独りぼっちのお人形さん
森の奥のそのまた奥に、小さな小屋が建っていました。
小屋には、お人形さんが住んでいました。
それはそれは綺麗な女の子のお人形さんでした。
でも、彼女には心がありませんでした。
彼女を造ってくれた人は、もういません。
だから、心とはどういうものなのか。
一体どういうものなのか、お人形さんには分かりませんでした。
そんなある日。
一人の男の狩人さんが、森で血まみれになって倒れていました。
驚いたお人形さんは、自分の小屋にまで連れて帰ると狩人さんを介抱をしてあげました。
やがて、狩人さんが目を覚ますと何度も何度もお礼を言ってくれました。お人形さんが人間ではないということには、気がつかなかったようです。
お人形さんは、自分の正体を隠しました。
造ってくれた人がこの小屋にいた時に、忠告してくれていたのです。
必ず、自分の正体は隠せと。
そうしなければ、お前は何をされるか分からないと。
だから、お人形さんは、自分が人形であるということを隠したまま、狩人さんの手当てを続けました。
傷ついた狩人さんの傷は思いの外深く、傷が治るまで一緒に生活することになりました。
そうして、二人で一緒の生活をしばらく続けていると、お人形さんは思いました。
なんだか心が羽のように軽くて、楽しいと。
そう考えていることに気づくと、驚きました。
心がなかったはずのお人形さんに、いつの間にか心が宿っていたからです。
もしかしたら、お人形さんにも元々心があったのかも知れません。
だけど、造られてからほとんどずっと孤独に生きてきたお人形さんは、心のあるかないかを確かめることすらできなかったのです。
周りに誰もいなかったから。
心が動くようなことが何一つなかったから。
そうです。
誰かと一緒に生活することによって、ようやくお人形さんにも心が芽生えたのです。
独りぼっちじゃなくなったから、感情が生まれたのです。
嬉しくて、嬉しくて、お人形さんは狩人さんに話してしまいました。
自分が、人形であるということを。
いつも通りに接してくれると思っていました。
だけど、狩人さんはお人形さんをバケモノ扱いしました。
持っていた銃で、お人形さんの顔を破壊してしまいました。あんなに可愛かったお人形さんの顔は壊れてしまいました。
ですが、お人形は狩人さんを恨みません。
それどころか、どうしてこんなことをするのかと狩人さんに訊きました。
ただ理由を知りたかったのです。
傷ついても平気で動くお人形さんを見て、怖くなった狩人さんは一目散に逃げていきました。
お人形さんは、狩人さんを追いかけました。
どうして追いかけたのか分かりません。
また拒絶されることは分かりきっているのに。
それでも、追いかけなくてはならないような気がしました。
胸の辺りがポッカリと空いているような気がしました。
こんな感情は初めてでした。
苦しくて、苦しくて。
こんなことなら、心なんていらないと思いました。
そうして、お人形さんが狩人さんに追いつくと、熊に襲われているところでした。
熊には古傷があって、狩人さんが話していた、狩人さんを傷つけた相手だということをすぐに悟りました。
狩人さんは熊に追い詰められ、また怪我をしそうでした。
助けるべきです。
でも、何故かお人形さんの体は動きません。
動いてくれません。
どうしても、何かがお人形さんの動きを邪魔します。
そして、熊の爪が狩人さんの身を引き裂こうとした瞬間。
何故か、お人形さんの体は勝手に動きました。
その身を挺して、狩人さんの盾になりました。
呆然とする狩人さんでしたが、はっとなると銃を持ち直して熊を射殺しました。
狩人さんは、バラバラの体になってしまったお人形さんに駆け寄ります。
ごめんなさい、ごめんなさいと、狩人さんは謝ります。
ですが、もうお人形さんには声は届きません。
ですが、もうお人形さんが声を発することはありません。
それから、心のあるお人形さんが動くことはありませんでした。
童話初挑戦なので、
これが童話になっているのか良く分かりませんが、
一生懸命執筆しました。
ということで、勘弁してください汗