0011 同行者は仲良し
「何を言っても無駄だということだの。」
「その通り。君たちは結構重い疑いがかけられていることを忘れないで欲しい。で、君たちの持っている情報はそれで全部かい?」
「私たちの持っている情報はこれで全部だ。私たちはちゃんと話したぞ。次はお主らの番だ」
エヴァンは指を四本立てて、一つ一つ指を折りながら語った。
「オッケー。僕たちが今君たちに言える情報は4つある。一つ目と二つ目は君たちが言っていた、領主ダグニクス・バックハウスと今日来る貴族がそれに関与していることは正しいということ。三つ目は、今日やってくる貴族がイグニノール・ライトウッドという先の戦争で活躍した王国騎士団の末裔の一人っていうこと。四つ目は、さっき言った魔族が魔族を攫っているということくらいかな。」
今俺たちに言えること、ね。
貴族の名前なんてこれからわかるようなもんだしな。役に立つ、というより衝撃的なのは最後の魔像が魔族をさらっているという情報だけか。
「他にも情報は持っているというわけか。中々狡いやつだな。」
「褒め言葉として取っておくよ。」
「むぅ、ライトウッド家か…。確かあそこの家系は分家がたくさんあったはずじゃが、そのイグニノールという奴は家系的にどの位の地位なのだ?まさか本家の人間じゃあるまいな」
魔王様は腕を組んで、ライトウッド家の家系図を思い出していた。
貴族というのは先の大戦で活躍した一族の末裔らしい。先祖は英雄だというのにその祖先ときたら…。
「イグニノールは分家の分家さ。権力は大したもんじゃないが、お金はだけあるみたいだね。」
手のひらひらっとさせ頬杖をついているエヴァン。
お前の勇者という肩書きに比べたらほかの貴族の権力なんて大したもんじゃないだろうな。
「それにしても、魔族が魔族をさらうというのは真なのか?」
「僕の情報筋によればそれは本当さ。魔族が魔族を攫うというより、人間と手を組んでさらっているみたいだよ。魔族が率先してさらうというより魔族が人間の指示に従って攫うというわけさ。」
俺たちの世界でも奴隷制度がまかり通っていた時代は同じ人種が同じ人種を別の人種に売っていたし、今の時代でも金を返せなくなった親が子供を突き放すなんてことは稀にある。
この世界でも同じことが行われているというわけか。
「そこまで知っておるのに、何故行動に移さんのじゃ。お主の情報はどこからでてくる。」
魔王様の口調は静かであるが怒気を孕んでおり、ふつふつと怒りが沸いているのもそのはず。
わが国、日本の諜報部でも裏の世界の事情を知るためあえて悪人を泳がせるようなことをしている。エヴァンもその手の類を使っているのだろう。
被害者の心情からしたらそんなの許せないし情報元を締め上げてさっさと居場所を吐かせろ、と言いたいだろうが、そうはいかないのが裏の事情。それにエヴァンは勇者といえど依頼を受けているだけの傭兵、率先して動く魔王様と意気込みが違うってわけだ。
「情報源は言えないんだ。幼女ちゃんの気持ちを汲みたいのは山々なんだけどね。でも僕はここ最近ずっとイグニノールを着けていたんだよ。」
だから幼女じゃないー!ってツッコミを入れる魔王さま。
「奴もしぶとくてね。なかなかしっぽを出さないんだ。それも今日までみたいだね。多分今夜の領主の館で開かれる社交パーティで何かが動くはず…。あっ…。」
「「社交パーティ?」」
エヴァンハうっかり口を滑らせたらしい。
が、体裁を取り繕うように続けた。
「まあ招待状がないとは入れないし、君たちに知られてまずいような情報じゃないからね」
「うわ必死だなあ」
「アホですな。」
「馬鹿。」
仲間たちに罵られながらもエヴァンは言葉を紡ぐ。
「僕は普段こんなミスはやらかさない。まだ疑いが晴れたわけじゃないがその幼女ちゃんの熱意を汲み取って、ヒントを与えたってわけさ。」
「苦しいぞエヴァン」
「苦しいですな」
「間抜け」
「辛辣かッ?!!」
今まで黙っていたメルやシャルも口を揃えてエヴァンを中傷した。
「ゴホン、えーっとそれでは。ほかに何か質問のある人。」
その、質問コーナーみたいな言い方はどういうことなのか俺にはわからない。魔王様は胸の前で小さく手を挙げ発言した。
「はい、私たちはこれからツカサの服を買いに行きます。そろそろ向かってもよろしいのであろうか」
うーん、かわいい!100点!
「うーん、ダメ!」
かわいくない。3点
「ツカサはこっちよりこっちのほうが似合うぞ!」「魔王様が選んだ服ならなんだって僕に似合いますよ。僕がにあってみせます」みたいな会話を楽しみたい。早く行かせてくれ。
「何回も言うけど君たちはまだ容疑者だよ。だから、僕らの仲間一人を同行させることにした!今決めた!」
本当に今思いついたような言い方だった。俺たち二人のデートに一人お邪魔虫がついて来るってことか。
だがこの際仕方ない。この条件を飲まなかったら俺たちはいつまでのこいつら全員と一緒にいる羽目になりそうだから。
「うぬ、仕方ないの。まだ疑いが掛けられているのなら素直に聞いておこう。で、誰が私たちについてくるのだ」
魔王様はメルの方をチラチラと見ている。
やばい、あの目はかなり期待している。メルが来るのを。
「そうだな。仲良さそうだし、シャル。君がついて行って彼らを見張っていてくれ」
「わかった」
青い髪を揺らして頷くシャルは先程から全く表情が変わっていない。
「はぁ!?な、なんで私がこの陰険性悪女と一緒に行動しなきゃならんのだ!」
酷い暴言を聞いた。
「うるさいロリペタ幼女」
「な、なんだとぉ!!お主だって大して大きくないくせに!」
「私は鍛えているから当然。」
やれやれ、また始まった。このシャルって女もなんだか大人げないように感じるな。
エヴァンも呆れたように次の人選を指名した。
「んじゃ、モルでいいか?」
モルミーレはいやらしい目で魔王様を見つめワシワシと卑猥な手つきをしている。
「幼女ちゃん。私はシャルと違って胸あるよ!」
胸をグイっと腕で押し上げて魔王さまを誘惑するその神職の姿は、神様が見たらきっと破門どころか島流しにされるだろう。
魔王様はブンブンと顔を横に振り否定した。
「んじゃ、メルが行くか?」
魔王様はメルの方を見ると、めちゃくちゃ納得し目を輝かせていた様子だった。
が、俺がそれを許さなかった。
「俺は反対です。メルさんの大きなその体はとても目立つ。これから俺たちは人通りの多いとこへ行くんですよ。だからメルさんには申し訳ないがその大きな体にその大きな杖は通行の妨げになってしまい、ここの住人に迷惑をかけてしまことは避けられないと思います。メルさんには申し訳ないけど。だから俺はシャルでいいと思う。メルさんには申し訳ないけど」
自分でもわけわからない理屈をペラペラといつになく饒舌に述べた。
魔王様が俺以外の男に興味を持つなんて許さーーーーーーん。が本音だ。
魔王様のその目は『大きい体だ。きっと肩車してもらったら楽しいのだろうな』なんて考えている眼だ。そんなの俺が許さない。
「な、なんでじゃツカサ!メルさんめっちゃいい人そうじゃないか!!」
「それだけの理由で我々に同行させるなど言語道断です。」
俺は魔王様にだけ聞こえるように口添えした。
「魔王様、シャルの武器は小型ナイフ、一方メルさんは魔法使いだと言っていましたよね。だから何かあった際に俺たち二人でも戦えるシャルがいいと言っているのです。」
もっともらしいことを言っているが俺の嫉妬心からのでたらめだ。
魔王さまお許し下さい。魔王さまが、その大男に肩車をしている姿を見てしまったら、何もすることがない俺は嫉妬心でぶっ壊れてしまいます。
「う、うぬ。確かに、ツカサの言うことは一理あるが…」
ちらりとメルの方を向いて、「うーん」と唸って悩んでいる魔王様。
落ちろ!我が手に落ちろ魔王!
「そうじゃの。仕方ない。その娘で勘弁してやるか」
落ちたな。
「で、君たちはいつまでこの街にいるつもり?夜の社交ーパーティにくるなって言っても来ちゃうんでしょ。それとも、その時間はほかの事で忙しかったり?」
「特に用事もないし、今日の社交パーティで今回の問題が動くのじゃったらそのパーティとやらに行ってみるのも悪くないの。ただ招待状がないのが問題じゃが。」
「僕は持っているけどそこまで工面してあげることはできないかな。悪いけどこの招待状は4人までなんだ」
チラっと胸のポケットからその招待状っぽい紙を取り出し見せてつけてきた。
お前は一体何皮何男だ。のび太の気持ちも考えてみてやってくれ、俺は可哀想でしかたがない。それにひとり余ってるじゃないかクソッ!
魔王様はそれをスっと奪い取ってみせようとするも、エヴァンがそれを高く上に上げたため失敗に終わった。
おっとっとと思い出したように、テーブルに置いてあった勇者の紋章も元あった懐に戻した。そんな大事なもんいつまでもテーブルに出しておくな。
「シャルはそういうの苦手だし、その幼女と一緒にいるほうが気楽でいいんじゃないか?」
「子守大変。」
「お主とはもう喋らん!!」
とりあえず外に出ないか?




