おどる、おどる 「15」
片岡と模擬デートしてから2,3日して教室の移動の時にバッタリ弓子と廊下で出会った。
「よう、弓子。昼休みに時間ある?ちょっと面白い話があるんだけど、、、」
「なに、面白い話って?」
「うん、後で話すよ。部室の奥に2階に上がる階段があるだろ?昼飯食べたらあそこで待ってるから」
「わかった。階段の下ね」
そう言って俺達は別々の教室に向かった。
弁当を食べてからすぐに階段の下に行った。遠くでコーラスの練習らしい声がきこえる。待つほどもなくすぐに弓子が現れた。
「なんの話?面白い事があったの?」
「へへっ、こないだの日曜に模擬デートしたんだ。新聞部の片岡三千子って子。お前デートしたことある?」
「え、なに急に デ、デートしたことはないけど、それがなによー。片岡さんて子とラブラブになったの?」
「違うよ、だから模擬デート!いいかー」
弓子に事のてんまつを最初から話した。もちろん公園に行ったことや昼にカレーハウスに行った事まで詳しく伝えた。
「ふーん、だいたい話は分かったけど、それで何か収穫はあったの?」
「うん、女子が何考えてるかとか、どうしたら喜んでもらえるかとか色々だよ。弓子にも模擬デートをおすすめするよ。どう?」
「うん、べつにいやらしい動機じゃないのはわかったし、確かにいい練習だと思うけど相手を見つけるの難しいな-、祐二くんじゃダメだよねー。デートにならないし」
「うん、俺じゃダメだけど、こないだ言った黒田はどうだ?」
「あぁあの人ね、先週帰りに校門の所で声かけられたよ。でもねー、なんかオドオドしててピンとこなかったなー」
「そうかー、うまくいけば今月バレエの発表会があるんだろ?それに誘ってみるかなと思ってたんだけどなー」
「やめてよ、よく知らない人に見せられるレベルじゃないから恥ずかしいよ」
「そっかーだめかー。んー、じゃ横山は?中学から一緒だから抵抗ないだろ?剣道一筋で真面目だからアイツもデートなんかしたことないんじゃないか?なんだったら俺が聞いてやろうか?」
「横山君か、面白いかもしれないなぁ。ウン私が直接聞いてみる、しばらく話してないから良い機会かも知れないね。でもホントに付き合ってる人いないかなー?」
「うん、おそらく、たぶん、だいたい、きっと、絶対いないからダイジョブと思う」
「まぁいいわ、直接話してみる。前に発表会に来てくれて、お礼も言ってないから。今度の発表会が終わったら聞いてみるよ」
俺は面白くなってきたな、と思った。黒田はちょっとかわいそうだが成り行きを見るのが楽しみだ。
弓子が「そうそう、またイッチーが発表会にきてくれることになってるんだ。ユウジくんも来る?」
「イッチーかぁ、しばらく会ってないなー。元気にしてる?会いたいなぁ。来週の日曜だろ?うん行けたら俺も行くよ。ちょっと用事があるからわからないけど。俺が行くのは良くて黒田はだめなのか?」
本当は用事なんてないけど俺は迷っていた。
「だって黒田君はまともに話したことないし、恐いじゃない」
やっぱり黒田はだめなのか、あいつにはかわいそうだけど今度はっきりバツだと伝えようと考えた。
「わかった、俺も行くんだったら一人でいってみるよ。じゃ、模擬デートのことは横山に相談してみな。結果が楽しみだなー」
「わかった。じゃまた今度ね」
そう言って弓子は教室に、俺は部室をのぞいて見ることにして別れた。黒田にとっては残念だが弓子にその気がないならしかたないかと思う。俺だってまさか片岡とデートするなんて考えたこともなかったんだから、何処で誰とつながっているかなんてわからないもんだと思った。弓子に発表会に誘われたがバレエなんて興味ないけど、イッチーが来ると言うのが気になる。こんな時どちらを選ぶかで自分の人生が少しずつ変わっていくのが不思議だと思った。たしかにイッチーは気になる存在だが、どうも俺の住む世界とは違うところにいるような感じがする。有名な私立女子校に行ったし、夏休みは軽井沢の別荘に長いこと行ってたようだ。イッチーにバレエは似合いそうだが、俺にはフォークダンスも似つかわしくないと思う。
片岡も話しやすくなったが、カノジョという感じはしない。ほかにいいな!と思うのは上村先輩だがいつでも大人の感覚で話すと言う事だけで、尊敬はできるがカノジョと言うのにはほど遠いと思う。いったい俺のカノジョになる人はどこにいるんだろう。しみじみと考えるがいつになったらその日が来るんだろうか。