第四十七話 「貫」
「王妃様ッ!! どうなさいますか⁉」
城内の一室、簡素ではあるがバランスの取れた調度品に彩られた部屋のソファに、シンデレラは深く腰掛けていた。
彼女の前に置かれたサイドテーブルには水晶玉が置かれている。これは遠方の指定した座標の光景を見ることができる特別な水晶であり、王妃の私物である。
王妃はこの水晶を使って桃太郎たちの戦いを眺めていた。
つまりは、自分の部下である怪物たちの敗北も彼女はきちんと認識していた。
「敵はもうすぐそこまでやってきています!! 逃げるのならお急ぎください!! わたくしめが時間を稼ぎますゆえ!!」
必死に王妃の前で叫ぶのは、一本足の錫の兵隊だった。
彼こそが、これまでの錫の兵隊を送り出してきた錫の兵隊の本体であった。
「あなたは、彼らを倒せると思うのかしら?」
熱の籠った錫の兵隊に対し、しかし王妃は淡々としていた。彼女の言葉に、錫の兵隊は何も返せずに押し黙る。
王妃は窓辺に寄ると、打ち壊された城門へと目を向けた。
そちらの様子を見れば、確かに最早 錫の兵隊一人の手に負えるものではなくなっていた。
「四木々流 冬の型。馬廻襲」
壊れた左腕には添え木を当てて包帯を巻き三角巾で吊った桃太郎は、その状態で大勢の兵士を蹴り倒していた。
地面についた右腕を軸にして回転し、遠心力を乗せた蹴りを連続して放つことで敵兵の剣を逸らして盾を弾いて空いた隙間から蹴り倒していく。
「クッソ!! 手負いの相手に何してるんだ!? 撃ち方 構え!!」
近距離戦では勝てないと踏んだ馬上の騎士は、単発式のボルトアクション小銃を構えた鉄砲隊で射列を作る。
その間に桃太郎は全ての剣士を打ち倒し、悠然と歩いて突き進む。
「撃てッ!!」
「はい。甘い奴ですな~」
だがその全ての弾丸は一つも余すことなく犬の姿と化した瑚白の煙に絡めとられる。この程度の攻撃では瑚白の毛の一房を吹き飛ばすこともできはしない。
瑚白は絡めとった鉛玉をあたりに放り捨てる。彼にとってはこの程度どうということはないのだ。
「な、なんなのだアイツらは!! こうなったら私が突っ込——」
ガァン!! と、音が響き 馬の手綱を握っていた騎士が吹き飛ばされた。爆発によって騎士の鎧には大きな罅が入り、落馬の際の衝撃で騎士は意識を失った。
その様子を確認したエルは、ボルトを引いて空になった薬莢を排出、更に弾丸を再装填してボルトを戻す。
「跳弾させずに撃ったから、まあ大事はないだろう」
現場の指揮官を墜とされた兵は、動揺し統率が乱れる。そうなれば突破は容易い。桃太郎たちは街の門を破壊して突き進み、こうして城内にまで入ってきていた。
街門を突破してから、桃太郎たちはまっすぐに全ての敵兵を穿ち、前と進む。
「……やはり強いな。恐ろしく強い」
だが彼らを阻むように、それまでとは一風変わった雰囲気の騎士たちが現れた。




