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たんぽぽマスターぽぽちゃん

作者: ぷっくん

おとうさん:グラップラー

おかあさん:ガンマン

おばあちゃん:パペッター

おにいちゃん:つりびと

ぽぽちゃん:たんぽぽマスター



 一般的な中流家庭の一軒家。その居間が光に包まれる。

 それが収まると、居間には5人の男女が立っていた。


「あらあらあらあら!」


 髪にパーマをかけた細身の40歳ほどの女性ーーーおかあさんが、エプロンを翻しながら、かん高い声を出して台所に走っていく。


「良子さん、お待ちなさいよ」


 その後を追うのは白髪にパーマをかけた上品な雰囲気の老婦人ーーーおばあちゃん。


 う~ん、と1つ伸びをして腹を掻きながら玄関に向かっていったのはおとうさん。

 万年係長のような見た目のバーコード頭に、小太りの体にまとったランニングシャツとジーンズ。

 おかあさんはだらしないって言うけど、おとうさんはずっとこの格好だった。

 


 



 玄関でガチャリと音がして、あわてておとうさんを追いかける。


「お前も外に出たいか?」


 おとうさんがにっこり笑って ぽぽの頭を撫でた。


 おにいちゃんはいつの間にか、自分の部屋に行ってたっぽい。









 ※









 庭には、いつも通りにたんぽぽが一杯生えていた。

 おとうさんが空中にパンチを繰り出す度に伸びすぎた草が舞い、邪魔な樹木の枝が剪定せんていされていく。


 外ではいつも通りの排気ガスくさい風を出す車が通り、道行く人がギョッとした顔で門柱からうちの家を見ている。



「あらっ!じゃあずっと異世界に?」

「そうなのよぉー!だからご近所さんが変わりなくて安心だわぁ!」

「田舎だからねぇ!でもうらやましいわ!異世界って歳とらないの?ちょっと、シワ減ってない?!」

「あら、分かっちゃった?!」

「若返りの効果もあるの!?うらやましいわぁー!異世界!!!」


 隣の家と面した塀では、おかあさんがお隣さんとおしゃべりしていた。

 60歳くらいのお隣のおばさんが、ぽぽを見てすごく驚いてた。


 お庭の見回りを終えて家に入ると、おばあちゃんの人形パペットが忙しく動き回ってた。

 家中を掃除するつもりらしい。

 床一杯にいる、ちょこまか動く手のひらサイズの人形パペットを踏まないように気を付けて歩きながら居間に戻る。

 動く人形は全部おばあちゃんの手作りだから、壊したらおばあちゃんが泣いちゃうもんね。


 台所では、まだ2人がコンロに置きっぱなしの鍋の蓋や冷蔵庫を忙しく開けたり閉めたりしていた。


「あら、10年もほったらかしにしてたわりには傷んでないわね」


 おかあさんが鍋の中身を味見しながら言う。

 外から物悲しい音楽が流れる。

 夕方の5時。

 前は音楽が鳴り終わったら瞬間に光に包まれて、気づいたら変な部屋のど真ん中にいたんだっけ。


 召喚された日に食べる予定だった晩御飯は、鶏肉の水炊きだった。









 ※







「あなたー、ご飯の支度が出来ましたよ」


 外からおかあさんの声がする。

 同時に ぶぉんぶぉんって音が止んで、おとうさんとおかあさんが玄関のドアを開けて帰ってきた。

  

「おつかれさまです、お風呂沸いてますよ」


 コンロの鍋に白菜を入れてたおかあさんが振り返って出迎える。


「さぁぽぽ、食器を運び終わったらご飯にするわよ」


 食器を持った人形パペット達がちょこまかとテーブルに登っていく。

 テーブルにはいつの間にかおにいちゃんが座っていた。

 お風呂上がりの匂いがする。

 いつの間に入ったんだろう?





「庭の草は伸びっぱなしだったが、塀や外壁は傷んでいなかったぞ」

「お料理や食材も、痛んでなかったわ。まるであの日のまま時が止まっていたみたいに」

「家具も傷まずそのまま、しかも埃も積もっていなかったよ。

 不思議だねぇ。10年も放ってあったはずなのに」


 大人達がむずかしい話をしている。

 おにいちゃんは何も言わずに水炊きをよそい、卵かけご飯を口一杯にかきこんでいた。

 ぽぽも、小皿によそってお箸で丁寧に骨を取ったあと、ポン酢をかけて食べた。


 みんなで囲んだ水炊きには、鶏肉の他に魚が一杯入っていた。


 


 





 ※











 晩御飯が終わって、おかあさんとおかあさんとパペットが台所を片付けている。


 おかあさん達が片付けてる間におばあちゃんとおかあさんとぽぽはお風呂に入ったりお茶を飲んだりテレビを見たりした。

 ニュースでは、どこかの県で集団失踪事件が起こったって話をしていた。

 おばあちゃんと人形パペット達が、自分の部屋に戻っていった。


 台所がきれいになったのを確認したおかあさんが指をパチリとならすと、台所にいた2人のおかあさん達がフッと消えた。


 おかあさんが、ソファでイビキをかいてるおとうさんを起こす。

 おにいちゃんはいつの間にか居なくなってた。部屋に行ったっぽい。


 ぽぽも、寝床に行こうと玄関の鍵を開けようとして・・・おかあさんの手が、肩をポンっと叩いた。


「ぽぽ。あなたもこっちよ?」

「でも、ぽぽのお部屋はお外にあるよ?」

「いいえ、あなたの部屋はもう、お庭じゃないの。だって貴方は・・・」





 もう 犬じゃないんだから。






 ぽぽ:元・柴犬、雌。

    7歳の時に飼い主の家族と一緒に異世界に召喚され、その世界で色々あって人間の姿となる。

    現在は17歳の女性の姿。

    庭のたんぽぽをこっそり掘り起こしては食べていた事がきっかけとなり、異世界でたんぽぽマスターとなる。

    

 紆余曲折を経て人間となったぽぽ。

 人間となった彼女には、犬だった頃には考えられないくらいになし得なければならないことがあるのだ!

 がんばれぽぽ。負けるなぽぽ。

 目下の目標は人間としての義務教育の卒業だ!!!

 

っていう夢を見たんだ。

寝る前に似たような小説でも見たのかなぁ

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