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枚数別のご案内――原稿用紙5枚程度の掌編

小さすぎる秋

作者: 陣 杏里
掲載日:2015/03/02

「おいおい、いくらなんでも育ちが悪すぎるぞ」

 朝一番で畑を掘り起こした青年は悪態をついた。

 春に植えたのはサツマイモの苗である。秋のこの時期、丸々と太った芋が拝めるはずが、畑の実りは中指ほどの大きさだ。

「こんな小さくちゃ売れないだろうし、村おこしの足しにも出来やしない」

 掌でころころと転がってしまうほど小さな芋を見つめ、青年は空を仰いだ。彼は『村おこしを進める会』のリーダーであり、畑の芋は仲間と大切に育ててきたものである。携帯で連絡すると、やってきた二人はあんぐりと口をあけた。

「……とりあえず味を見てみようよ。もしかしたら美味しいかもしれない」

「そ、そうだな。何事もすぐ諦めるのはよくない」

 青年は仲間の家で台所を借り、いくつか芋を蒸してみた。おっかなびっくり口に入れてみる。

「う、うまいなこれ……ホクホクしてるし、果物みたいに甘いぞ」

 予想外の美味しさに、青年と仲間たちはあっという間に芋を食べつくしてしまった。食べつくしたと言っても、そう何個も食べたわけではない。中指大の芋を一つ二つ食べただけで、食べ盛りの若者三人は満腹になってしまったのだ。

 芋の小ささを見つつ、美味と心地よい満腹感を味わいながら、三人は顔を見合わせてニヤリと笑った。

 

 それから一年ほど経ったある日。

 村の広場に集まった大勢の客に、青年は拡声器を通してスタートの合図をする。

「皆様、準備はよろしいでしょうか? では、大食い大会のスタートです!」

 客たちは用意された豪華賞品を目指してミニ芋のフルコースを食べ始めた。

 なにせあの小ささであるからして、大半の人が『自分でも優勝できるかも』と思ってしまうのか、参加者は引きもきらない。少しで満腹になるのでダイエットにいいと、女性客も押し寄せた。

 B級グルメの大会で入賞も果たしたし、ミニ芋を使ったスイーツの店は連日行列が出来る人気ぶりである。村役場にはTVや雑誌の取材を受け付ける窓口や、コピー商品を取り締まる部署まで出来てしまった。

「さて、次はどんな料理を考えようかな」

 青年は一日の仕事を終えてからも、新しいレシピやミニ芋に次ぐ特産品を考える毎日である。

 缶ビールをあけ、彼は仲間たちとミニ芋に乾杯した。

 村に大きな成功をもたらしてくれた、小さな秋の味覚に。

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