おどる、おどる 「5」
おどる、おどる 「5」
イッチーと話をしながらみんなの所に戻るともうゴザの上で食べ始めていた。横山だけは正座して膝の上にタオルのせている。
俺は「ヨコヤマー、ずいぶん行儀がいいなー、いいとこのご子息みたいだぞ」からかうと「いや、いつもウチでこうして食事してるから、、一番落ち着くかなーと」コイツは真面目な顔をして返事をするので、かからうのが楽しい。
弓子が「ユウジくん、二人で手を洗いに行ってイッチーと進展はあったの?」俺が「うん、こんどみんなで植物園に行こうかって話になった。オレも少しは花の種類を覚えたいと思ってさ」イッチーも「はい、みんなよかったら4月か5月に花を見に行きませんかー?」靴を脱ぎながらそんな話をした。
俺は屋外の広い場所でみんなで食べるからか、運動して腹がへったからか、唐揚げもおにぎりもうまいと思った。もしかしたら本当に女子が一生懸命作ったからうまいのかとも考えた。
みんな充分おなかが膨れたようで、ゴザのうえでおとなしくなった。横山が「みなさんのおかげでおいしいものがたくさん頂けました。ありがとうございます」弓子が「横山君、おおげさねー、このくらいでよければまた作るから、またみんなで遊びに行きましょ!」おかしそうに答える。国枝は「いやーホントにうまかった。だいたい腹一杯になったよ。できればあとアイスクリームが食べたいかな?」俺は「いい加減にしろよー国枝、じゃ売店でアイス売ってたから6個買ってきて」「イヤもういいかな?腹八分目にしとくわー」勝手な奴だ。
俺は弓子の横に座ってぼんやり石の橋を眺めていたが「弓子、バレエやってるんならあの橋の上で踊れないかなー?」と聞いてみた。「なに言ってんのよー、ユウジくん!クラシックバレエはバレエシューズ履かなきゃ踊れないんだよー、それにあんなデコボコの石の上じゃ足が滑らないでしょ?無理無理―」口をとがらせて弓子が答える。悦子が「エー!ユミちゃん、バレエやってんのー?知らなかった。じゃ踊るとこ見たいなー」イッチーも頷いている。
「もう、あんまりみんなに話してなかったのに。ユウジくんおしゃべりだなぁ、じゃぁ6月の発表会で私も踊るから見たい人は見に来れば?」
横山が「バレエって、あの白いフワフワのスカートでクルクル回るやつだよねー、すごいすごいー」国枝は「フーン、バレエなら俺はハワイアンのほうが好きかなー?あのノンビリした踊り、いいよなー」みんな好き勝手な事を言う。
俺が「さぁ、そろそろかたづけて移動しようぜ、マップ見るとまだ半分くらいしか歩いてないし、橋の先に行くと登りだけどグルッと回って元の入り口の戻れるらしいから、国枝もうゴザは使わないから捨てていいぞ」と、言うと「うん、でもなんか愛着湧いちゃって、持つて帰って洗えばまた使えるし」おかしな奴だ。横山の水筒はだいたいカラになったし、俺が持っていた弁当も包みだけになってみんなに返した。
木道があったり丸太の階段があったりして途中に炭焼き小屋もあった。イッチーが右手の上を指さして「ユウジくん、あれがソメイヨシノの桜の木ですよーもうしばらくしないと花は咲きませんねー」俺はだんだんイッチーと花を見に行きたくなってきた。ブランコと滑り台がある小さな公園をすぎると元の展望台がある入り口に戻った。「そろそろ3時になるからバス停に戻って帰ろうか?なかなか面白かったなー」俺が言うとみんな頷いていた。
しばらくしてバスがやってきたので6人で乗り込んだ。弓子が俺の隣に座ったので小声で「弓子、さっきバレエの話しちゃったけどまずかったかな?」聞くと「別にいいよ、隠してたわけじゃないし、みんな聞かなかったから話さなかっただけだから。でも長いことレッスン受けてるけどあんまりうまくならないんだー、べつにバレリーナになりたい訳じゃないし、踊っていると楽しいから続けてるだけなんだよ」良かった、怒ってるわけじゃなさそうだ。
朝集まったバス停に戻るとみんな楽しかった!と言うので、またどこかへ行こうと言うことになった。4月になると通う高校がバラバラになるので難しいかな?と思ったがその時はその時だ。
4月になって入学式の日が来た。さすがに親と一緒に来る奴はいないようだ。俺は弓子と横山と同じ高校に入ったがクラスは別々だった。どんな連中とクラスが一緒なのかと少し緊張したが、さほど危なそうに見える人物はいないようだ。ホッとした。少しずつ教室の中を見回す余裕が出てきたのでキョロキョロしていると坊主頭の奴と目が合った。「俺ほN中からきた泉祐司って言うんだ。何処から来たの?」聞いてみると「オレは町田大介、K中から来た」ポツポツと話し出すと中学でサッカーをやっていたという。ここでもサッカー部に入りたいらしい。俺は「フーン、ここのサッカー部は強いの?」聞くと「あまり強くないらしいよ。だからオレでもレギュラーになれると思ってこの高校に決めたんだ、泉はなんかやってたの?」「いやぁー、科学倶楽部なんていうつまらないクラブにいただけで特にやりたいことはないかな?」「フーン」こんな感じでいろんな話をした。
担任は奈良と言う若い男でちょっと弱々しい感じだったが様子が分かるまでおとなしくしている事にした。
体育館で入学式をしてからそれぞれの教室に入って担任の挨拶と明日からの予定を聞いて、きょうは授業がないから解散、下校になった。
どのクラスも終わりはだいたい一緒なので帰ることにした。バス停に向かって歩いていると弓子、横山と合流した。弓子が「ユウジくん、クラスはどうだった?私はK中のひとみちゃんと友達なったよ、テニス部にはいるんだって」俺は「まだ初日だからクラスのことはよくわからないなぁ、危なそうな奴はいないみたいだ。K中の町田って奴と少し話したけどサッカーやりたいって言ってた」横山が「佐藤くんって人から声かけられて、背が高いから一緒にバスケットボール部に入らないか?って誘われたけど、バスケットボールは中学の時に苦手だったんで、イヤだけどうまく断れなくて困ったよ」「スポーツ好きな奴多いんだなー、弓子はどうするの?」聞くと「私はまだバレエのレッスン続けるから、どこにも入らない、ダンス部とかないんだもん。ユウジくんは?」「俺はあんまりやりたいことないなー、まぁこれから考えるよ」
さすがに高校になるといろいろ変化があって慣れるまでは大変だと思った。