我望むは至高の幸福なり
ある日、教会で祈りを捧げていた私たち3人の前に突如、神が現れた。
すると、神は祈りを捧げていた私たち3人に向かってこう言った。
「お前たち3人はこれまで熱心に祈りを続けてきた。そこで褒美としてお前たちそれぞれの食欲・睡眠欲・性欲をどれか一つだけ叶えてやろうと思う。一人ずつ好きなものを叶えてやるから今から3分だけよく考えるといい」
なんということだろうか、神が目の前に現れるだけでなく私の願いを叶えてくれるとは。
しかし、叶えてくださるのは食欲・睡眠欲・性欲という人間の三大欲求のうちのどれか一つだけという、これはよく考えて選ばなければ。
三大欲求というだけあってどれも選び難い、深く悩みこむばかりに私はいつのまにか頭を両方の手で抱え込んでふさぎ込んでしまった。他の2人もどうやら選びかねているらしい「う~ん、う~ん」という悩ましい唸り声が耳に入り込んでくる。
「時間だ。それではお前たちの望みを聞こう。まず、お前の願いから聞こう」
あっという間に、3分が経過すると神はこう言って私の右隣りに立つやせ細った男を指さした。
「わ、私は今までお金がなく美味しいものをろくに食べることができませんでした。なのでどうか私の食欲を満たしてもらえないでしょうか」
神は深くうなづくと右手に持っていた杖をふった。
すると、唐突に真っ白な調理服をまとった男や綺麗な色をした肉や芳醇な香りを漂わせる果物など高級そうな食材が次々に現れた。
「彼は世界一の料理人だ。世界のあらゆる高価な食材も用意した。彼に思う存分美味しい料理をつくってもらうといい。では、次にお前は何を望む?」
次に神が指をさしたのは私の左隣に立つ太った男だった。太った男は「はあはあ」と息を荒げ大量の汗を滝のように流している。
「私は生まれつき容姿に恵まれず、今まで女性を抱いたことがことがありません。なので私の性欲を叶えていただけないでしょうか」
神は願いを聞き入れるやいなや、今度は一人の女性を出現させた。人生で一度も見たことのない絶世の美女だった。美女は現れるとすぐさま太った男に抱きついた。
「世界一の美女をあてがおう。そしてその美女は死ぬまでお前のことを愛してくれる。きっとお前の願いは叶えられるだろう」
他の2人の願いは叶えられると神は遂に私を指さした。食欲・睡眠欲・性欲どれも選びがたかったが、もう答えは心の中で決まっている。
「私は幼き頃より紛争地帯に生まれ、いままで夜を安心して眠れたことがありません。なので、神様、どうか私の睡眠欲を満たしていただけませんか?」
戦禍におびえ震えながら眠る日々はもう真っ平だ。安全な地で恐怖を忘れ、極上のマッサージを受け、最高に心地の良い音楽の流れる中、ひたすらに惰眠をむさぼることができたらどれだけ幸せだろうか。
「よかろう、しかと聞き入れた」
三度、神が杖を振るうと今度は一人の女性が現れた。おそらく世界一のマッサージの腕前と世界一の美声の持ち主だろう。神よ、なんと心優しいのだろうか。
「彼女は世界一の殺し屋だ」
神は言った。
初投稿です。ご感想お待ちしてます。読みやすくしたつもりなんですが改行が見づらいなどのご指摘があればおっしゃってください。あとジャンルについても適切なものが分からなかったのでその他にしました。この点についてのご意見もお待ちしてます