清水 一葉
「・・・えっと、俺?」
「うんっ!すごいよね!かっこいいー!」
「あ、ありがとう・・・」
栗色のややくせのある髪、同じく栗色のキラキラとした目、七歳にしては背が高くしっかりとした体つき
パチパチと瞬きした後、ほんのりと顔を赤くしてはにかむキュートな彼が、今から攻略する「清水 一葉」だ。
「・・・優子っ!駄目じゃない!突然走ったりして!」
「おーい、どうしたんだいきなり。」
遅れてママとパパが、駆け寄ってきた。
ママが私に小言を言うより早く、一葉のお母様が両親に声をかけた。
「まぁっ!こんなところでも声を掛けていただけるなんて、ありがとうございます。
ほら、いちちゃんもごあいさつして?」
「あ、えっと。これからも、おうえん、よろしくおねがいします。」
と、一葉がだとたどしく頭を下げた。キャワイイ。
ママとパパは困惑して私に声を掛ける。
「・・・優子のお友達?」
「もーっ、知らないの?テレビに出てたよ!ほら、少年サッカーの・・・」
「そうなのか?・・・もしかしてツバサハリケーンですか?」
と、パパが尋ねると一葉のお母様は誇らしげな顔をした。
「ええ、そうなんです。此処の地区で一番強いチームですの、うちのいちちゃんはそこのエースなんです」
そして、瞳を輝かせると、こう言った。
「そうだ!もしよかったら、今度練習試合があるんです。ぜひ見に来てください!」
すかさず私も声を大きく張り上げてアシストする。
「えーっ!すごーい!パパ、ママ行こうよ。ねっ!」
「あ、ああ。良いかもしれないな・・・」
「え、ええ。その、お時間がありましたら・・・」
「はい!ぜひぜひ来て下さい。お待ちしてますね!」
良し!これで次のフラグが立った。此処までは夢小説の提唱したチャート通りだ。
そう、彼、「清水 一葉」は、ゲーム本編でもサッカー部に入部しており、
実力はプロからも打診があるほどの折り紙付きだ。
しかも、幼いころからサッカーチームに所属し「天才サッカー少年」として
何度か取材を受けていると語られている。
そして設定資料集では、小学校入学前に取材を受けたと、明言されている。
それらを組み合わせ、またゲーム本編の細かな情報から考察した。
作者「一葉きゅんの着古したユニホームでウェディングドレス作りたい」さんの、一葉メイン逆ハー小説
「何度でも巡り合う」で提唱しているチャートがこちらだ。
1、一葉きゅんは、住所はわからないが、同じ学年、同じ学区であることは確定しているため
まずは、小学校の始業式まで待つ。
2、始業式で何が何でも見つけ出し、まずは一葉きゅんのお母様に接触する。
突然声を掛けて怪しまれないように、取材を受けたことなどをダシに交流を行う。
(一葉きゅんは、結構練習などで忙しく、中々イベントを起こしにくいため、先に家族から攻略したほうが吉)
3、一葉きゅんがテレビに出たことを褒め、煽てて、試合もしくは、練習に見に来てもらうように言わせる。
この時、両親に必ず傍にいてもらい親同士の約束と言う呈にする。(子供同士の約束だと連れていってくれない確率が上がるため)
4、試合、もしくは練習を観戦し、一葉きゅんの将来の夢を応援するイベントを起こす。
これでゲーム本編へのフラグが立つので、此処から好感度上げに努めていく。
5、幼馴染ポジションを構築する。そのポジションを使い見守りを行い、交通事故を未然に防ぐ。
お母様は自尊心が強めなお方なので、これからも此方に接触してくる可能性が高く、主人公が間を取り持てば、自然と家族ぐるみでの付き合いとなる可能性が高い、つまり恋愛イベントを起こしやすくなる。
それにより、幼馴染の間柄になれば、見守ることへの大義名分が立つ。事故は場所が明言されているため
ちかずけないようにする。
6、結婚する。洋式がいいな♡
・・・まぁ、といった具合だ。他の夢小説も、イベントなど細かいところは違いがあるが、
概ねそんな感じだ。
この世界はどんなイベントがあるか未知数なため、私も、臨機応変に対応していかなければならない。
そのため、その状況にあった夢小説をお借りしなくてはいけないだろう。
なんにせよ第一関門突破だ。
達成感に浸る私を尻目に一葉のお母様は、両親を相手に延々と自慢話を始めた。
また、テレビ局の方が来られてインタビューを受けるんです。一年生でエースだなんて中々無いことなんですって、やっぱりいちちゃんには才能があるのね。ゆくゆくはサッカーの名門校に・・・等々。
文字どうりマシンガントークで繰り広げられ、頷くことしかできない両親。
「なぁ、早く帰ろうよ。・・・恥ずかしいって」
そこに一葉がお母様の手を引っ張り帰るよう促した。
耳まで赤くなってる・・・天使かな?
「もうこんな時間!じゃぁ失礼させていただきますね。お待ちしてます」
「はーい!さようならー、清水君もまたねー!」
「ん、ばいばい」
別れるとき、大きく手を振った私に
一葉ははにかんで小さく手を振ってくれた。・・・あっやべ
「ふー、何だかすごい人だったなぁ。どうする、見に行くか?」
「そうねぇ。同じ学年ですもの、見に行かない訳にはいかないわよ、予定を確認して・・・きゃ!」
「うおっ!優子突然どうした、鼻血なんか!」
私の鼻からは滝のように鼻血が出ていた。くっ・・・尊さのあまり、・・・恐ろしい子!
慌てて止血をする両親に挟まれそんなことを思った。