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Unlimited Fight  作者: マコト
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大会への誘い

 数年ぶりに見る鈴羽(すずは)の姿は、当たり前だけど僕が覚えている頃より大きく変わっていた。背もかなり高くなり、長く伸びた髪を横でまとめ流している。手足も長く、まるでモデルのようにスラっとした印象を受ける。


「あれが、鈴羽さん……」


 となりで真白(ましろ)も驚いたような声をあげた。ただ僕はそれ以上に驚いていた。

 

 Kurobaneが鈴羽であるとまったく考えなかった訳ではない。だけど、戦い方が大きく違っていたのだ。


 昔の鈴羽は性格に似合わず、とても攻撃的な戦闘を得意としていた。対してKurobaneはマリアの防御型を使用し、相手の攻撃に合わせていく戦い方だった。だから自然と鈴羽である可能性を除外していたんだけど……。

 

「さっきの質問に答えよう、史人(ふみと)。お前と戦ったのは鈴羽だ。で、鈴羽が間違いなく史人だと言うもんだから今回は会社に来てもらったってわけだ」


「そう、だったんだ……」


 まさかあれだけ会いたかった親友と、ゲーム上とはいえもう再会していたとは思わなかった。そう考えている間にも鈴羽は僕の横を通り抜けて、ケン兄の隣に座った。


「で、ものは相談なんだがな史人。鈴羽からの推薦もあって大会に出てみないか?」


「大会?」


「あぁ、今度UFの公式大会を開こうと思ってるんだ。その招待選手に出てほしいと考えているんだが、どうだ?」


「どうといわれても……」


 誘い自体はかなり嬉しい。今よりもっと強くなりたいし、そのために強い人とも戦いたい。だけど、僕なんかがでていいものだろうか? とも考えてしまう。


「正直、大会とかにはまだまだ出られるレベルに達してないと自分でも思うんだよね。UFを始めたのもほんと最近だし、Kurobane――鈴羽から一ラウンド取れたのだって、僕の腕というよりはキャラの性能だし」


「そんなことないわよ、先輩! だって、わたしのキャラを使いこなしたのは、間違いなく先輩の腕だもん!」


 真白がそういってくれることは嬉しいけど、やっぱりJOKERを使っていなかったら勝てなかったと思う。それだけ真白のキャラが僕に合っていた。


「まあ真白さんの作ったキャラ性能もあるだろう。あの完成度は、うちの開発チームも舌を巻いていたぞ。あれだけのキャラ製作者を素人にしておくのはもったいないってな」


「そ、それは……有難うございます」


 ケン兄の言葉に恐縮したように縮こまる真白。褒められることに慣れてないのか、その姿はちょっとかわいらしかった。


「だがそれだけで一ラウンド取れるほどうちのKurobaneは甘くないと俺は思っている。だから、史人は自分の腕を過小評価しないでほしい。お前は間違いなく強い。それは俺が保証する」


 ケン兄にそう言われることは純粋に嬉しかった。今まで抱えていた心のしこりが、すっと溶けていくような感じがした。


「だからこれは提案なんだが、史人の腕と真白さんのキャラ。この二つセットで出場ということでどうだ?」


「二人で、か……どうする、真白?」


「せっかく誘ってくれたんだもん。それに、先輩も強くなったとこ見せたかったんでしょ?」


「そう、だな」


 ケン兄が負けた時逃げてしまった弱い自分を、ずっと嫌に思っていた。そして今日、ケン兄や鈴羽と会って強い自分を見せるチャンスが与えられた。なら、ここは逃げずに挑戦しなくちゃ。このまま鈴羽に負けたままも悔しいしな。


「ケン兄……お願いしていいかな?」


「そう言ってくれると思ってたぜ。さすがは俺の弟子だ。なら、枠はとっておく。それに、俺たちの会社にも史人の参加は結構メリットがあるんだぜ?」


「え?」


「今まで不敗だったKurobaneが一ラウンド落としたんだ。この前から掲示板はお前の話題で持ちきりだぜ?」


「うそ!?」


「あ、本当だよ先輩。わたしも毎日確認してたから」


「言ってくれよおぉぉーー」


「ふふ、ごめんね、先輩」


 真白の悪びれない肩を落としたところで、ふと鈴羽と目が合う。そういえば鈴羽はさっきから一言もしゃべっていない。一体彼女は今回のことをどう思っているんだろう?


「鈴羽……その、大丈夫かな?」


「……私が推薦したんだから、大丈夫」


「そっか。でも鈴羽怒ってない?」


 それはカンだった。だけど昔から表情をあまり変えない鈴羽の表情を読むことにかけて、僕は自信が持てるほどの時間を彼女と一緒に過ごしていた。だから、


「史人に、聞きたいことがある」


「……何かな?」


 鈴羽が僕に関して怒っている部分は、きっと昔何も言わずゲーセンに行かなくなったことに対してだろう。だから、その点に追及されたら僕はすぐにでも謝ろうと身構えた。しかし、


「どうして、まだ攻撃型の戦い方を続けているの?」


 鈴羽が発したのは、僕の戦い方に対するそんな疑問だった。

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