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笠地蔵

笠地蔵

「あるところに働き者のじじとばばがおった。二人は毎日真面目に働いたが暮らしはいっこうに楽にならず、いろいろあって、六体の地蔵に笠を差し上げたところ地蔵の慈悲で裕福になったということだ。めでたし」


 庄屋の家で昔語りを聞いていた与作はハッと顔を上げた。


「庄屋さま、笠を貸してくれろ」


「まさか、地蔵様にかぶせるつもりか?」


「そうとも」


「お前、人から借りた笠を地蔵様の頭の上に置きっぱなしにしたらだめだろう」


「そんなケチくさいこと言わないでさ、貸してくれ」


「第一、お前。じじとばばは働き者だったから地蔵様も憐れに思われたんじゃないか。お前は寝てばかりだろう、地蔵様だってあきれてなさるよ」


「そんなことはない。おれは地蔵に貸しがある」


「どんな貸しだい?」


「お供えの団子を食べてやった」


「それのどこが貸しになるんだい」


「地蔵が好き嫌いして残してたから食べてやった」


「ばかだね、お前は。地蔵様は好き嫌いしてるんじゃないんだよ」


「じゃあ、なんで食べないんだよ」


「地蔵様は動けないだろう。口に団子は入れられない」


「それならやっぱり食べてやるのが親切だな」


「ばちあたりなこと言うんじゃないよ。地蔵様はね、団子を食べなくても、お供えした人の真心を受けとるんだよ。それをお前が横から取ったら、お供えした人はどうなる?」


「真心が手元にもどる」


「お前ね、真心は出したり引っ込めたり出来るもんじゃないんだよ」


「じゃあ、どうやって地蔵にやるのさ」


「地蔵様は真心を感じてくみ取ってくださるんだよ」


「くみ取り式か。便所みたいだな」


「お前、古いことを知ってるね」


「それじゃあ俺は地蔵に真心をもらってくる」


「真心をもらうって、どうやるんだい」


「酒瓶を持っていく」


「すごいじゃないか。酒をそなえるのか」


「酒はやらねえ」


「じゃあ、なんで酒瓶を持っていくんだい」


「くみ取った真心をもらってくる」


「お前ねえ…、もらえるもんじゃないよ。そんなに真心が欲しいのかい」


「欲しい」


「お前、真心ってのはね、こっちが真心込めてあたれば、相手からもかえしてもらえるもんなんだよ」


「なら、俺は庄屋さまから真心をもらおう」


「お前はわしに真心をくれたかね?」


「俺が庄屋さまの孫で俺の子が孫子」


「!! まさか、お前、庄吉の」


「庄吉は俺のおとっつぁんさ」


「なんてこった。勘当した息子のせがれに会おうなんざ、思いもよらなかったよ」


「感動してるなら、もっと泣きなよ」


「その感動じゃないよ。いや、私は感動しているのかね」


「それなら、お金ををおくれよ」


「いきなり生臭い話になったね、やっぱり庄吉の息子だ。私のお金をなんでやらなければならないんだい」


「真心だよ」


「お金が真心になるもんかい」


「真心をくれたら孫子らが増やしてやるよ」


「山田くん、座布団全部もってって!」



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