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おどる、おどる 「7」

おどる、おどる 「7」

弓子にちょっと悲しい事件が起きて、成り行きで俺がハンカチをもらった翌日、昼休みに珍しく教室に横山がやって来た「泉、おまえ先月のゆみちゃんのステージ見にいかなかったろ?すごく良かったぞ!行けばよかったのに」そういえばしばらく前に弓子に○○公会堂のバレエの公演で踊るからよければおいでー!って言われていたのを思い出した。バレエにあまり興味がなかったから生返事をしていてすっかり忘れていた。「ああ、忘れてた。6月の最後の日曜だったか?どうせ主役じゃなかったんだろ?」横山は珍しくむきになって「なんだよ冷たい奴だなー、オレはイッチーと太田悦子と3人で行ったけど感動したぞ。そりゃぁ主役じゃなかったけどゆみちゃん可愛くて綺麗だったぞー、実はオレも最初はどれがゆみちゃんだか分からなかったけどイッチーに教えてもらって、ずーっと見てたよ。お前も来れば、ゆみちゃん喜んだと思ったぞ」口をとがらせて俺に文句を言う。「悪かったよゴメン、でもまたそのうち公演やるんだろ?次はきっと行くから、オレもなかなか忙しかったんだぞ」横山に苦しい言い訳をして勘弁してもらった。


何日かして下校の時に弓子に会ったので「先月、バレエのステージに上がったんだよなー?ゴメン、ちょっと用事があって行けなかった」言い訳をすると「別にいいよ、秋の公演も出るし、それに実を言うと私、本番ってあんまり好きじゃないんだ。一人で練習で踊ってるときが一番楽しいんだ」俺が心配したほど弓子は気にしていないようだ。俺が「夏休みになったら3月に公園に行ったメンバーでどこかに行かないか?しばらく会ってないから」と聞くと「うん、いいよ、私はイッチーとエッちゃんに都合を聞いてみるから、ユウジくんは横山君と国枝君の都合を聞いてみてよ」「わかった、聞いてみるよ」俺はイッチーはどうしてるかな?相変わらずあの調子でやってるのかなと思った。久しぶりにちょっと会ってみたくなった。 

翌日、横山に都合を聞いてみた。なんと横山は夏休みは剣道部の合宿と練習があるから無理だと言う。「おまえ、中学で剣道部をあまりの防具の臭さですぐやめたんじゃなかったか?」聞くと「ウン、あのときは臭くて我慢できないって思ったけど、あれは人から借りた防具だったから臭かったんで、考えたら自分のなら我慢できるって気がついた。で、新品一式買ったら平気になった。自分の匂いなら平気だった。剣道は楽しいぞー」すまして答える横山に俺はあきれた。コイツは繊細なのか鈍感なのかさっぱり分からない。

家に帰って国枝に電話を掛けてみた、弓子と話した事を伝えると「うー、多分だめだな。親戚のオジサンが逗子にいるの知ってるだろ?オジサンは毎年、海の家をやるんだけどできるだけ毎日手伝いに来て欲しいって頼まれちゃったんだ。3万円も貰えるんだぜ、行きたいけど無理かなー」なるほど、皆それぞれの道を進み出したという事だろう。俺は「分かった、また海の家が終わる頃に連絡するよ、秋には時間が取れるだろう?」そう言って俺は電話を切った。

何日かして放課後、弓子と出会ったので伝えた。「だめだなー、横山は剣道部に入って合宿があるんだって、国枝はオジサンの海の家で手伝いだってさ。そっちは?」「うん、こっちもだめかな?イッチーは家族でずっと軽井沢の別荘だって、あの子のうちはお金持ちだしやっぱりイイトコのお嬢さんは私と違うなーって思った。エッちゃんはボーイフレンドが出来たんだって、いつ彼と遊びに行くか分からないから難しいって言ってた」俺は「そっかー、みんな方向が色々変わってきたってことだよなぁ、しょうがないか」こうして仲の良かった友達も少しずつ違う道を歩き出すって事なんだろう。いつかまた道が交じあって繰り返す事こともあるのかな?と思った。


関東地方が梅雨明けしたと発表されるとすぐに夏休みになった。俺は新聞部の黒田や先輩に勧められて部の主催で千葉の外房に行くことになった。別に強制ではなかったが海水浴場のバンガローに一泊する勉強会だった。平山先輩に話を聞くと、去年も山梨のバンガローを借りて7人で泊まったが勉強会なんてやらないで昼間は川遊び、暗くなったら花火、隠れて酒を飲んだ奴もいたけど楽しかったという話を聞いて俺も参加することにしたという訳だ。


8月○日朝8時半東京駅集合は結構早い時間だ。7人で途中、外房線に乗り換えて上総一宮駅到着が10時半頃、荷物を持たされて20分程歩くと海とバンガローが見えてきた。高島先輩が「いやー暑いなー、やっぱり去年みたいに山にすればよかったかな?」上村先輩が「私は海でよかったなぁと思うわ。海水浴場が目の前なんだから、思いっきり水遊びができるじゃないの!」嬉しそうに返事をする。平山先輩が「どっちにしたってもう着いたんだから、今更山には行けないよ。さぁ、受付を済ませてバンガローに入ってみようぜ」

俺が持たされたバッグはかなり重かった。電車の中で聞いてみるとバンガロー村には簡単な調理場とシャワー小屋があると言う。どうやらバッグの中身は食材らしい。帰りはきっとほとんどカラになるだろうから少し気が楽になった。松林の中に錆びたトタン屋根の小屋がならんでいた。借りたバンガローは2棟、男女別になるようだ。室内はとてもきれいとは言えず、なんか虫が這いずり回っていそうだが我慢するしかなさそうだ。上村先輩に「あのー、食事の支度は全員でやるんですよねー?もうすぐ昼になるけどオレは何をすればいいんですか?」聞くと「大丈夫よ、食事の支度は女子でやることになってるから。後かたづけくらいしてもらうかも知れないわ。去年は高島君がカレーに味噌を入れるなんてとんでもないことしたから、女子3人で作ることにしたの」なるほど、俺は家ではインスタントラーメンくらいしか作った事ないし、包丁も満足に使った記憶がなかったからホッとした。昼は焼きそば、夜はカレーライスだという。海岸の様子を見に行ってからバンガローに戻り、女子は昼食の焼きそば作り、男子は箒とちりとり、ぞうきんを借りて小屋の掃除をした。しばらくして3人が「焼きそば、できたよー」段ボールに乗せた紙皿に盛りつけした焼きそばを持って男子バンガローにやって来た。黒田が「ありがとうございます。部屋は掃除したけどあんまりきれいになりませんでした」申し訳なさそうに言うと上村先輩が「しょうがないわよ、どうみてもこのバンガロー古そうだし、清潔とは言えないわね。フナムシやゴキブリがいないのを確認したんだから一晩くらい我慢しましょ」どうもあきらめがついているようだ。全員でバンガローで昼食を食べてから更衣室で水着に着替えた。俺は今日の為にグリーンとオレンジの海パンを買ってきた。更衣室を出ると女子は皆、紺色のスクール水着だった。ちょっと期待していた俺は肩すかしをくらった。どんな水着かなー?ビキニかなー?楽しみにしていたのにガッカリだ。俺の横にいた黒田が肘で俺の脇腹をつつく。小声で「泉も女子の水着、楽しみにしてたんじゃないの?なんかがっかりだよなー、オレは特に上村先輩が何を着てくるのかワクワクだったのになぁ」聞こえたのか、聞こえなかったのか上村先輩が「黒田くん、私達の水着を楽しみにしててんじゃないの?3人で話し合って未成年には刺激が強すぎるからと思って水泳の授業の時の水着にそろえる事にしたの、どう?」黒田はあわてて「いえっ、別に水着を楽しみにしてた訳じゃありません。なぁ泉」しどろもどろでオレに振る、俺だって返事のしようがない。

平山先輩が「なんでもいいから海岸にいこうぜ、ビニールシートとボールを忘れるなよー、貸しパラソルって看板があったから、飲み物やパラソルは海の家で調達できるだろ?」7人でゾロゾロと海岸に向かった。途中から砂地になって熱くてとても素足で歩けないほどだ。

海の家に寄ってビーチパラソル2本とエアーマットを借りて砂浜に並べた。籠に入れたタオルや荷物をシートの隅に置いて風で飛ばないように並べた。池口先輩が「私、ちょっと海に入ってくる。肩と首筋に日が当たって焦げそうよ。上村さん、片岡さん、一緒に行きましょ!」女子3人は波打ち際に向かって歩き出した。平山先輩が「オレだって背中が燃えそうだ。海に入ろうぜ」黒田が「オレ、とりあえず我慢して荷物の見張りしてます。行ってきてください。そのかわり後で交代してくださいよ」黒田を残して俺たちも女子のあとを追った。

波打ち際に近づくと少しづつ足の裏の熱さが弱まってきた、足が海水に浸かると最高に気持ちがいい。膝まで浸かると今までの熱さが完全に吹っ飛んでいった。俺はいきなり背中から羽交い締めにされた「なっ、なに?」平山先輩だ。俺は体を左にひねられてバランスを失って横倒しになりながら海水に浸かった。「ひえー!冷たいー!気持ちいいー」冷たいのと気持ちいいのと顔がしょっぱいのとごっちゃになってなんだか分からないが楽しい。平山先輩も俺と一緒に海の中で横倒しになっている。「どうだぁ泉、やっぱり海はいいだろー?今までの暑さが吹っ飛ぶだろー?海でよかったなぁ」回りに女子達も集まっていた。池口先輩が「どう?泉君、塩付けになった感想は?年に一度くらいこういうシーンもステキだと思わない?」俺は「はい、前に両親と海に行ったことあるけど、それよりみんなで来ると最高です」なるほど、ここに来るまでが暑いと余計に海水が気持ちよく感じることを体で理解した。いつか必ず彼女を作って一緒に海に行きたいと思った。


それから泳ぎが得意な平山先輩達と沖のほうまで行ったりした。この海岸はかなり遠浅でどんどん進んでも足がつくので俺も一緒に行った。ただ、足に絡みつく海藻の感触が気持ち悪いので沖からはすぐに戻った。水の掛け合いをしたり波頭に頭を突っ込んだりして騒ぐ。砂浜に上がってスイカ模様のビニールボールでバレーボールをして遊ぶ。疲れるとパラソルの下に入ってぬるくなったサイダーを飲む。沖のほうに目を向けると小さくコンテナ船が見える。白い雲の中にカモメが飛ぶ姿も見える。本当に海の壮大でキレイなこと、海の楽しさを味わった気がした。

夕方になって海から上がるようにと海水浴場に放送が流れて俺たちも引き上げることにした。


挿絵(By みてみん)



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