めざしのうた 9
めざしのうた 9
ある朝おきると、あさごはんがありませんでした。
かわりにテーブルのうえには一万円さつがおいてありました。
ドキンとしました。おかあさんに何かあったのかもしれないとおもいました。
だけど一万円さつを見ていると、おかあさんは朝ごはんをつくるのをわすれただけなのかもしれないとおもいました。
だから、このおかねでごはんをかいなさいっていうことかもしれない。
でもほんとうのことがわからなかったから、一万円さつはどろぼうに見つからないようにタンスの中にかくして学校にいきました。
いえにかえっても、きょうはごはんがありません。
おなかがすいて、すいて、おなかがいたくなってきました。
たんすから一万円さつをだして見ていました。
一万円あったら、コンビニにいっておいしいものがたくさんかえます。
でも、おかあさんがおさいふにいれるのを、わすれただけかもしれないから、またタンスにかくしました。
そとがくらくなっても、おかあさんはかえってきません。
十一時になってもおかあさんはかえってきません。
どうしたんだろうとおもったけど、おかあさんんはときどきしごとで夜なかにかえってくることもあるから、今日もそうなんだろうとおもいました。
おかあさんがお酒をのむときにかじっているめざしをいっぴき、だまってたべました。
しょっぱくて、にがくて、たべるまえよりずっとおなかがすきました。
あさになっても、おかあさんはかえってきませんでした。