小さすぎる秋
「おいおい、いくらなんでも育ちが悪すぎるぞ」
朝一番で畑を掘り起こした青年は悪態をついた。
春に植えたのはサツマイモの苗である。秋のこの時期、丸々と太った芋が拝めるはずが、畑の実りは中指ほどの大きさだ。
「こんな小さくちゃ売れないだろうし、村おこしの足しにも出来やしない」
掌でころころと転がってしまうほど小さな芋を見つめ、青年は空を仰いだ。彼は『村おこしを進める会』のリーダーであり、畑の芋は仲間と大切に育ててきたものである。携帯で連絡すると、やってきた二人はあんぐりと口をあけた。
「……とりあえず味を見てみようよ。もしかしたら美味しいかもしれない」
「そ、そうだな。何事もすぐ諦めるのはよくない」
青年は仲間の家で台所を借り、いくつか芋を蒸してみた。おっかなびっくり口に入れてみる。
「う、うまいなこれ……ホクホクしてるし、果物みたいに甘いぞ」
予想外の美味しさに、青年と仲間たちはあっという間に芋を食べつくしてしまった。食べつくしたと言っても、そう何個も食べたわけではない。中指大の芋を一つ二つ食べただけで、食べ盛りの若者三人は満腹になってしまったのだ。
芋の小ささを見つつ、美味と心地よい満腹感を味わいながら、三人は顔を見合わせてニヤリと笑った。
それから一年ほど経ったある日。
村の広場に集まった大勢の客に、青年は拡声器を通してスタートの合図をする。
「皆様、準備はよろしいでしょうか? では、大食い大会のスタートです!」
客たちは用意された豪華賞品を目指してミニ芋のフルコースを食べ始めた。
なにせあの小ささであるからして、大半の人が『自分でも優勝できるかも』と思ってしまうのか、参加者は引きもきらない。少しで満腹になるのでダイエットにいいと、女性客も押し寄せた。
B級グルメの大会で入賞も果たしたし、ミニ芋を使ったスイーツの店は連日行列が出来る人気ぶりである。村役場にはTVや雑誌の取材を受け付ける窓口や、コピー商品を取り締まる部署まで出来てしまった。
「さて、次はどんな料理を考えようかな」
青年は一日の仕事を終えてからも、新しいレシピやミニ芋に次ぐ特産品を考える毎日である。
缶ビールをあけ、彼は仲間たちとミニ芋に乾杯した。
村に大きな成功をもたらしてくれた、小さな秋の味覚に。




