パケット不足し隊 発足式典記録
パケット不足し隊 発足式典記録
(開会)
「えー、本日はご多用中のなかご来駕たまわり、まことにありがとうございます。
わたくし、司会をつとめさせていただきます、羽毛田泰三と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
えー、パケット不足し隊、会長の田尻より、皆様にご挨拶申し上げたいと存じます。
会長、お願いいたします」
(拍手)
「パケット不足し隊、会長をつとめます田尻基男でございます。
パケット不足し隊を発足できるのも、ひとえに皆様のご助力の賜物でございます。
本日はささやかながら発足記念パーティーを開かせていただきました。
このような小宴ではございますが、おくつろぎいただきご歓談くだされば幸いでございます。
当パケット不足し隊は近年のパケット不足をかんがみ、一般に流布しております節パケット法を研究・伝播する目的で発足いたしました。
当会が推進する主なパケット節約法は三つございます。
ひとつはブラウザを低パケットのものに切り替えること。
これはグーグルクロムなど、データ圧縮を行ってくれるブラウザを利用するという基本的な方法です。
くわしい理論については後ほどデータを交えてごらんいただきたいと思います。
次に、自動更新機能をオフにするという手段でございます。
自動更新機能を利用しておりますと、必要ない利用しないアプリについてもアップロードされてしまう危険がございます。
この点についても同じく後述いたします。
最後にWi-Fiの利用であります。
公衆Wi-Fiの利用によってパケット代を浮かせることができるのであります。
以上、三点を中心にこれから節約法をいかに研究したかを皆様にご報告いたしたく……」
(会場から挙手と質問の声)
「早速の質問、ありがとうございます。どういったご質問でしょうか」
(男性、推定七十代)
「ひとつ、うかがいたいのですが」
「はい、どうぞ」
「この会の名前は『パケット不足し隊』ですが、節約するのであれば『パケット不足したくない会』の方がしっくりくるのではないですかな」
(会場から拍手)
「う……、ああ、その点につきましては当会でも賛否の両論はございましたが……」
「やはり、ごろの悪さなどの問題ですかな?」
(会長、無言で降段)
「え、ええ。えっと、その件につきましてはわたくし、司会の羽毛田から申し上げます。
当会の会長、田尻は若いころからのおニャン子クラブファンでありました。
そのため、ええ、会の命名にもその影響を受けておりまして……」
「おニャン子と言いますと『うしろ髪ひかれ隊』ですかな」
「ええ、まさしく!」
「では、渡り廊下走り隊などにもご見識をお持ちで?」
「ええ、はい、そのように聞いております」
「なるほど。分かりました。いや、結構結構。それをうかがって納得いたしました。
ですがそれならば、貴会の会名は『パケット節約し隊』でもよかったのではありませんかな」
(水を打ったような会場)
「そ、それはですね……、その、『パケット節約し隊』はすでに存在しておりまして……」
「なるほど。アイドルもパケット通信料も戦国時代なわけですな。よく分かります」
(会長、勢いよく老紳士に駆け寄りハグ。手を取って激しく握手)
「一緒にこの戦国時代を戦い抜いてください! 貴方は今日から我が会の栄誉会長で……」
「いや、申し訳ない。よく分かる、よく分かるのですが」
「なにかも問題でも? ああ、会費のことならご心配は……」
「いえ、そうではないのです。実は私はおニャン子派ではなく、息っ子クラブ派でして」
(再び水を打ったような会場)
「えー、宴もたけなわですが、そろそろ閉会のお時間となりました。皆さま本日はお越しいただきまして誠にありがとうございました。
どうぞお気をつけてお帰りくださいませ」
(閉会)