恋人姉妹は文化祭で想い出を作る
恋人で姉妹の二人が友達と一緒に文化祭を回るお話
【登場人物】
彩歌さくら:高校一年生。姉のもみじと付き合っている。人前でいちゃつくのにはまだ抵抗がある。
彩歌もみじ:高校三年生。隙あらば妹といちゃつきたい妹第一のおねえちゃん。
宇佐見あゆ:さくらのクラスメイト。美術部員。茉里奈と付き合っている。
御園茉里奈:もみじのクラスメイト。美術部部長。容姿端麗でいつも冷静だが、あゆに対しては激甘。
秋の始まる九月。この季節は気温が下がり過ごしやすくなることや、様々な農作物が豊かに実ることなどから、○○の秋という言葉が多く存在している。
文化の秋もそんな言葉のひとつだ。
多くの学校がそうであるように彩歌さくらたちの学校も秋に文化祭を行う。クラスで出し物をするところもあるがどちらかというと部活ごとに何かしら催すのがメインであり、ここぞとばかりに文化系の部活が存在を主張する場でもある。
さくらのクラスは特に出し物はせず、姉のもみじは三年生なのでそもそも企画側で参加はしない。
ということで友人たちとともに仲良く文化祭を回ることにしたのだ。
文化祭初日の土曜日、さくらともみじは制服を着て学校へと赴いた。開場してまだ間もないがそれなりの数の人たちが次々と学校へ入っていく。すでに賑わいつつあるようだ。
さくらともみじは装飾された正門の前で宇佐見あゆと御園茉里奈に合流した。
あゆはさくらと同じクラスの一年生。茉里奈はもみじと同じクラスの三年生。二人ともさくらたちの秘密の関係を知ったうえで応援してくれている貴重な友人だ。二歳差同性カップルという共通点持ちでもある。
手書きコピーのパンフレットを手にもみじが興奮を隠すことなくまくしたてる。
「最初どこ行くどこ行く? 食べ物系は品切れの可能性あるから先に行く方がいいと思うんだよ。家庭科部は絶対行くとして物理部がドライアイスでアイスクリーム作るみたいだからそこも絶対行きたいよね~。屋台は火の使用が制限されてるしそこまで惹かれるものはないけどお腹すいたときにちょっと見てみる感じでいいかな?」
その勢いに茉里奈が呆れたように息を吐く。
「テンション高いわね。あんまりはしゃいでると子供っぽいわよ」
「茉里奈の方こそ、そーんな澄ました顔してパンフレットに所々マルが付いてるようだけど?」
「!!」
茉里奈が慌ててパンフレットを背中に隠した。相変わらずの二人のやりとりに下級生組が苦笑する。楽しみにしていたのはみんな同じなのだ。
さくらがもみじの腕を取った。
「最初に家庭科部に行って、次に御園先輩のオススメに行く、でどう?」
「あ、うん、私はそれでいいよ」
あゆが茉里奈の腕を取った。
「茉里奈先輩もそれでいいですよね」
「え、えぇもちろん」
素直になれない年上をサポートするのも年下の役目。さくらとあゆは互いに目配せをしてから世話の掛かる恋人たちを門の中へと引っ張っていった。
家庭科部では部員たちお手製のクッキーやマフィンが配られている他、自分たちで実際にお菓子を作るコーナーもあった。小さな子供連れの家族や学生のカップルが部員の説明を聞きながらボウルに材料を入れて混ぜている。
「私達は作るのはいっかな。時間もかかっちゃうし」
もみじの言葉に各々が賛成する。
「そうね、お菓子なら家でも作れるし、レシピの紙だけもらっておけばいいんじゃないかしら」
「いいですねー。あ、お菓子作るなら一緒に作りましょうよ。茉里奈先輩のおうちキッチン広いですし」
「お菓子かぁ、そういえば今まで一度も作ったことないなぁ。もみじねぇ、今度一緒に作ってみる?」
「いいね~。クリームたっぷりのロールケーキとかいってみる?」
そのときあゆが全員の顔を見回した。
「それだったらいっそ四人で集まって作りませんか? 一度にたくさん作る方がお金もかからないし楽しいですよ」
あゆの提案にもみじと茉里奈は顔を合わせて神妙に頷いた。
茉里奈が優しくあゆに微笑みかける。
「二人っきりで作りたいからダーメ」
「なんでですか!?」
「もう、あゆちゃんだって分かってるでしょう? これはお菓子作りデートなのよ。お菓子を作るからこそのいちゃいちゃを誰にも邪魔されたくないの」
「お菓子を作るからこそのいちゃいちゃ……?」
「味見をするときにあゆちゃんの唇を味見したり、クリームを色んなところに付けて舐めとったり舐めとられたり、『こんなに砂糖とバター使うんですか?』『摂取したカロリー分運動すればいいのよ。焼き上がる前に運動しましょう?』と言ってベッドに連れ込んだり――いたっ!」
ぺし、ともみじが茉里奈の頭を軽くはたいた。
「誰もそこまで言えとは言ってないでしょ。ここが学校だって分かってる?」
「……ちょっとだけ忘れてたわ」
「完全に忘れてたよね」
二人の横であゆは恥ずかしそうに笑っていた。
会話を区切って廊下の隅でお菓子を食べ始める。
口々に美味しいと感想を漏らすなか、さくらがこっそりと姉に問いかけた。
「……もみじねぇも御園先輩と同じこと考えてたの?」
「――むぐっ……んく……ふぅ。い、いやだな~私はあそこまで脳がピンク色に染まってないよ~」
「あそこまで、ってことはちょっとは染まってるんだ」
「あ、あはは、ちょこ~っとだけね。で、でもさ、二人一緒に台所に立つっていうのは恋人としてのある種の到達点みたいなものだと思うんだ! 八合目の山小屋みたいな!」
「そのたとえはちょっと分からないけど……でも、私ももみじねぇと一緒に料理とかしたい、な」
照れを隠すようなさくらの上目使いにもみじの胸がきゅうっと締め付けられる。
(やばい、めっちゃ抱き締めたい。抱き締めてさくらが『ちょっともみじねぇ!』って声をあげたときに唇で塞いで背中をぽくぽく叩かれるけどそれでもキスし続けることでだんだん抵抗しなくなって表情をとろけさせてやりたい……! ――はっ、茉里奈がニヤニヤしてこっちを見てる。あの顔は『あなたも同じ穴のムジナじゃない。場所も考えずに欲望の赴くままに行動するがいいわ』と言わんばかり。そんな違う、私は、私はさくらのおねえちゃんだ。分別を弁えた大人なおねえさんなのにまさかこんな学校の中で――)
「も、もみじねぇ、はなれ、離れて……!」
「え?」
気が付くともみじはさくらを抱き締めていた。腕の中の柔らかな感触に一瞬理性が飛びそうになる。我を取り戻してさくらを解放する。
「ご、ごめん、わ、私の無意識のイドがパトスをアガペーへと導いて――」
「意味わかんないよ……」
「つ、つまり不可抗力だったんだ」
「……気を付けてよね」
さくらはそれだけ呟くとお菓子の残りに口をつけた。
いつもならもうちょっとキツく怒りそうなものだが今のさくらからは怒っている気配すらあまりない。
(これは……もしかして外でいちゃついても大丈夫なのでは?)
邪まな考えが浮かび、もみじはいかんいかんと頭を振る。
(これまでさくらがストッパーになってくれてたのにここで私が振り切っちゃったらダメでしょ! あ~でもせっかくの文化祭だし今日くらいはちょっとくらいハメを外しても……)
「いい加減こっち側に堕ちてきなさいよ……ふふ……」
いつの間に近づいていたのか、茉里奈がもみじの背後で囁いた。
「――くっ、私はそんな邪知なんかに惑わされない!」
「ほとんど惑わされてたように見えたけれど」
「茉里奈みたいに全身全霊を色欲に預けてたりしてないし」
「人を色欲の化け物みたいに言わないでちょうだい」
「私はちゃ~んと見てたからね。お菓子をあゆちゃんと食べさせ合いっこしてるときにあゆちゃんに指を咥えさせたあげくにその指を見せつけるように舐めてたのを」
「たまたま指が口に入っただけよ。それに私はあゆちゃんに咥えてなんて一言も言ってないわ。あゆちゃんが自発的に私の指を舐めてくれたのだからむしろ私よりあゆちゃんが色欲にまみれていると言えるわね」
「……なるほど」
「もみじも試してみたら? 案外さくらちゃんも美味しそうにもみじの指を咥えてくれるかもしれないわよ」
「――なるほど! さくら~……」
「自分で食べなさいっ!」
クッキーを食べさせようとした姉を一喝するさくら。姉の射程距離外に逃げてから溜息を吐く。
「おもいっきり邪知に惑わされてどうするの。はぁ、やっぱりキツく言わないとダメかな」
「まぁまぁ、イベント事でテンション上がるのは仕方ないよ。もみじ先輩もさくらちゃんと仲良くしたいだけだからあんまり邪険にしないであげた方が……」
あゆがこっそりとさくらに話しかけてきた。その唇をさくらはじっと見つめる。ついさっきこの小さな唇が茉里奈の指を咥えていたのかと思うと途端に淫靡なものに思える。
さくらの視線に気付いてあゆが慌てて両手を振るう。
「ち、違うから! さっきのは茉里奈先輩が無理矢理私の口に指を入れて中を掻き混ぜて――」
「か、掻き混ぜる……」
さくらは生唾を飲み込んだ。友人が語る未知の体験はさまざまな想像をかきたてた。
「あーもう、それもそういう変な意味じゃなくて――!」
二人がわいわいと騒ぐのを横で眺めるもみじと茉里奈。すでに険悪なムードはなく、尊いものを見る目付きに変わっていた。
「……もみじ、次のとこは覚悟を決めて臨んだ方がいいわよ」
「何の覚悟?」
「可愛すぎて死ぬ覚悟」
四人が次に訪れたのは手芸部のコーナーだ。ここでは作品の展示や編み物体験などもやっていたが、メインはなんといってもコスプレ体験だった。
時期は少し早いがハロウィンをモチーフにした衣装が様々用意されていて、好きなものを着て写真が撮れるというもの。
さっそく二人ずつに別れて衣装を着てみることにした。最初はさくらとあゆ。
着替え終わったさくらがカーテンで仕切られた更衣所からそろりと出てくる。
「へ、ヘンじゃない?」
さくらが着ているものは人狼をモチーフにしたものだった。頭にはイヌミミ、体部分はタイツ地に毛があしらわれていてまるで毛皮の水着を着ているようだ。もふもふの手足と付け鼻、付けイヌヒゲをしたその姿はもはや人狼ではなく犬っぽい女の子。その愛くるしさは破壊力となってもみじの理性をたやすく破壊した。
「連れて帰る~! 私この子連れて帰って家で飼う~! いいでしょママ~!?」
「誰がママよ。夕方には連れて帰れるから安心なさい」
一般にはそれを帰宅と言う。
もみじは更に声を弾ませてさくらに要望する。
「ねぇねぇさくら、語尾にワンってつけて喋ってみて?」
「なんで私がそんな恥ずかしいことしなきゃいけない……んだワン」
「――――」
「叩かないで。分かったから叩かないで」
ばしばしと茉里奈の腕を叩くもみじ。もしもこの部屋にさくらと二人きりなら狼になっていたのは間違いなくもみじだった。
「私も着ましたー」
次に出てきたのはあゆ。あゆは魔女をモチーフとした衣装で頭には三角帽子、肩には黒色のケープ、ゴシックなワンピースは丈が短いがふわふわのペチコートでボリュームが出ている。魔女と呼ぶよりかは魔女っ子と呼ぶ方が似合いそうな佇まいだ。とりわけ帽子が少し大きいせいで何度も帽子を触っては直すを繰り返している様は見習い魔女っ子に違いない。
「茉里奈先輩、どうですか?」
カシャシャシャシャシャシャシャ――。
感想を言う前にカメラで連写し始めた茉里奈は自身の口を押さえて恍惚の息を漏らした。
「あぁ――色が全体的に重たいのにあゆちゃんの顔が可愛過ぎるせいで打ち消し合ってそれが逆に初々しい魔女っ子感をかもしだしているわ……私があゆちゃんの助手になってあれこれ尽くしてあげてでもあゆちゃんはまだ魔女になりたてだから失敗しちゃって散らばった破片を一緒に片付けながら照れ笑うあゆちゃんにそっと口づけを――」
「お~可愛いね~」
「あゆちゃんすごく似合ってる!」
「ほんとですか? ありがとうございます。さくらちゃんも可愛いね」
早口で感想という名の妄想を繰り広げる茉里奈を置いて三人で盛り上がる。
「くすん……そうやって私だけのけ者にして楽しんで……いいわよ、さっさとひとりで着替えてくるから」
「のけ者になんてしてませんよー。……メイド服でまたご奉仕してあげますから機嫌直してください」
「あゆちゃんの為にとびっきりの衣装着てくるわね」
とびっきりの笑顔で更衣所に向かう茉里奈。もみじもその後を追おうとしたとき、袖をさくらに引っ張られた。
「ん?」
「……あゆちゃんには可愛いって言ったのに、私には、その、なにもないの……?」
もみじの頬がだらしなく緩んだ。言わなくても分かっていることをねだる妹が本当に可愛くて。
「誰よりも可愛いよ、さくら」
「……ありがと」
着替えの終わったもみじが先に出てきた。
「じゃ~ん、どう?」
もみじの衣装は吸血鬼モチーフだった。タキシード風の上下に襟の立った大きなマント。マントの裏地の赤色がどことなく血の色を思わせる。自慢のふわりとした髪を後ろでひとまとめにしたもみじはマントの端を持ちうやうやしく一礼してみせた。
「かっこいいです、もみじ先輩!」
「うん……そういう正装も似合うんだね、もみじねぇ」
「でしょ~? 我ながら決まってるかな~って。惚れ直した?」
「あ、あゆちゃんの前でやめてよ……!」
もみじとさくらがいちゃこらしていると茉里奈が仕切りの向こうから出てきた。
「お待たせ。ちょっと着るのに手間取ってしまったわ」
「――――」
茉里奈の衣装を見てあゆとさくらが固まった。頭と全身に巻かれた包帯。ミイラ男風のその衣装は、頭の部分こそ片目を隠すように包帯を巻いてはいたものの、体部分はぴっちりとした全身タイツの上から装飾として包帯を巻いているだけだった。そのせいで茉里奈の体のラインがしっかりと出てしまっていたのだ。豊かな胸にくびれた腰、触り心地の良さそうなヒップ――水着とは違う、布で覆われているからこその色気。茉里奈と親しくない人なら直視していいものか迷うレベルの艶態にさくらとあゆは知らず頬を染めていた。
「……やっぱりその格好は目に毒だよ」
一緒に着替えをしたもみじがぼそりと呟いた。
「私の体を毒だなんて失礼な物言いね」
「毒、というか媚薬的な意味で」
「いいじゃない。あゆちゃんへの媚薬になるのなら自分の体なんて惜しくないわ」
「そういうのは周りに誰もいないときにやらないと」
「とっくにやってるわよ」
「……そりゃ失礼しました」
その後、仲良く四人で写真を撮り、元の制服に着替えてから文化祭巡りを再開した。
校舎の中を下から順に見て回っているときに二年の教室で占いの館なるものを発見して足を止めた。
「こういうのもあるんだ。でもうちってオカ研とかないよね?」
もみじの疑問に教室の前にいた呼び込みの女子生徒が元気良く反応する。
「占い好きの女子四人が中心になって作りました!」
「へぇ、それはすごいね」
「しかもなんと! ここでは姓名判断、四柱推命、手相、タロット――四種類の占いから好きなものを選べるんです! もし結果が悪かったら違う占いも出来るので、是非良い結果が出るまで頑張ってください!」
「そういうのいいんだ……」
「おみくじで大吉が出るまで引くのと同じじゃない?」と茉里奈が口を挟む。
「まぁそだね。じゃあ私とさくら、茉里奈とあゆちゃんで入ってみよっか。あ、姉妹でも大丈夫?」
「もち大丈夫です! ご家族や嫁姑、血の繋がっていない兄弟姉妹、気になる先輩や気に入らない後輩との相性などなど、なんでも占ってます!」
「すっごい不穏な単語があった気がするけど、うんありがと。それじゃあ四人、お願いしようかな」
「ありがとうございます! 二名様二組ご案内でーす!」
威勢のいい掛け声に送られてもみじたちは教室の中に入った。
暗幕で覆われた教室は真っ暗で、この空間にあまり似つかわしくない穏やかな民族風のBGMが流れていた。正面に四箇所、暗幕で区切られたところからオレンジ色の明かりが漏れていて、どうやらそこが占う場所らしい。列整理の生徒がどこがどの占いかをもみじたちに教えてくれた。
「さくらはなにがいい? 姓名判断は名字同じだし、別のがいいかな?」
「私はなんでもいいよ」
「じゃあ四柱推命で。茉里奈たちは?」
「私達はタロットにするわ」
「おっけ~、それじゃ終わったら出口のとこで待っててね」
二組で別れてから列に並ぶ。もみじたちの番が来てから暗幕の中へと進んでいった。
「ようこそお越しくださいました……」
ランタンの明かり(おそらくは電池式)に照らされて、それっぽい格好をした女子がもみじたちを出迎えた。
「さっそくこちらにお二人の生年月日を記入してください……」
机の上の紙に空欄があり、そこにもみじとさくらがそれぞれの生年月日を書いた。
占い師の女生徒はそれと何かの表を照らし合わせながら横に文字を書いていく。
さくらが小さな声でもみじに話しかけた。
「人に占ってもらうの初めてだけど、こんな感じなんだね」
「どうなんだろ。やる占いによって違うだろうし、やる人によっても変わるんじゃないかな」
「相性悪いって言われたらどうする?」
「たかだか占いの結果だし、悪かったら気にしなければいいだけだって。それに――」
もみじが一度言葉を切ってから声量をあげた。
「こういうのって初詣のおみくじと一緒で、悪い結果なんてあるわけないよ。ねぇ、山本さん?」
山本さん、と呼ばれて占い師の子が書く手を止める。
「な、なんのことでしょうか……?」
「え? バスケ部の山本典子さんだよね? 前に遠征に行ったバスの中でみんなを占ってたの覚えてるよ」
「ひ、人違いではないでしょうか」
「私が、大事な後輩を間違えると思う?」
「あ、いや……」
「それとも引退して数カ月で私のことなんか忘れちゃった?」
「そ、そんな、彩歌先輩のことは尊敬してますので!」
「良かった。――それで、私と大事な妹の姉妹仲はどうかな?」
「…………最高です! 一生姉妹仲は良好ですね!!」
「やった~。良かったね、さくら」
「……素直に喜べないんだけど」
元バスケ部の先輩によるパワハラ占いが終わったころ、タロット占いをしていた茉里奈たちはというと。
「タロットカードは全部使うと枚数が多くて複雑になるので、今回はこの大アルカナと呼ばれる二十二枚のカードを使って行います。それぞれお二人にカードを選んでいただいて、そのカードの意味を合わせることで相性を占います」
「なるほどねぇ。話にはよく聞くタロットカードだけれど、実物を見るのは初めてだわ」
「私もです」
「少し、そのカードを見せてもらってもいいかしら?」
「はいどうぞ」
茉里奈は占い師の子からタロットカードを受け取り、机の上に表向きに広げる。西洋絵画のようなそのイラストは精緻に描かれていて眺めているだけでも楽しそうだ。
「ちなみになのだけれど、どのカードとどのカードが相性がいいの?」
「えぇっと、個人的には女教皇と女帝の正位置でしょうか。それぞれ純愛と幸福感を意味しているんですが、組み合わせることで幸せな恋人として歩んでいけることを暗示するのではないかと。あ、これは恋愛に関してですが、信頼関係にも転じると思いますので」
「それはすばらしい組み合わせね。それで、具体的にこの二十二枚のどれとどれ?」
「あぁ、これとこれですね」
占い師の子が二枚指でずらした。茉里奈がその二枚を引き抜く。
「正位置ということは、文字が読める向きでいいのかしら」
「はいそうです」
「ありがとう。それじゃあ占いを始めましょうか。残りは回収して構わないわよ」
「……え?」
「この二枚以外は必要ないから」
「あ、あの、そういうわけには……」
「正位置がこの向きだから、裏面はこうね。はい、あゆちゃんの分」
「あの……」
「すみませんすみません、こういう人なので……!」
「あゆちゃん、運命は自分の手で掴み取るものなのよ?」
「もっともらしいことを言わないでください」
そのあと占い師の子が戸惑いながら先程と同じ内容の結果を説明したのは言うまでもない。
占いの館を出てから四人は化学室に向かった。そこでは物理部と化学部が合同で喫茶店を開いており、ドラアイスを使って作ったバニラアイスやアルコールランプで温めて飲むビーカーコーヒーが楽しめる。
「コーヒーはやっぱり容れ物が大事だよね」なんて談笑してくつろいだ後、体育館や武道場で運動部の出し物を見て回った。中庭で昼食を取り少しの間休憩してから、今回もっとも人気のある催し物を見に校庭へと向かった。
『クイズ研究部製作ダンボール迷路』
大きな立て看板と共にもみじたちを出迎えたのは校庭の半分ほどを使って建てられた巨大なダンボールの迷路だった。
どこにクイズ要素があるのかという話だが、この迷路は進みながら自分たちで空白の地図を埋めていくというゲームで、なかなかに頭の体操になるのだという。
多くの人が並んでいるが迷路内で人が多くなり過ぎると危険なので入場人数を制限して、出口から人が出てくるごとに次の人を入場させているようだ。
その行列に四人並んで、あゆが笑みを浮かべる。
「遊園地のアトラクションみたいでちょっとわくわくしますね」
「そうね。なかなかこういうのは体験する機会もないでしょうし」
もみじが頷きながら苦笑する。
「その分結構待ち時間かかりそうだけど。今日はここやったら終わりかな~」
「明日どこに行くか決めとかないとね」
文化祭は二日間行われるので今日行けなかったところは翌日に回すつもりだった。
吹奏楽部の演奏や演劇部の舞台などまだまだ見所はたくさんある。
四人で話しているうちに列は進みそろそろ入場出来る頃合いとなったとき、もみじが提案した。
「二組に別れて勝負しようよ。負けた方が罰ゲーム」
茉里奈がすぐに同意する。
「いいわよ。罰は何にする?」
「ん~、どうしよっかな~」
「もみじねぇ、罰ゲームとかやめようよ。みんなで迷路をクリアする方がいいって」
「茉里奈先輩も、競争ってなったら絶対ムキになるんですからやめときましょうよ」
年下二人から心配されてどうしようかと思案して、もみじが思いついた。
「じゃあさ、罰ゲームを負けた側で考えるっていうのはどう? それならイヤな思いをさせたりしないでしょ?」
「それはどんな罰ゲームでもいいのかしら」
「なんでもいいよ。肩を揉むでも握手するでも。ようは文化祭の想い出になればいいんだから」
仲良く遊びましただけでも十分楽しい想い出ではあるが、そこに勝負や罰ゲームという要素を加えると記憶に残りやすくなるし、みんなで想い出話をするときにあぁそういえばそんなことしてたなぁと笑い合うことが出来る。
今日という日を忘れたくないからこそもみじは何かをやりたかった。
その思いをくみ取ってさくらとあゆも了承する。
「まぁそういうことなら」
「それなら茉里奈先輩も大丈夫だと思います」
「……さっきからあゆちゃんが私を手の掛かる子扱いしてるのが気になるのだけれど……はっ――あゆちゃんが私のお母さん? それは――アリね」
そうこうしているうちにもみじたちの前の組が入場していった。四人の元に係員の男子生徒がやってきて紙とペンを渡し、迷路内での注意事項を伝える。危険行為をすれば校舎で監視している生徒から連絡が来て即刻退去となるらしい。
「……ということは誰もいないとこで襲っちゃダメか。危ない危ない」
「罠に掛かるところだったわね」
こっそりとそんなことを呟く上級生二人。勝負とか言っておきながら隙あらばいちゃいちゃする気満々だった。
襲われる予定だったらしいさくらとあゆは呆れて溜息をついたり笑ったり。平常運転なので注意する気にもなれない。
「お、もう私達も入れそうだね。迷路の入口に入ってから出口を出たとこまでのタイムを競うから、茉里奈の方も計っといてね」
「わかったわ」
「じゃ、また後で」
もみじとさくらのペアが迷路へ先行した。入口に入ると同時にスマホのストップウォッチをスタートさせる。
「よーし、さくら頑張ろう!」
もみじが満面の笑顔でさくらに拳を突き出した。
「――うん」
さくらもにこりと頷いて、その拳にこつんと自らの拳を合わせた。
迷路はかなり作り込まれており、ただ左右の壁に沿って進めばいつかはクリアできるようなものではなかった。ループする通路に隣接しない壁、穴が空いていて遠目からでは通れることに気付かない壁などなど。マッピングをしながら進まないと迷ってもおかしくはなかった。
さくらが主に地図を描き、もみじは別れ道で率先して先を偵察に行く。分担作業で迷路を攻略していくうちにタイムのことなんか忘れてしまっていた。
数々の関門をくぐりぬけ、ようやく出口へと到達する。
「――ゴ~ル!」
出口を飛び出してもみじが両手を上げた。続いてさくらが出てくる。
「迷路を自分の足で歩いてクリアするのって、ちょっと達成感あるかも」
「ね~。結構難しかったからなおさらね。おっと、タイマーとめなきゃ」
「どのくらい掛かった?」
「10分ちょっとくらい。いいのか悪いのか分かんないけど、これで負けても楽しかったからいっか」
「もみじねぇが自分で勝負もちかけたくせに」
「まぁまぁ、勝負はおまけだから。今の私はさくらと二人でクリアを成し遂げられた喜びでいっぱいなのだ」
「……そうだね」
ペンを係員に返してから待つことしばし、茉里奈とあゆが出てきた。二人ももみじたちと同様に達成感に満ちた笑顔を浮かべていた。
そして迷路の勝負の結果は――もみじたちの勝ちだった。
太陽が沈み始めて空が茜色へと変わる。校内の放送で本日の文化祭の終了のアナウンスが流れている。本日はご来場いただきありがとうございました。明日の開始は朝九時からです。是非明日もご来場ください。
四人は美術室に来ていた。部屋の中はパーテーションで壁がいくつか作られていて、そこに部員たちの描いた絵が飾られている。鉛筆画や水彩画、油絵など、授業以外で絵を描かないもみじとさくらは感嘆しながら作品に見入っていた。
お客さんはすでにおらず、片付けをしていた女子が二人残っているだけだ。
その女子二人に茉里奈が近づいて少し会話をしたあと、もみじたちを手招きして隣の美術準備室へと案内する。準備室内の床に置かれていた備品類を端に寄せてスペースを作るとそこに丸椅子を二脚ずつ並べてもみじたちを奥側へと促した。
「二人はそっち側に座ってちょうだい」
そうしてもみじの正面には茉里奈、さくらの正面にはあゆが座ってスケッチブックを持ち鉛筆を構える。
似顔絵を描く。それが茉里奈たちが決めた罰ゲームだった。
「言っておくけれど、テレビで見るようなプロの似顔絵と一緒にしないでよ。時間も限られてるし」
「分かってるって。おたふくとかにならなきゃ文句言わないから」
「それはそれでバカにされている気がするのだけれど」
ぶつくさと言いながらも迷いなく鉛筆を走らせていく茉里奈。その様子を横目で見ながらあゆが控えめに笑う。
「私は茉里奈先輩ほどうまくないから、ヘンになったらごめん」
「全然気にしなくていいよ。私なんてまったく絵心ないんだし。それより似顔絵のときってどういう顔したらいいの? わ、笑った方がいい?」
「普通にしてて大丈夫だよ」
「わかった。……動かない方がいい、よね?」
「動いても大丈夫。座りっぱなしがつらかったら体動かしてもいいよ」
「さくら~、そんな昔の写真機じゃないんだから」
美術準備室の中に笑い声が響いた。
茜が射す狭い部屋で雑談をしながら過ごす時間は、今日一日でもっとも穏やかな時間だった。
くだらないことで笑い、呆れ、怒って。鉛筆が紙をこする音がかすかに聞こえて。
文化祭というイベントからすれば似顔絵を描くなんていうのは大したことではないかもしれない。それでもこのことは想い出となって確かに彼女たちに刻み込まれた。
きっと何十年が経ったとしても、窓の外の夕焼けを、絵の具や石膏の混ざった匂いを、友人たちの声や表情を、昨日のことのように思い出せるだろう。
四人一緒の最初で最後の文化祭。その初日が終わろうとしていた。
「……まぁこんなものかしらね」
茉里奈が鉛筆を置いてスケッチブックを眺めた。あゆも仕上げに鉛筆を動かす。
「こっちもこれで終わらせます」
「見せて見せて~」
完成された似顔絵を見ようともみじが覗きこんだ。
「おぉ~さすが美術部部長……ん?」
短時間とはいえもみじの顔を写実的に描いたその似顔絵は特徴をよくとらえていた。ただし、絵の中のもみじは目をつむっていたが。
「え、なんで目閉じてるの? シャッター押すタイミングが悪かった写真みたいな?」
「もみじねぇ、私のも目閉じてる」
さくらの方の似顔絵も同様だった。困惑する二人を見て茉里奈とあゆが意地悪くくすりと笑う。
「ただ似顔絵を描くだけじゃつまらないから、あゆちゃんと相談して決めたの」
「目を閉じてる以外に唇を見て何かわかりませんか?」
もみじとさくらが自分の似顔絵の口元をよく観察する。
「……唇をちょっと突き出してるっぽい?」
「私のもそんな感じに見える」
「これもしかして……さくらのちょっと見せて――あ、分かった!」
さくらの似顔絵を見たとたんにもみじが声をあげる。
「キス顔だ!」
「正解ですー」
さくらももみじの似顔絵を見て気付く。
「ほんとだ。でもなんでキス顔……?」
「お互いの似顔絵を交換して寂しい時に眺めるもよし、添い寝するもよし、キスをして自分を慰めるもよし、の一石三鳥だからよ」
自信たっぷりに茉里奈に言われ、さくらはそういうものなんだろうかと再びもみじの似顔絵に目を移し、意外と悪くないかもと納得した。
「もみじ、キスするときはあらかじめラミネートで加工しておくかラップをかけてからするのよ」
「なんで私にだけそういうこと言うのかなぁ?」
「理由言う必要ある?」
「ないですー! アドバイスありがとうございましたー!」
それぞれの似顔絵の紙をクリアファイルに挟み、カバンへと大事にしまいこむ。もみじが立ち上がって外を見ると空の赤色が重い青色へと変わりつつあった。
「じゃあ暗くなる前に帰ろっか」
「もみじとさくらちゃんは先に隣で待っててもらえる? 私とあゆちゃんでここ元に戻すから」
「あ、だったら私もお手伝いを――」
言いかけたさくらの腕をとってもみじが扉へと進む。
「おっけ~、絵でも見ながら待ってるよ」
美術室に移動するとさくらが姉に抗議した。
「ちょっともみじねぇ。みんなで手伝えば早く終わるのに」
「さくらは鈍いなぁ」
「なにが」
「あれは、二人きりになる為のただの口実」
「え――」
さくらは振り返って美術準備室の扉を見た。だが物音ひとつ聞こえてこない。それが物を静かに移動させているだけなのか、それ以外のことをしているのかは分からなかったが、茉里奈なら何をやっていてもおかしくはない。扉に耳をつければ分かるのだろうがそこまでする気にはなれなかった。
もみじがさくらを引っ張ってパーテーションの壁で挟まれた通路へと入る。それが飾られた絵画を鑑賞する為でないことはさくらにもすぐに分かった。
ちょうどパーテーションの真ん中あたりでもみじが立ち止まり振り返った。
「ここなら廊下から見られる心配ないね」
「……キスするの?」
「さくらはしたくない?」
「…………したい」
もみじは優しく微笑んで、ふと何を思ったかカバンから先程の似顔絵を取り出した。クリアファイルごと自分の顔の横に並べてさくらに見せる。
「どっちにキスしたい?」
「……ばか」
さくらの唇は本物のもみじの唇を選んだ。
…………。
……。
「美術室を閉めたいのだけれど、置いていってもいいかしら」
「!!」
背後から聞こえてきた声にさくらが姉から体を離す。勢いよく離れすぎてパーテーションにぶつかりそうになった。
もみじがさくらの手を掴んで止める。
「今出るから待って~」
平気な顔をして茉里奈の方へと向かうもみじ。その後ろを顔を真っ赤にしたさくらが続いていく。キスをしている所を見られるのは初めてではないが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
「もみじ、口元くらいぬぐいなさい」
「はいはい。こっちは誰かさんが出てくるのを待ってたんだけど」
「二人きりの時間を作ってあげたのだから感謝して欲しいわね」
「それはこっちのセリフ」
茉里奈が美術室の電気を消して他の三人は廊下に出た。カギを掛けているときにあゆがさくらに耳打ちする。
「後ろからじゃ全然見えてなかったから気にしなくていいよ」
余計に恥ずかしくなって視線を落としたさくらの肩をもみじが抱き寄せた。
「さーくら、いつまで恥ずかしがってるの。茉里奈とあゆちゃんだって見えない所であんなことやこんなことやってるんだからお互い様だって」
「も、もみじ先輩、そういう言い方はちょっと……」
「そうよもみじ、恋人として当然の行為なのだから咎められる謂れは無いわ」
「茉里奈先輩は話し出すと表現が生々しくなるので入ってこないでください」
「うぅ、ひどいわあゆちゃん……さっきはあんなに可愛らしく鳴いていたのに」
「そういうとこですよ!」
「これは私達も負けてられないね、さくら」
「張り合わなくていいから」
いつもと同じようにじゃれ合いながら人気のない廊下を進んでいく。
こんなやりとりひとつ取っても、彼女たちの大切な想い出には違いない。
高校生活が残りわずかな三年生二人には毎日のちょっとしたことが想い出になる。たとえその想い出の詳細を思い出すことが出来なくなったとしても、それを積み重ねた月日が消えることはない。
昔日を想い『楽しかった』と言えることこそが、幸せであった証拠なのだから。
文化祭最終日である二日目を終えた夜、もみじは自室でさくらと肩を並べてくつろいでいた。
「二日連続ってのは疲れたけど楽しかったね~」
「うん。中学のときは文化祭なかったからイメージでしか知らなかったけど、楽しかった」
「まぁ今年は特別だったからね」
「去年と何か変わってた?」
「さくらがいた」
「…………」
「去年もおととしもまぁそれなりに楽しかったけど、今年ほどじゃなかったよ。だってさくらが隣にいなかったんだもん。そんなの比べるまでもないよね」
「……私だって、もみじねぇがいたからこんなに楽しいと思えたんだよ」
楽しいと話すさくらはどことなく浮かない表情をしていた。
「どうしたの、そんな顔して」
「……来年からは、もみじねぇも御園先輩もいないんだなって考えたら、ちょっと……」
「さくら、考え方が違うよ」
「え?」
もみじはさくらの手を握り、頭をさくらの方に傾かせた。
「確かに高校生として私達四人が同じ学校で文化祭を楽しめるのは今年が最後かもしれない。でも文化祭ってさ、一般の人も入っていいでしょ? だったらまた四人で参加するのなんて簡単だよ」
「……うん」
「それにさ、私や茉里奈が大学にいったら大学の文化祭だって一緒に楽しめるわけだから、ほら、楽しいイベントに行ける回数が増える! まぁそれ言ったらどこの文化祭に行ってもいいんだけど。つまりなにが言いたいかというと、年月が経って出来なくなることもあるけど、同時に出来ることも増えていくんだよってことで、何も心配することはないから安心しなさいってこと。……分かった?」
伝わったかどうか心配そうなもみじにさくらが息を吐いて微笑む。
「分かったよ」
「それならよし! ということで今この瞬間にしか出来ないことをしようと思うんだけど」
「それ多分この瞬間じゃなくても出来るよね」
「いやいや、おやすみのキスは今じゃないと出来ないよ」
「おやすみまでまだ時間あるけど」
「じゃあいっぱいおやすみのキスが出来るね」
「……そうだね」
姉の言い分が面白くて、さくらは笑いをこらえながら顔の向きを変えた。その唇にもみじの唇が重ねられる。それはおやすみのキスにしてはいささか情熱的なキスだった。
終
お待たせいたしました。
夏の次は秋のイベント。ということで文化祭です。
やってることが海編と同じな感じですが……多分四人でのイベントももうほとんどないと思いますのでご容赦を。
占い部分、間違っていたらすみません!
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〈わりとどうでもいいかもしれない裏設定〉
それぞれの呼び方は親しくなってから基本的に名前呼びに変わってるんですが、さくらが御園先輩呼びなのはさすがに三年生を名前で呼ぶのはどうなんだろうと思っているからです。
あゆがもみじ先輩呼びなのは彩歌姓が二人いるから。
それとこれまでの作中では書かれてませんがもみじがあゆちゃん呼びになる前に『親友の恋人を馴れ馴れしく名前で呼んでイヤな思いをさせないだろうか』と悩んで茉里奈に確認してたりします。茉里奈は『そんなことでいちいち嫉妬してたら生きていけないのだけれど』と呆れたとかなんとか。