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ウサギのパン屋

ウサギのパン屋

北の町のパン屋のおじさんはとっても早おき。

まだ暗くて寒いうちからかまどに火をいれてパンを焼きます。

粉をサラサラ。

バターをとろとろ。

おさとうをひとさじ。

みんな混ぜたら、かまどに入れます。

赤い火がモンモン燃えて、パンのいいにおいがただよいます。


パン屋さんがかまどの前でパンが焼けるのを待っていると、お店のドアをトントンとたたく音がします。

ドアを開けてみると、そこには小さなウサギがいました。

雪みたいにまっしろな毛と、宝石みたいに真っ赤な目の、みどりのチョッキを着た子ウサギでした。


「パン屋さん、パンをひときれくださいな」


子ウサギはていねいに頭をさげて言いました。


「パンを買うにはお金がいるよ。お前はお金を持っているのかい」


おじさんがたずねると子ウサギはチョッキのポケットからコインを一枚とりだしました。


「持っているよ」


おじさんがうけとって見てみると、それはおもちゃのコインでした。

金色でピカピカひかっていましたが、おもちゃのコインではパンを売ることはできません。けれど子ウサギはコインが本物だと思っています。

おじさんはうでをくんでかんがえました。子ウサギはおとなしくまっています。


「このお金じゃ、たりないんだよ」


おじさんがやさしく言うと、子ウサギは真っ赤な目からほろりとなみだをこぼしました。

おじさんはあわてて言います。


「そうだ、お手伝いをしてくれたら、はたらいたぶんだけパンをあげよう」


子ウサギはぱっとかおをあげました。


「ぼく、いっしょうけんめいはたらくよ」


おじさんは子ウサギに小さなカゴをわたしました。


「うらにわに、にわとりごやがあるんだ。タマゴをみっつ、とってきておくれ」


子ウサギはぴょんととびあがると、いそいでうらにわにいきました。


「にわとりさん、にわとりさん、タマゴをみっつくださいな」


寒さに丸くなっていたにわとりおばさんは、子ウサギを見てふしぎそうな顔で聞きました。


「ウサギがタマゴをたべるのかい?」


子ウサギは耳をゆらして、ううん、と首をふりました。


「パン屋のおじさんのおてつだいなんだ」


「そうかい、それはえらいねえ」


にわとりおばさんは子ウサギにタマゴをみっつくれました。

子ウサギがタマゴをもっていくと、おじさんがニコニコわらってうけとりました。子ウサギはうれしくなって言いました。


「もっとおてつだいするよ!」


おじさんはタマゴをうけとったらパンをあげようとおもっていました。

だから、次のおてつだいはかんがえていません。あわててウンウンうなってかんがえます。


「そうだ、おばあさんにパンをとどけてくれないか」


おじさんは、森のちかくに住んでいるおばあさんに毎日パンを届けているのでした。

子ウサギはおおよろこび。小さなかごにパンを入れて森にむかって歩いていきました。

北のまちには春だというのにまだまだ雪がのこっています。子ウサギは耳をよせて、ふるえながら歩きます。

森までのほそい道の両わきに雪がかたまってこおっています。その氷をさらにかたくするような冷たい風がふいてきます。子ウサギの足は冷たくなって痛みだしました。

子ウサギは泣きそうになりました。けれどカゴの中のパンを見て、パンをまっているおばあさんのことを思いました。そうすると、体がだんだんあたたかくなっていくようでした。

森が見えました。そのそばに赤いやねの小さなおうちが見えました。子ウサギは大よろこびでピョンピョンはねていきました。


トントンとドアをノックするとおばあさんがドアをあけました。へやの中からあたたかい空気がながれだして子ウサギのほほをなでました。


「おやおや、子ウサギさん。なんのごようかしら」


「パンをとどけにきました」


子ウサギがカゴをさしだすと、おばあさんはびっくり。


「まあ、パン屋さんからはとおいのに、ひとりできてくれたのね。さむかったでしょう。中へはいってちょうだいな」


おばあさんは子ウサギをだんろのそばにすわらせて、あたたかいミルクをくれました。子ウサギはふうふうしてミルクをゆっくりのみました。

子ウサギがすっかりあたたまってかえろうとすると、おばあさんがカゴにユキワリソウをいれてくれました。

子ウサギはユキワリソウが大こうぶつ。ていねいにおれいをいって、おばあさんとさよならしました。

パン屋さんにかえる道はなぜかさむくなくて、子ウサギはぴょんぴょんはねていきました。


「おかえり、パンがやけたよ」


パン屋のおじさんは子ウサギのカゴにやきたてホカホカのパンをたくさんいれてくれました。

子ウサギは大よろこびでぴょんとはねました。


「お前さんがてつだってくれて、ほんとうにたすかったよ」


パン屋のおじさんはニコニコと子ウサギの頭をなでました。子ウサギはくすぐったくてうふふとわらいました。


子ウサギがおうちにかえると、ウサギのおかあさんがドアのまえに立っていました。子ウサギの帰りがおそいのをしんぱいして、おうちからでてきていたのでした。


「おかあさん、パンをたくさんもらったよ」


ウサギのおかあさんはふしぎそうに、首をかしげました。


「お前、おかねをもっていたんじゃないのかい?」


子ウサギはパン屋のおじさんからかえしてもらったおもちゃのおかねを、おかあさんに見せました。そうしておてつだいしたことも話しました。


「ちゃんとおてつだいができて、えらかったね」


「うん、おかあさんのおてつだいもするからね」


子ウサギがいうと、ウサギのかあさんはうれしくてうれしくて、子ウサギをぎゅっとだきしめました。

それからおうちに入って、やきたてのパンとユキワリソウのあさごはんを食べました。いままで食べたどんなあさごはんよりも、おいしいおいしいあさごはんでした。

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