* 神様の鳥居 5
由梨も加わり三人で頭を突き合わせながら、うんうんと唸り声を上げながら首を傾げる。
全くと言っていいほど見覚えのないその石は、石というよりも水晶で出来ている様で、透明な表面に落ちる影と中を走る光の屈折が折り重なり、きらきらと光輝いている様にも見えた
「――光。」
「へ?」
「え?」
ぽつりと呟いた健司の言葉に、愛子と由梨は同時に声を上げた。
当の健司はというと、眉根を寄せ腕組みをし、さらに首を捻った。
もう少しで何か思い出せそうなんだ、と言わんばかりのその体に、二人は息をのんで健司を見つめる。
「あっ、そうだ!光だよ、光!」
「「?」」
得心がいった顔つきの健司とは対称に、二人の頭にはクエスチョンマークが飛び交うが、矢継ぎ早に話される健司の話にそれでも耳を傾けた。
「あの…ほら!見ただろ、二人も!」
「何を…」
「ほら、あのくるくるーっていう光!」
「?だから、何の事を言って…」
「だから!さっきの、石の建物?の中にあった光だよ!」
「「!」」
愛子と由梨の表情が凍った。
「でも、おっかしいな。最後に掴んだのは、確かに光だったんだけど…っ!」
不思議だとしか思っていない素振りの健司に、由梨は思わず掴みかかった。
「持ってきちゃったの?」
健司の胸倉をギリギリと締め上げながら問いかける。
「アンタ馬鹿!?馬鹿でしょ!!」
「だだだだっ」
前後に揺られて言葉にならない声を発する健司に対し、由梨がその手を緩める事はない。
一体どこにそんな力があるんだと、思う程の力で揺さぶられ続ける。
ああ、そういえばコイツ(由梨)って、この間の体育で鉄棒のけんすい一番だったっけ。
「(あーじいちゃん…なに?何か言って――)っっは!ゴホッ、ゴホゴホ!はぁ…はぁ。」
思い切り咳き込みつつ、ようやく取り入れられた空気を必死に肺に送り一息ついた。
今、何か此処じゃない場所が見えた気がする。
「さすがにマズイよ由梨ちゃん。」
「あー、うん。ごめん健司。」
二人を見上げると、愛子が由梨の腕を掴んでいることから、どうやら由梨を愛子が止めてくれたのだろう。
いやぁ、助かった愛子。持つべきものは、心優しい従姉だな。
今度から、あまりからかって遊ばない様にしてやろう。と、健司は心に決め、由梨の手が離れた勢いで座り込んでしまっていた体制から、立ち上がった。
今回は少し短めだったかも…。