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ガンバルンバ

ガンバルンバ

 ルンバがやって来てからというもの、志帆の生活はがらりと変わった。掃除が嫌いでごみ溜めの中で暮らしているような状態だったが、かわいいルンバが動くところが見たくて床にものを置かなくなった。そうしてさえおけばかわいいルンバがかってに掃除をしてくれた。


 志帆がルンバのことをかわいいかわいいと言っても山彦はちっとも分かってくれない。お前はロボットオタクだからなどと言って澄ましている。どれだけルンバがかわいいか実地で感じてもらおうと自宅に招こうとしたのだが、お前の部屋には二度と行かないとすげなく断られた。ごみ溜め状態の部屋を見せたのが悪かったらしい。


 それでもなんとかルンバの良さを知らしめたいと活躍の様子を動画におさめた。山彦は志帆の部屋がきれいになっていることに驚くばかりで、ルンバのことを見てくれない。

 こりゃだめだと山彦に見切りをつけた志帆はルンバ同好会を探しだして入会した。


 会員は犬や猫やウサギやフェレットや、とにかく毛が生えている動物を飼っている人ばかりで、日々ルンバが集めた毛玉の量を自慢しあうのだが、志帆のルンバはわずかなチリを集めるばかりで自慢できるほどの毛玉ができるはずもない。

 くやしい。うちのルンバだってやればできる子なんだから。

 志帆は毎日窓を閉めきってハタキをかけた。高性能なスイーパーではない。昔ながらの埃を舞い上げるハタキだ。朝晩ハタキをかけていると、ルンバが集めるごみの量が増えた。志帆はにんまりして朝晩のハタキを欠かさなくなった。


「すごい! ピカピカじゃないか!」

 ルンバの素晴らしさを見せつけようと山彦を部屋に呼びつけた。ルンバが集めた毛玉を手のひらに乗せた志帆には目もくれず、山彦は部屋の中をずかずかと歩き回る。

「すごい! 志帆だってやればできるじゃないか!  すごい!」

 すごいを繰り返し続ける山彦は志帆が毛玉を差し出しても一向に見ようとしない。しびれをきらした志帆は山彦の脛を蹴飛ばした。

「いたあ! なにするんだよ」

「見て、これ」

 山彦の鼻先に毛玉を突き出すと、

「ぶえっくしょーい!」

 山彦が盛大にくしゃみをし、毛玉は散り散りに飛び散った。

「やめてよ。俺、ハウスダストアレルギーがあるんだから」

 志帆は山彦の襟をつかんで揺さぶった。

「人が丹精こめて育て上げた毛玉に何するのよ!」

「育てたの!?」

「毎日毎日、埃を吸わせて、かわいいかわいいルンバが頑張ってためた毛玉を、あんたって奴は!」

「そんなの知らないよー」

 がくがく揺さぶられながら山彦はあわれな声で許しを乞うたが志帆の怒りはおさまらず、志帆の部屋に日参して一日の埃を部屋の中ではたく約束をしてしまった。

 志帆がハタキで山彦を叩きのめすので、山彦は部屋に入ると同時に服を脱ぐようになり、かわりの衣類を持参するようになり、めんどくさくなって服をまとめて志帆の部屋に置くようになり、そうなると帰るのもめんどくさくなって志帆の部屋に居つくようになり、二人いると埃のたまる速度も早まり志帆はホクホクで本格的に同棲するようになった。


「と、いうのが俺たちの馴れ初めなんですけど」

 結婚式の司会者に話して聞かせると、

「他のお話もうかがえますか?」

 二人の馴れ初めは司会者の笑顔でバッサリと切って捨てられた。ここにルンバがいれば、俺たちの馴れ初めもきれいさっぱり吸いとってくれたのになあ、と思う山彦はとっくの昔にルンバにメロメロになっているのだが当人は気づいておらず、志帆は当初の目的を果たしてニヤニヤと、山彦がルンバを愛でるのを眺める日々を送っている。

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