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ねぼすけカラス

ねぼすけカラス

 カラスのカースケが目を覚ますと、仲間のカラスはみんな出かけたあとでした。

「しまった、寝すごした!」

 カースケはあわてて飛び立ちましたが、仲間がどちらへ行ったのかわかりません。

 カラスは毎朝みんなでエサをさがしに山から町へ飛んでいきます。おとといは南の町へ、昨日は西の町へ行きました。今朝はどちらへ行ったやら。

 カースケはねぐらの山の上をくるくると飛び回りましたが、仲間のすがたは見えません。

 もうおなかがへってペコペコです。すぐにごはんを食べないと空から落っこちてしまいそうです。

 ぐうんと舞い降りて実をつけた木を探しました。なかなか見つからなくて、おなかはますますへりました。

 やっと見つけた茶色の木の実をあわてて食べると、とてもかたくて苦くて涙が出てきました。

 町に行っていたら今ごろやわらかくて甘いパンを食べていたでしょう。

 カースケは置いて行かれたことをうらみました。

「おこしてくれずに、ぼくを置いていくなんて、みんないじわるだ」

 カースケはプンペン怒りながら、ねぐらへ帰ろうと飛び立ちました。

 しばらくして、森の中にキラリと光るものを見つけました。

「なんだろう」

 カースケは光をめざして飛んでいきました。地面に降りて近づいてみると、それはきれいな真珠のネックレスでした。

「うわあ、すごくきれいだ。これはぼくだけの宝物だ。だれにも見せてやるもんか」

 真珠のネックレスをくちばしで拾うとカースケはねぐらに戻ってネックレスを自分の巣にかくしました。


 夕方、みんなが帰ってきました。カースケは寝たふりをして、おかえりもいいませんでした。

「カースケ、だいじょうぶ?」

 なかよしのカーコがカースケの巣にやって来ました。カースケは寝たふりをつづけました。

「やっぱりぐあいが悪いのね。おみまいにパンを持ってきたのよ。食べられる?」

 カースケがうす目を開けると、カーコはとても心配そうにしていました。

 目の前に置かれたパンを見て、カースケのおなかがなりました。

 カーコはパンをカースケのくちばしのちかくに持っていきました。カースケはパクリと一口でパンを食べてしまいました。

「ああ、よかった。朝は起きることもできないくらいぐあいがわるかったのでしょう? 一日寝ていてよくなったのね」

 カーコは起きてこないカースケが病気なのだと思って心配したのでした。

 カースケがなんと言って返事をしたらいいかかんがえていると、なかまがどんどんおみまいにやってきました。みんなは色々なおいしいものや、体にいいものを持ってきてくれました。

「こんなにもらったら、悪いよ」

 カースケが言うとみんなは口々に言いました。

「こまったときはおたがいさまだよ」

「遠慮なんかしなくていいよ」

「なかまだもの。当然のことよ」

 カースケは自分がはずかしくなりました。みんなをうらんだことを、もうしわけなく思いました。なんとかお礼を言いいたかったのですが、うまい言葉がうかんできませんでした。

「そうだ!」

 カースケは、かくしていた真珠のネックレスをとりだしました。

「今日、見つけたんだ。みんなにひとつぶずつ真珠をあげるよ」

 みんなはおおよろこびしました。カースケがひとつぶずつみんなにわけると、真珠をもらったものから順に自分の巣に帰って行きました。

 最後にのこったカーコにやってしまうと、真珠はなくなってしまいました。

「カースケ、わたしはいらないわ。あなたの分がなくなっちゃう」

 カースケは真珠をカーコの方におしやりました。

「もらってほしいんだ。ぼくはみんなからもらったもので、十分だから」

「みんなからもらったパンは、もうなくなってしまったじゃない」

「ぼくはね、みんなからやさしさをたくさんもらった。とってもたくさんもらったんだ」

 カースケは胸をはりました。

「それはとってもきれいだから、ぼくにはもう十分なんだよ」

 カーコはうなすくと、真珠をくわえて巣に戻って行きました。カースケはカーコを見おくると、早く寝ることにしました。

 明日は寝坊しませんように。

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