいそうになる。

(これが俗に言う目隠しプレイってやつか……! 色んな意味でヤバい!)

 胸中を悟られないようにするために笑ってごまかす。

「さくらの触り方、や~らしぃ」

「あ、洗ってるだけだって! 変な気持ちなんて全然ないから!」

「ホントに?」

「ほんと」

「1ミリもない?」

「……ちょっともないかって言われたら、あれだけど……」

「えへへ~」

 さくらが本心を見せてくれたことが嬉しい。恋人なんだからそういう気持ちを抱いてくれなきゃ困る。じゃないと私から襲えないじゃないか。

「うぅ……あ、足洗うからイス後ろに下げるよ」

「は~い」

 腰を浮かしながらイスごと後ろに寄ると、さくらが前に回って私の右足を伸ばし手で洗い始めた。太ももを両手で挟み、動かしながら足首へ降りていく。足の甲、かかと、足の裏とまんべんなく洗ったあと、足の指の間もひとつひとつ指で洗ってくれた。くすぐったさはまったくなく、ただ気持ちいい。

「なんかエステに来た気分」

「よかったら足の裏とかマッサージしようか?」

「お、じゃあお願いしよっかな~」

 左足も同じように洗ったあと、さくらが私の足の裏を指で押し始める。

「痛くない?」

「全然。気持ちいいよ」

「痛くないってことはどこも悪くなってないんだっけ」

「あ~、押したツボによってどの内臓が弱ってるか分かるって言うよね。土踏まずが肝臓?腎臓? 私はよく知らないけど」

「私も」

「まぁさくらがマッサージしてくれるだけで私の悪い場所なんてたちまち治っちゃうから」

「そんなあやしいセミナーの勧誘じゃないんだから。はい、反対の足だして」

「ほ~い」

 逆側の足を出したとき、はたと気付いた。

(――今の私の体勢、丸見えじゃない?)

 さくらがマッサージしやすいように軽く足を開いているし、さくらは足元に屈んでいる。多分だが、さくらの位置からは色々と見えてしまっているのではないだろうか。

(べ、別に今更さくらに見られて困る場所なんて――まぁないこともないけど、裸のひとつやふたつどうってことないし! ただその、目を閉じてるからさくらが本当に見てるのか分からないっていうのと、もしこの瞬間もさくらに見られてたらっていうアレがその、なんというか、嬉し恥ずかしくて平常心をなくさせるというか……)

「さ、さくら、頭だけ流してくれない? さくらの顔見ながら喋りたいな~って」

「……ダメ」

「え」

「目、つむってた方がマッサージに集中できると思う」

 直観的に嘘だとわかった。だてに今までさくらの姉をやっていない。さくらの声の調子から隠し事をしていることくらい判別できる。となると、おそらくさくらも私の体が今無防備であることに気が付いているのだ。

「んふふ~、そっか~。私に目を開けられると都合が悪いのか~」

「ちがっ、そういうことじゃなくて――」

「さくら、や~らしぃ」

 太ももを閉じてわざとらしく言うと、さくらが慌てて反論する。

「見てない! 私見てないから!」

「見てないって何を~?」

「――っ! 目開けたらそう言うと思ったからダメだって言ったの! 私はちゃんと見ないようにしてた!」

 あぁもう可愛い。きっとさくらは顔を真っ赤にして今も私を見ないようにしているに違いない。

 正直、目なんて開けようと思えばいくらでも開けられる。それでも自分からそうしないのは、さくらを信用しているからだし、さくらの反応のひとつひとつを楽しむ為でもある。

 私はからかうのをやめて目を閉じたまま微笑みかけた。

「別にいいんだよ。私の体は全部さくらのものなんだから。さくらの気の済むまで見て、好きなように触れていいんだよ」

「……そういう言い方はずるい」

「ということで私の体でまだ洗えてない部分があるからさくらが――」

「自分で洗いなさい!」

 びしゃーっとシャワーを掛けられた。



「「ふー」」

 コンディショナーと洗顔を終えてから二人で湯船につかると同時に息が漏れた。狭い湯船ではあるが、くっついて入れば気にならない。今さくらは私の腕の中にいる。ぎゅっと抱き締めてさくらの肩に頬をつけた。

「疲労回復、滋養強壮にはさくら風呂が一番だね~」

「それはどーも。入浴剤作ってもみじねぇに売ってあげようか?」

「買う買う~。言い値で全部買っちゃうよ~」

「いやほんとに作れるわけないし」

「さくらの汗とか皮脂とか材料にすれば――」

 離れていこうとしたさくらを止める。

「じょ~だんだって~」

「もみじねぇが言うと冗談に聞こえないんだよね」

「まぁぶっちゃけさくらの唾液なら小さい容器に入れて携帯してもいいかなとは思――ウソウソ! や~だ~、そっち行かないで~」

 湯船の反対側に行ったさくらを掴んで引き戻す。今度は逃がさないようにがっちりホールドした。腕の中でさくらが文句を言う。

「――ったく、いつからもみじねぇはこんな変態になったの」

「変態じゃないよ。さくらのことが好きすぎるだけだよ。好きだから、さくらの全部が愛おしいの」

 首筋にキスをするとさくらが態度を軟化させた。

「……外では自重してよね」

「もっちろん」

 似た者姉妹。お互いに相手を好きすぎるから結局たいていのことは許してしまうのだ。

「あ、でもさくらの音声聞くのは別にいいよね?」

 さくらの音声とは、以前購入したマイクで収録した『受験に臨むおねえちゃんを元気づけるためのさくらの応援ボイスコレクション』のことだ。命名は私。

 その名の通り、さくらが愛情たっぷり込めて私に『好き』や『頑張れ』と言うだけの音声なのだが、この音声のおかげでセンターの結果が良かったと言っても過言じゃない。試験開始前にこれを聞くことにより精神は落ち着き、意気は高揚し、この試験が終わったら私さくらといちゃつくんだと燃えることにより100%以上の力を発揮できる優れ物だ。

「あれはその為に録音したんだし、他の人に聞かれなければ……」

「大丈夫。私以外の人にあれを聞かせたくないから!」

「その自信はよく分からないけど。まぁ人に聞かれたとしても、もみじねぇが変な人に見られるだけだし」

「そんな変な人と、さくらはどういう関係なのかな~?」

「……ただの姉妹だけど」

「ただの姉妹かぁ」

 さくらの頬に手を添えて顔をこちらに向けさせた。ピンク色の可愛いその唇にキスをする。わざと音をたてて。

「――ちゅ……んふ、ただの姉妹?」

「姉妹で、恋人……」

 照れるさくらが可愛くて抱き締めたとき。

『もみじ入ってるの?』

「「!!?」」

 ドアの向こうから声がした。お母さんだ。さくらが顔の下半分までお湯に沈みながら私の影に隠れようとしている。

「う、うん。勉強終わったから寝る前に入ろうと思って」

『さっき話し声がしたような気がするけど、何か言ってた?』

「あ~、多分鼻歌だと思う」

『そう。あんまり無理しないで早めに寝なさいよ』

「は~い」

 お母さんの気配が完全になくなってから、はぁ~、と大きく息を吐いた。

 ちゃぷ、とさくらが顔を出して小声で呟く。

「……大丈夫かな」

「気付いたらさすがに言ってくるでしょ。念のためさくらの服隠しといてよかったぁ……」

「ほんとだね……」

 誰かが起きてきたときのことを考えて、さくらの着替えと脱いだ服は洗面所の引き出しの中に隠していた。念には念を入れておくものだ。

 自分の胸に手を当てると今もドクドクと強く脈打っている。

「心臓止まるかと思った」

「私も」

「もうちょっとしたら出よっか」

「うん」

「じゃあお風呂出るまではさっきの続き、する?」

「……またお母さん来たら?」

「キスしながらお母さんと話す」

「……バカ」

 そう言いながらさくらが私の唇にキスをしてくれた。軽く触れるだけ。また誰かが来たらと思うと積極的になれないのだろう。でも私が唇を開き舌を差し出すと、さくらも同じように舌を伸ばして絡ませてくれた。少しずつ、キスを強くしていく。ここならば唾液が落ちようが気にならない。激しく舌を動かし、けれど声はなるべく出さずに互いを求め合う。立ちのぼっているのは湯気かそれとも二人の熱い吐息か。もうちょっとしたら出る、なんて言っておきながら私達はしばらくの間キスをし続けていた。

 くす、と思わず笑う。

「……どうしたの?」

「いやほら、私達が付き合い始めて最初に一緒にお風呂入ったときのこと思い出してね」

「春くらいだっけ」

「そう」

 両親がたまたま土日を留守にすることになり、私が強引にさくらをお風呂に誘った。そのとき初めて私達はキスをしたのだ。一度キスをしてからは二人とも夢中になってキスをしていたのを覚えている。

「やってること変わらないなぁと思って」

「そう言われたら進歩がないみたいでちょっと……」

「進歩はあるじゃん」

「なに?」

「さくらの胸を触ってもずつきされなくなった」

 軽くさくらの胸を揉む。ぱしゃ、と腕を叩かれた。

「あれはもみじねぇがいきなり触ったのが悪い!」

「いきなりじゃなかったらよかったんだ。じゃあさくら、胸触らせて?」

「やだ!」

「え~、さっきはさくらが私の胸触ったんだから次は私の番~」

「さっきのは体を洗うため!」

「ぶ~ぶ~」

 頬を膨らませる私をよそに、さくらが立ち上がった。形のいい可愛いお尻が目の前にくる。

「……ずっとここにいてまた何かあったらイヤだし、部屋に戻ってからなら……」

「さくら~っ!」

 お尻に抱き着いたら頭をはたかれた。

(ま、あの頃に比べたら私もさくらも自分の気持ちを素直に相手に伝えられるようにはなったよね)

 胸中で苦笑してから、さくらより先に浴室を出て安全を確保するために私も立ち上がった。



 部屋に戻ってからのさくらがこれまた素直で可愛かったことは付け加えておく。



       終


お待たせいたしました。


この姉妹のお風呂シーンは多分三回目ですが、やっぱりお風呂百合はいいですね。そのせいで他の短編でもついお風呂シーンを書いてしまうんですが。

当社比1.3倍ほどやらしぃ内容になってしまった気がしますが、ご容赦ください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 百合な二人がお風呂に入るのってなんか良いですよねぇ……。肌と肌が触れあってお互いの気持ちも繋がっている、みたいな(意味不 やっぱりこの二人は尊いですわ……。ニヤニヤを我慢していても気が緩ん…
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