準決勝の相手
「いやーやられたやられた! まさか三ゲージ全て使ってフィニッシュまで計算してるとは思わなかったよ」
「正直あれ意外打つ手がなくてどうしようもなかっただけなんですけどね……」
「それでも大したもんだよ! やっぱ俺もオリジナルキャラに手ぇ出すかなぁ。うっはっは!」
試合後Fumy氏はそんなことを言いながら、豪快に笑っていた。ベテランのプレイヤーからしてみれば、あんな奇策で若造に負けたんだから悔しさはあるんだろうと思ってたんだけど。
「俺としちゃあ、格ゲー界が賑わってくれればそれでいいかな? ケンもそれ目的でこの大会を開いたっていう思惑もあるとおもうし、ま、多少でも盛り上がってくれたなら良かったよ」
何だろう、数年前の試合でケン兄も同じことを言っていた。やっぱり格ゲー界隈って敷居が高いんだけど、プレイヤーの人たちはやっぱり盛り上がって欲しいんだなぁ。
「ま、俺を倒したからにはそう簡単に負けてくれるなよ? いちおう優勝するつもりできたんだから、決勝まではいってくれ」
「は、はい!」
どうしよう、すごいプレッシャーだ。でも、僕が勝ったということはそういうことだ。負けた人の分も背負って戦っていくんだから。それにどうせ鈴羽とあたるのは決勝だ。やっぱり負けられない。
「先輩」
「真白……なんとか勝てたよ。もう秘策を使っちゃったけど」
「しょうがないわね。だってあの人、すごい強い人だったんでしょ?」
「メチャクチャ強い人だよ。昔ケン兄を追い詰めたこともある人だったんだからさ」
「そんな人と一回戦で当たるなんて、先輩もとことん持ってるわね」
「これが吉と出るか凶と出るか分からないけど、目指すところは変わらないさ」
改めてトーナメント表を見る。決勝まで行くにはあと三回勝たなければならない。
「まだまだ先は長いな……」
頂きはまだはるか先、戦いはまだ始まったばかりだった。
………………
…………
……。
二回戦、今度はオリジナルキャラ同士の対決となった。相手は『ハフマン』という狩人のキャラを改変したオリジナルキャラで、素体の遠隔攻撃に加えて設置技を主体として攻めで、スピード主体のこちらとしてはかなり相性が悪かった。
しかしプレイヤーとしての腕は一回戦で当たったFumy氏の方が断然高く、戦略も相性が出ていることで逆に分かりやすくなり、思ったよりも楽に勝利することが出来た。
三回戦の相手は『ヘクセン』という神父のキャラで、多彩な攻撃方法を有する難敵だった。特に銃を使った跳弾攻撃が画面銃を埋め尽くし劣勢を強いられたが、火力を振っていた分わずかにかすった攻撃が致命傷となり判定勝ちをもぎ取った。
二回戦とは異なりかなりしょっぱい勝利だったが、跳弾を避けまくっていた分会場は盛り上がっていた。ただ一回戦ほどではないにしろ、ここまでくると苦戦を強いられずにはいられなかった。
そして、何よりも驚いたのが準決勝。相手の登録名はRyu。そして僕の前に現れたのは、
「よう史人ー。ケンに呼ばれたから参加してみたら、こんなとこまで来ちまったよー」
「……この状況は予想してなかったよ、リュウ兄……」
大会前いつもゲーセンで練習してた時にも、隣でいつもUFをプレイしていたけど、そのプレイ状況は見たことが無かった。でもリュウ兄も昔ケン兄と一緒にゲーセンでプレイしていたのだ。上手いとしてもなんら不思議はない……はずなんだけど。
「まったくそんな素振り見せてなかったよね」
「だってよーケンに口止めされてたしさ。ほら、サプライズ感って大事だろ?」
「あのねぇ……」
ちらりと解説者席に座っているケン兄とみると、ニヤリと笑った……ような気がした。というかFumy氏にしてもリュウ兄にしても鈴羽にしても、内輪で固め過ぎでしょ。いや、みんな強いから勝ち残ってるんだろうけども。
「ま、ここまで来たらやるしかねぇよな。俺も久しぶりに史人と戦えるのが楽しみだ」
のんきにそんなことを言うリュウ兄。ただその眼は静かな闘志を湛えていた。
考えようによってはリュウ兄と戦える機会なんてこの大会に出ていなければ無かったかもしれない。だったら今は素直に強敵と戦えることを喜ぼう。
「僕も楽しみだよ。勝負だ、リュウ兄」
「おう、勝負だ、史人」
『と、いうことで何やら顔見知り同士の戦いとなりました準決勝。いやーいいですねー熱いですねー! わたくし、こういう少年漫画的な熱い展開は大好物なんですよー! 解説の蒼梅さんはいかがでしょう?』
「いち開発者として、ただただ楽しみです」
『はい、完全にぶん投げた感想を有難うございました。それでは両者準備の方をお願い致します!』
ステージ上に設置された台に座る。対面には表情は見えないがリュウ兄。
いつ以来だっけな。昔もこうしてやったことがある気がする。あの時はどっちが勝ったんだっけか? まあ多分リュウ兄だろうけど、それでも昔の僕はきっと勝ちたかったんだろうな。
でも僕はあの時のままじゃないよ、リュウ兄。一人じゃここまでこれなかったけど、頼りになる相棒を見つけたんだ。
ちらりとステージ脇の真白を見る。口だけで「頑張って」と言っているのが見えた。うん、頑張る。真白がくれたものに恥じないくらいに。
『それでは準決勝第一試合。顔なじみ同士の対決。勝つのはどっちだ!? レディ……ファイト!!』




