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ダンジョンミッシブ

「あんのアホがっ!」


勇者達がまさかボス部屋に入るなんて。この階層に来るまでで自分の実力は分かったはずなのに。

しかも俺の今の任務は勇者を守ることだ。ボス部屋に勇者が入ったなら形だけでも付いていかなければ任務を放棄したと思われてもおかしくない。


「はぁぁぁー!ボス部屋から出たら一回思いっきり殴ってやる!」


盛大なため息をつき髪をかきむしりながら俺は勇者がいるボス部屋へと向かっていった。




「お、俺らも行ったほうがいいのかな?」

一方その頃ボス部屋前で取り残されたクラスメイトたちの筆頭浅田がそんな風につぶやいた。


「で、でも私たちが言っても何にも役に立てないし」


眼鏡をかけたいかにも文系女子といった女子がおずおずとそう声を上げる。


「そうかもしれないけど龍一の援護ぐらいはできるよ!」


いかにも活発そうな男子がそういいクラスメイトの中で言い争いが起こり始めた。


だがそんな言い争いはすぐ終わった。


「でもさ、僕ら龍一が居ないのにモンスターが来たらどうやって対処すんの?」


クラスの男が言ったこの言葉によってクラスメイトたちは嫌でもボス部屋に行くしかないことを悟った。







「っ‼︎」

神木龍一はボス部屋に来たときに悟った。きてはいけない場所にきてしまったということに。


「ゴァァァァー!!」


凄まじい咆哮がボス部屋という薄暗い部屋に響く。

体すくみ一瞬腰が抜けそうになった。

それは一緒についてきた健吾や主力の勇者パーティーも一緒だった。


騎士団長でさえも額に汗を流し、顔を驚きに染めていた。

その事実がただのボスではないことを雄弁に物語っていた。


「まさか、ラルクスなのか?」




"ラルクス"それは本来65階層に存在するボスモンスターの名前だ。

そのモンスターの危険度はSSランク。討伐には多大な被害が出た。

ではなぜそんなモンスターがこの部屋にいるのか。

ダンジョンミッシブまたは迷宮のいたずらと言われる現象がある。

ボス部屋には魔素の器というものがある。

本来ボスモンスターを構成するには多大な魔素が必要だ。その魔素を吸収し貯めているのが魔素の器だと言われている。

それはダンジョンが進むにつれ、敵が強くなるにつれ大きくなる。

当たり前だ。モンスターは強くなるにつれ身体を形成するための魔素は大きくなるのだから。

ボスモンスターが倒されても復活するのはこれが理由だ。

モンスターが殺されることによって発生する魔素を器に移すことによって復活することが可能なのだ。

が、その魔素の器が大きくなることがある。

その階層のモンスターがすごい勢いで殺されれば、その分魔素を吸収しようと器が大きくなるのだ。

そして、勇者たちは広範囲の魔法で迷宮のモンスターを殲滅していた。

明らかに過剰と言えるモンスターの数を討伐して……







見た目は虎に近く、されど体の大きさは5倍以上はあり、体のいたるところか長い剣のようなものが生えている。

これがラルクスか。本で読んだ中にあった文献と照らし合わせ、鋭志は小さくそう呟く。

鞭に剣をつけたようなそれは触手のようにうねうね動き神木と団長に向かって物凄いスピードで襲いかかった。



団長は剣を引き抜きかわしざまに一撃を入れる。

神木にも触手が言ってることに気づき割り込もうとするが間に合わない。

神木はいきなり襲いかかってくる触手に反応さえもできない。

いや、反応できないというよりはラルクスに怖気付き動けないと言ったほうが正しいか。

このままでは勇者である神木が串刺しにされる。

俺は触手と神木の間に入り込むと触手を受け流し、方向をずらす。


「どけ、邪魔だ」


俺はそう淡白に言う。


「え、鋭志?」


健吾が神木と触手の間に立った俺を見て呆然と呟く。

鋭志の目は寒気が走るほど冷たい色をしていた。





予想以上に敵の攻撃の威力が高い。

俺は触手を受け流した時そう感じた。

手がしびれる感覚と同時に勇者達がここにいれば危険という判断を下す。

勇者を守るのが今回の俺の仕事だ。

勇者達が逃げるまでの時間を稼ぎ隙を見て俺も脱出する。

団長の方を向き簡単なハンドサインを送る。

軍にあるハンドサインだ。

百人将になっときもらった本に書いてあったため一応覚えていた甲斐があった。

団長は頷くと一気に俺はラルクスに向かって走り出す。

俺はモンスタントという能力があるがここでは人目があるため使えない。

生身ではラルクスには到底ダメージなど与えられない。

だが、"受け流す"ことならできる。

俺の後に一拍遅れて団長も走ってくる。

ラルクスは戦闘を走っている俺に狙いを定め合計10本もの触手で攻撃してくる。

1本目を右に避け、2本目は転がり三本目は起き上がりざまに受け流し4本目は走りながらのジャンプで5本目

は4本目の触手の上を伝って、次は空中で左に受け流しながら駒のように回転し衝撃を完全に逃がしていく。

そんな"まるで"武術の達人"のような動きをする鋭志に団長は信じられんと声を出し、勇者達は意味不明だと言わんばかりに目を白黒させる。


「おおおぉぉぉ!」


そんな叫びとともに最後の触手を無理矢理体重移動を使って持ち上げラルクスの懐近くまで侵入する。


「団長!」


無理矢理な動きに体の体勢は崩れるが後ろから団長が身体強化を使い一気にスピードを上げてラルクすに向かって突撃する。


思いっきり力を咥え込んだ斬撃を入れるがダメージは薄く皮を切った程度だった。


団長は連撃に繋げようとするも触手によって吹っ飛ばされた。

触手の攻撃が地面にあたり、岩石がさながら弾丸のごとく団長に追撃をかけた。






ラルクスの強みはその防御力にある。

軍の者が一撃を加えても皮を傷つけることさえ難しい。

故にSSランクなのだ。

過去の戦いでもどれもが長期戦になり最短でも討伐には17時間かかっている。


再び迫り来る触手にさすがに近すぎると俺は後退しつつ対処する。

後退すれば体感速度は遅くなる。

俺は団長が起き上がったのを確認しながら怪我の度合いを訪ねる。


「団長!怪我の度合いは!」


「右腕に深い裂傷!動けるが次攻撃を受けたら退却するしかない!」


触手の衝撃は受け流せたみたいだが一緒に飛んできた岩石はかわせなかったようだ。


「不味いな」


俺はそう呟くともう一度ラルクスに向けて走り出した。






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