突然
「かのんくーん!おまたせっ!」
次の日私は、裏山でかのんと合流した。かのんは随分前から待っていたようだ。地面のあちこちに
木の枝で書いた落書きがある。
「ごめん、待ってた?」
「ううん、ぜんぜん。行こっか!ゆうこちゃん」
はい!、と手を差し出してくるかのん、なんだろう?
「・・・えへ、おてて、つないで行こーよ」
「ヒェッ」
うっひゃ~~~~~~~!!! やだ~~~~!無理~~~~!尊い・・・・(天には光あふれ大地には恵みが溢れ人々は賛美の歌を歌う絵文字)
あ゛あ゛~~~~~~~~!!!圧倒的光~~~~!!!!ムリ~~!!語彙力溶けちゃうのぉぉ~~~!!!!
「じゃあ、案内するね!」
「はわわ///」
突発的尊さにより放心状態の私は、かのんと手をつないだままテクテクと歩く。
かのんは張り切っているようだ。ピョンピョンと楽しそうに歩いている。
うーん、待っていた事を全く感じさせないこの笑顔!初手手繋ぎ!小学一年生とは思えない彼氏力だ。
・・・まぁ、多分、実際は待っていたんじゃなくて家に居るとあの親に何されるか判らないから裏山に避難していたんだろう。
本当は、彼らの環境を考えるとかのん達から救出しなければならないのだろう。
しかし、あいつ等はかなりの強敵だ。子供の私では手に負えない。
数ある先人たちのチャートもこの双子のはかなり複雑なのが多い、これメインの話だってあったりする。
そもそも、かのん達の虐待は前々から近隣住民に何度も通報されているのだ。しかし、明確な証拠もなく
両親は市の職員との話し合いを拒否し、おまけにかのん達は虐待の事実を隠してしまっている。
・・・そう、本編の話だと双子は近隣住民達の助けを全て拒否し、逃げ回っていたのだ。と、双子の兄、華音本人の口から語られている。
理由としては、事実を話すともっと酷い目に合うかもしれないと恐怖があったのと、それでも両親のことが好きだったのだ。
自分たちが我慢していれば、いつか、優しい親になってくれると。
・・・それがあの結果となるわけなので、私としては早々に豚箱に入り二度と一般社会に出てこないで欲しいのだが。
そんなわけで、華音と奏音を救出しついでに攻略するには、あの両親への依存的な好意をどうにかしなければならないのであって初対面ではまず無理なのだ。
くっ・・・!私にもあの子達の様にニコポナデポが使えたら・・・っ
「ゆうこちゃん、ここ!着いたよ!」
「はっ!」
うだうだと考え事をしている内に目的地に着いたようだ。
藪を抜けた先には崖があった。覗いてみると下は谷の様になっており木々か茂っていた。底の方は暗くて判らない。
・・・ん?
下に段ボール箱が幾つも捨ててある。かなり大きいやつだ、蓋は開いている、中に何か入っている。
目を凝らして見る。
「・・・かのんくん、ここで犬に会ったことある?」
「うーん、無いよ?」
そうなのだ、私が確認した情報だと犬が居るのは、裏山の麓なのだ。酷いけがをしていて保護されたと聞いている。でも、かのんは此処で犬を車に乗せている人を見たことあると言う。
そして、かのんは気づいていないがあの中に入って居たのは・・・!
突然、車の音がした。
「あ、だれか来た・・・わぁ!」
「かのんくん!、こっち来て!早く!」
咄嗟にかのんを引っ張って、草むらの中に隠れる。
大きなワゴン車が止まった。中からのそりと、厳つい中年男性が出てくる。
そして、後ろから段ボール箱を外に運び出した。段ボールの中から忙しなく犬の鳴き声がする。
「・・・ったく、キチンと売れりゃぁ・・・こんな面倒な・・・」
何かブツブツと呟きながら、段ボール箱の一つを崖の近くまで持って行った。
どうしよう、あれ絶対崖の下に投げる気だ・・・!でも、でも!私じゃ、あの男からとてもじゃないが
段ボール箱を奪うことなんて出来ない!、どうしたら・・・!?
焦りと恐怖の中固まっていると、段ボール箱の中からひと際大きな鳴き声がした。
「キャン!キャンッッ!」
「あ゛!てめぇ、逃げんな!!」
段ボール箱の蓋から飛び出てきたのは、黒いトイ・プードル・・・
・・・ダヤンだ・・・!!
男が逃げるダヤンに手を伸ばす、駄目!駄目!!駄目!!!
「ダメェェェーーーーーーー!!!!!」
「ヴグォ!?」
「ゆうこちゃん!?」
「キュ?」
私は思わず、このクソ野郎に渾身のタックルを決めていた。