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布袋様が見てる

布袋様が見てる

 ある晩、こんな夢を見た。

 とんでもなく汚いおじいさんが、私に何かを差し出している。

それは真っ黒な垢まみれのズタズタになった袋だ。おじいさんはこれも垢まみれの灰色に変色してしまった着物を引きずって笑いながら私に汚い袋を押し付けようとしていた。

 私はどうしてもそれを受けとりたくなかった。私の背後にある長い長い金色に輝く階段を登りたかった。その階段を登るには、重い汚い袋を持っては行けないのだ。

 私はおじいさんの手を振り切って階段を駆け登り始めた。


 そこで目が覚めた。

 棚の上から、布袋さんの木像が私を見下ろしていた。灰色の着物で大きな袋を担いでいる。

 ああ、あの袋にはお金がぎっしり詰まっていたんだな、と布袋さんの足元に奉った宝くじを見ながら思った。この宝くじは当たらない。絶対に。だって私は袋を受け取らなかったから。

 けれど私は金色の階段を登り始めた。はるか先、終わりの見えない厳しい階段だけれど、金色のきらめきはメッキなどではなく、本物なのだから。

 小説で賞をもらったのは、それからしばらくしてからだった。私は着実に階段を登っているのだと実感した。けれど、この階段に終わりはない。いつまでもいつまでも登り続けるしかない。立ち止まっても引き返せない。登り続けると約束したから。辛い日も、投げ出したい日も、登り続ける。

 布袋様が見てるのだから。

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