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星占いと雪の庭

星占いと雪の庭

 雪が降った。遠くの山は雪化粧して、モリオの暮らす街では珍しく庭が白くなるほどに積もった。

 夜の間に積もった雪はまだ柔らかい。犬ではないが庭に出てしゃくしゃくと音を立てて歩き回った。何年かぶりのめずらしい感触に、にんまりと笑み下がる。きっと北の方の人にはこの感触は当たり前のことで、もしかしたらうんざりする人もいるのかもしれない。そう思っても、はしゃぐ心はとまらない。子供じゃないんだから、と一人、恥ずかしく苦笑した。

 指が冷たく痛くなってきて家に入った。ポータブルラジオをつけて温かいココアをいれる。窓の外に雪を見ながら暖かくしていると、ほんわりと心まで暖かくなれる。これで薪ストーブがあれば完璧だなあ、などと思うが、それが必要なほど寒くなることもない。一人暮らしのぜいたく電化製品であるこたつがモリオの部屋で一番暖かい暖房器具だ。

 こたつに入って、肘までこたつ布団の中に突っ込んで、頭をこたつに乗せて、平日の休日を味わっていると、ラジオから今日の星占いが流れてきた。モリオは山羊座。牡羊座からどんどん進んでいく占いを聞きながら、なぜか胸がどきどきしてきた。いつもなら半分聞き流すのに、今日は知りたくて知りたくてそわそわする。山羊座の一つ手前、射手座が終わった。さあ、山羊座はどうかな?

 その時、ぷつりとラジオの音が止まった。びっくりして顔を上げ、ラジオを取り上げて振ってみる。壊れたのかな、と一瞬思ったが、電池切れだろうということにすぐに気づいた。あわてて買い置きしている電池と交換した。ラジオの声が戻ってきたが、星占いは終わっていた。がっかりしたけれど、それでもいいか、と思った。今日はきっと良い占い結果だっただろう。だってこんなに素敵な雪景色だ。もうすでに良い日じゃないか。

 冷めてきたココアを飲み干して、もう一度、庭に出ようとこたつから這い出した。昼頃にはこの雪もとけるだろう。未来ではない、今を精一杯楽しもう。モリオはコートを着て雪の庭に飛び出した。

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