猫化(びょうか)
「う~...ん~...」
少女――博麗霊夢は昇る初夏の朝日の日差しに背を向ける。
眠い、何時もの通り誰も来ないから寝ていたい。つい本音を思ってしまう。
そう思うのも無理はない。昨日は境内で夜中まで宴会があったのだ。
さらには飲み過ぎたため、頭もジンジンと痛む。
「....」
それでも昇る日差しに耐えられず、霊夢は体を起こす。
寝巻きが崩れていて、誰かに見られると恥ずかしい。
パッと直し、眠気を飛ばすため伸びをする。
ぴくぴくと小刻みに震える体...。ピコピコと動く猫耳...。猫耳...?
霊夢は自分の身体の異変に気づく。おそるおそる頭に手を置く。そこにはあるはずのない猫耳があった。
「な、な、な、」
――なによこれーーーーーーーーーー!?
これまでにあげたことのない声をだしてしまった。
境内にいた鳥たちが一斉に羽ばたく。
「落ち着こう...まずは状況を整理よ...」
そう言い、パニックになっている自分の気持ちを落ち着かせる。
昨日に口にした食べ物、飲み物...考えれば考えるほど原因の元は出てくる。
「お酒は萃香が持ってきたものだし...魔理沙が持ってきたキノコが怪しい...」
魔理沙が持ってくるキノコは、時々本人でも分からないものまで宴会の品として出してくる。
「来たら問い詰め...」
言い終わる前に、空から箒に跨った少女がこちらに向かって飛んでくるのに気づく。
「 た、大変だーー!!」
「噂をすれば何とやら...」
霊夢の目の前でその少女は止まり、箒から降りる。見るからに慌ててる。
「れ、れ、霊夢!大変だ!異変...」
「言いたい事は分かってる...。この耳のことでしょ...」
「え?霊夢...お前もか...」
金髪白黒の少女は帽子を取り、猫耳を見せる。
「やっぱりあなたもなのね...魔理沙...」
魔理沙と呼ばれる少女は、少し赤面しながら頷く。
一体何がどうなってるのよ...。そう思いながら縁側に腰を下ろす。
「...あなたが昨日持ってきたきのこに混じってたんじゃないの...」
「いやいや、そんなことは絶対にないぜ。出したきのこは以前に何度も食している。それにこんな恥ずかしいもの、生えることもなかったし」
「それじゃ...一体なにが原因なのかしら...」
「それがわかってたら苦労はしないぜ」
暫く沈黙が続く。
それを破るかの如く 一人の少年が境内に入ってくる。
「ん?誰か来たぜ?」