おどる、おどる「26」
岩下の家はバスを降りて5分位歩いた住宅街の外れにある一軒家だった。門を入ると右に玄関があったが左手に停めてある車のあいだに進む岩下が「こっち、こっち、奥にバイクがあるんだ」左手に勝手口らしいドアがあって岩下はドアを開けると「かあさーん、ただいまー、友達の泉連れてきたからあったかいお茶か牛乳を二つくださいなー」と、声をかける。車の後ろに2台のバイクがあった。鞄をビールケースの上に敷いてある板の上に置くとバイクの鍵を牛乳箱から取り出した。「ほら、これが俺のスーパーカブ、こっちが兄貴のCB125、ちょつと大きいだろ?俺は原付免許しかないからCBは乗れないんだけど春休みに2輪の免許を取ろうと思ってるんだ。そうすりゃ兄貴もCB貸してくれると思うんだ。楽しみだよ」「ふーん、大きいバイクのほうが面白いのか?」岩下がキーをひねってキックしてエンジンをかけながら「まー、でかけりゃいいってもんじゃないけどそれぞれ面白さは違うな、スーパーカブだって60キロくらいでるけど、CB125は100キロ近くでるらしいよ」「フーンで、このバンは親父さんの車か?」「あー、このパブリカバンか、これは会社の車だよ。ほとんど親父しか使わないからだいたいここに置いてあるんだ」「親父さんは何の仕事なの」「ウチから車で15分位のところの工務店に勤めてるんだよ」「なるほど、大工さんかぁ」「違うよ、工務店って言っても社員が30人くらいいて設計とか企画とかお客と打ち合わせして日程を調整するとか大工を手配するとか色々仕事があるらしいぞ。親父は現場に行くこともあるけど役所に建築申請を出すとかお客と設計図面を見て調整するとか色々やってるらしいぞ」「そうか、よくわからないからもういいや、じゃ、この車庫は親父さんが作ったんじゃないんだな?」「いや親父が簡単な図面を書いて知り合いの大工さんを何回か飲みに連れてってタダで建ててもらったんだ。材料も工務店に余ってたものをほとんどタダで貰ってきたらしいよ,、じゃおまえの親父さんは何の仕事なの」「ウン、親父の会社は二流の商社だって言ってた。主にヨーロッパの方からいろんなものを仕入れて日本の会社に売ってるらしいよ」
そんな話をしていると勝手口からお母さんらしい人が「お盆にのせたお茶とせんべいを持って現れた。「あーいらっしゃい、こんなものしかないけどゆっくりしてってね。リュウちゃんも家に上がって貰えばいいのにねぇ」「いいんだよ、祐二にバイクを見せるんで連れてきたんだから」「そおぉ?寒くなったら家に上がんなさいよ、泉君だっけ?ゆっくりしたってね」そう言って家に戻っていった。
それから1時間くらい俺たちはいろんな話をしていた。だいぶ暗くなってきたので「岩下、俺そろそろ帰るよ、面白かった。またな、こんど俺んちにきてもいいけど、おれは一人っ子だし面白いものなんにもないからな」「おう、気が向いたら行くかも知れないけど、それよりまたあした学校でな、バス停まで送ろうか?」「馬鹿にすんなよ、今来た道だぞ、目をつぶっても行けるよ」「そうか、じゃここでまたなー」




