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4/12

入学式にて

「・・・ですから、皆がこの学園で健やかに成長し、自分だけの翼を持つことを私は願っております。」


校長の締めの言葉を、ぼんやりと聞きながら私はこれからの攻略チャートを考えていく

まず、私の置かれた状況についてだ。

吹雪市に越してきた私の年齢は七歳、ゲームの設定によると一年後に私は両親の転勤によりまた、

引っ越すこととなる。幼少の「優子」は、この一年で攻略キャラ全員と出会いゲーム本編のフラグを立てていくこととなる。

春に、「翼」に一目ぼれされ

夏に、「夏彦」とまた会う約束をし

秋に、「一葉」の将来の夢を応援し

冬に、「ダヤン」を介抱する

と、いったスケジュールだがこれではハーレムルートにはとてもじゃないが間に合わない。

素早く全員に出会い、私に惚れてもらい、バットフラグをへし折らねばならない。


・・・不可能だと思うことだろう、元のゲームに攻略法があるならいざ知らず、存在しないルートを

しかも、ゲーム本編ではなく、僅かな回想シーンと、設定資料集にしか情報がない幼少期からのスタートだ

何が起こるかわからない中、詳細に組んだチャートを作り、実行するというのは。

しかし、チャートはもう「読んで」いる。そう、私にはとてつもなく頼もしい味方がいるのだ!



夢小説(大いなる先人たち)」が!!!



皆さんは、「夢小説」と言うものをご存じだろうか、わからないなら「二次創作」でも良い。

簡潔に説明すると「原作で無かった出来事を描写して、個人もしくはみんなで楽しむ事」だ。

「えー、原作に書いてある事が全てでしょ?」と言う人がいるかもしれない、


はい、仰る通りです。


が!だが!


それが納得できない人々が大勢いるのも、また確かなのだ。私とかね。

特に「奏音」のプレイヤーはその傾向が強かった。それまで乙女ゲーと言えば、

ハッピーエンドが当たり前と思っていた乙女たちは文字どおり、阿鼻叫喚となり数日足らずで、

ゲーム本編後の幸せいっぱいなキャラ達のssやイラストで溢れかえり、その傷ついた心を慰め逢っていたのだが、あるプレイヤーがこんな一言を発する。



「これって、選ばれなかった子はどうなるの?」



・・・!なん・・だと・・・


そう、このゲームはルートを進むと、主人公は攻略対象に掛かりきりになり、他のキャラに手を出すことが

出来なくなるのだ。当たり前だろビッチかよと、ツッコミを入れられるだろうが、私たちはこう思ったのだ。


一途なことは本当に正しいのか?そうすると死ぬのに?


あんなに仲良くして、自分に好意をもっている子を無視するの?


それってホントに誠実なの?


と言うか、幼少期にフラグ立てたのお前じゃん責任とれよ、と。


主人公が出来ないなら、()()()()()()()()()()()()


まあ、兎に角。この界隈では『わたしがかんがえたさいきょうのはーれむるーと』が滅茶苦茶流行ったのだ。


どんなにクソ文でもハッピーハーレムであれば褒めそやし、

どんなに上手かろうと一人だけを選び、選ばれなかったキャラがいると、罵倒の嵐、

即、学級会が開催される。

と、他ジャンルのファンのからは「狂人の集まり」「毒沼」と言われる、かなり特殊なルールが出来てしまったのだ。


私は、そこに十歳からどっぷりとつかっていた。

素敵なお姉さま達が書いた逆ハー小説を読み漁り、感想を送りまくり、母に無理言ってコミケに連れていってもらい逆ハー同人をおこずかいの範囲で買い漁った。

大人になった今でも逆ハーは至高の存在だと思っている。二次創作を書く時もでも必ず逆ハーにする。


何が言いたいかと言うとこれから私は、その「逆ハー小説」を元にこれから彼らを攻略していこうと

思っているのだ。そして、多分これが一番安全で確実なやり方だ。

この幼い体で、今から情報収集して行動を起こすのは、時間的にも体力的にも不可能だ。

そもそも私には、緻密なチャートをくみ上げる知能など無い。大学時代もゲームばっかやってたんだ舐めるな。私より遥かに頭のいい人が、ゲームと設定資料集、ライターへのインタビュー記事などを読み込んで書き上げたものの方がよっぽど信用できる。



・・・さて、始業式はもう終わった。

ママとパパに手を引かれて歩く。私は周囲を見渡す・・・いた!


「ちょっと、優子!?」


ママの呼ぶ声が聞こえるが無視して彼に走りよる。

母親に手を引かれている彼はこちらを見てぽかん、とした顔をしている、

構わず呼吸を整えると、意識してとびきりの笑顔を作る。


「ねえ!しみず君だよね、私、ゆうこ!サッカー上手なんだね!」


さて、どうでるか。









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