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おどる、おどる 「25」

浅井と映画を見に行った翌日、ばったり片岡と会った。

「おう片岡、ちょつと話聞いてくれる?」

「ああ泉君、私これから音楽教室に移動なんです、アレグロで良ければ聞きますけど」

相変わらず訳のわからない奴だが無視して話し出した。

「実は昨日、こないだ話した浅井って子に無理やり誘われて映画見に行ったんだよ。そしたらどうも俺とはピントが合わないというか話が弾まないというか、片岡とデートの練習したときみたいに楽しくなかったんだよなぁ、どうしてだと思う?」

「そりゃ自分から誘ったわけでもないんだろうから、いきなり楽しくなるなんて虫のいい話はないんじゃないですか?もう少し付き合ってよく観察してみたらどうですか?高校生活はまだまだ長いんだし、、、」

やっぱり片岡に話を聞いてもらおうと思った俺が間違いだったようだ。

「じゃぁいいですか?ブレストなんでまた部室でねー」

なんだかわからないが行ってしまった。しかたない、今度弓子を見つけて相談してみようと思った。そこへ教室の入り口から顔を出していた浅井が近づいてきた。

「ユウちゃん、今話してた子だあれ?なんの話してたの?」

どうも少し前からそこにいたようだったが話し声までは聞かれなかったようなので「ああ、同じ新聞部の片岡って奴だよ、次の新聞の話をしてたんだ」

どうもほかの女子と話していたのが気になるらしい。

「そう、昨日は楽しかったね、今度はどこに行く?ユウちゃんの行きたいとこでもいいよ」

「俺はこれからちょっと忙しくなりそうなんだ。まぁ考えておくよ」

俺はあんまり気乗りがしないがその通りに話すときっとぶんむくれると思ったので、そうお茶を濁しておいた。

「そう、でも暇ができたら考えといてね、待ってるから」

贅沢な悩みかも知れないが新しい悩みができてしまった。

その日の放課後、珍しく岩下と久しぶりに話すことになった。二人ともその後の予定がなかったのでなんとなく話し始めた。

「どうよ?最近バイク乗ってるかい?どこかへ出かけた?」

「いやぁ最近結構寒いだろ、あんまり出かけてないなー、でも先月の終わり頃にわりと暖かい日曜日があったろ?一人でカブに乗って鎌倉に大仏さんを見に行って帰りに鶴岡八幡宮で遅めの初詣に行ったぜ、風がなくていい天気だったなー、おまえはどうしてる?」

「俺は正月に四人組で明治神宮に行ったろ?あれからたいしたことしてないなー、先週、転校生の浅井と映画見に行ったくらいかな?」

「えっそれってたいしたことじゃん。デートかぁいいなあ」

「いや、別に俺が誘った訳じゃないし、あんまり楽しくなかったなぁ」

「なに言ってんだよ、俺なんかデートどころかまともに女子と話す事なんてないんだから。強いて言えば小倉裕子と時々話すけど、俺、あいつは女と思ってないからなぁ。で、なんで楽しくなかったんだよ?普通、ワクワク、ドキドキ、ホヤホヤするだろう?」

「いや、なんかウマが合わないというかウシが離れるというか、どうも話が合わないんでかえって気を使って何を聞いてもピンとこなくてさー、疲れただけみたいな気がする」

「そうかぁ、ま、楽しい青春を大切にしようぜ、人生いろいろあるから楽しいんだぞ」

「なんか哲学者みたいな言い方だな、ま、覚えておくよ」

俺たちはそう言って授業や先生の話に話題は移っていった。

教室に残っているのはいつの間にか俺たち二人だけになっていた。窓から校庭を見るともう薄暗くなってきた。冬は夕暮れが早い。

「そろそろ帰るか、何か面白いことないかなー?」

「おう帰ろう、俺は帰ってスーパーカブの掃除をするかな?見にくるか?俺のスーパーカブまだ見てないだろ?ちょうど兄貴もいないからCB125も見せてやるよ、エンジンはかけてもいいけど絶対乗るなって言われてるんだ。見せてやるよ」

「バイクはあんまり興味ないけど、どうせ暇だから行ってみるか、そんなに面白いか?ウチは親がうるさくて免許は高校卒業するまで取るなって言われてるんだけど、俺はダックスホンダくらいしか知らないぞ」

「おう、ダックス知ってるんなら立派なモンだよ。行こうぜ」

そんな成り行きで岩下にバイクの話を聞きながらバス停に向かった。



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