物思い。
『花咲月くんは秘密が多すぎる。』の続編になります。
今回もなんかわちゃわちゃしています。
高校卒業とともに俺は職もないまま親元を離れ、反対する母親の制止を押し切ってボロくカビ臭いアパートで極貧の一人暮らしをはじめた。
本当ならば4月からは花の大学生だったはずの俺だ。
大学には受かっていた。
それもそれなりにいい大学・・・。
必死ってほどじゃないけれど努力して受かった大学だった。
けれど、俺はその大学への入学を蹴った・・・。
それに父親は狂ったようにキレたし、そんな父親を母親はなだめつつもボロボロと泣いていた。
父親にも母親にも本当に申し訳ないことをしたと思っている。
けれど、本当に俺には無理だったんだ・・・。
大学での4年間、またそこで何の目標もないまま勉強を続ける勇気もファイトも俺にはなかった・・・。
俺は・・・ただ、逃げた・・・。
「・・・るくん? ・・・春くんってばっ!」
唐突に聞こえてきたその声は溌剌としていて高く、幼い少女を俺に連想させるものだった。
そして、その高く、愛らしい声に俺はハッとさせられた。
また、ボーッとしていた・・・。
「す、すみませんっ! ボーッとしていました!」
俺は素直にそう謝って机を挟んで座っているアッシュピンク色の長い髪をツインテールにした目の大きな女性・・・と、言うよりは少女に慌てて視線を向けていた。
その少女は俺と視線が合わさるとその大きな目を優しく細めて花が綻ぶかのようなフワリとした淡く、甘い微笑みを浮かべてくれた。
その微笑みにドキリとする俺はやはり、女の子のことが好きな健全な男なんだと思う。
しかし・・・だ。
そんな可愛らしい少女にも秘密がある・・・。
その秘密と言うのは・・・。
「何かヤらしいことでも考えていたの?」
「え? や、ヤらしいこと?」
俺の目の前に座っている少女はそう言うとミルクティーの注がれたお洒落な白いティーカップをその小さな手のひらで包み込むかのようにして、イタズラっぽい小悪魔的な笑みを浮かべ、困惑している俺をじっと見つめ見てきていた。
少女は俺と視線が合わさるとそのイタズラっぽい小悪魔的な笑みをより一層濃くしてクスリと微かな声を漏らし、笑った。
「アタシのモノにむしゃぶり付きたいとかアタシのモノを挿してナカを激しく掻き回して欲しいとか考えていたんじゃないの?」
「えっ!? ちょっ!? えぇっ!? き、キクちゃんさん!?」
俺は目の前の少女のその衝撃的な発言にそんな奇妙な反応を返して辺りの様子をできるだけ自然に窺った。
古民家を改築した小さなカフェレストランは平日のお昼過ぎと言うこともあり、ガランとしていて俺たちの会話を聞いていたような人たちは居なかった。
そのことに俺はホッと胸を撫で下ろし、クスクスと笑っている目の前の少女・・・キクちゃんさん・・・本名、安藤 菊左衛門さんに苦い笑みを投げ掛けた。
そう。
そのゴツい名前から察しはつくだろうがキクちゃんさんは男だ・・・。