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序章・それは偶然か必然か
初めまして熊と申します。
魔王が魔王を倒すという物語、もしもお目にとまりお読みいただければ幸いです。
「貴方が勇者様でしょうか?」
松明の光以外、まともな明かりの見えない石室の中、聖女を思わせる装いの少女は、魔法陣の中央に佇む青年にそう尋ねる。
本来こういう場合青年は『はい、そうです』か『僕が勇者?』とか、それらしい反応をした方が良いのかもしれない。
だが青年はの言葉にこう答えなければならなかった。
「いいえ違います」
青年は聖少女にはっきりと淀みなく答える。
聖少女は青年の言葉が信じられないとばかりに、目を見開き青年を見つめる。
「で、では」
「聖騎士とか英雄とか救世主でも無いですからね」
聖少女が何か言う前に、青年は言葉を封殺する。
青年は勇者や英雄、救世主とかその手のモノとは縁の無い、寧ろ対局に位置する存在だった。
「僕はイクスフォリニア、名前が長いのでみんなは僕をイクスと呼びますが……まあ、申し訳ないですが僕は魔王です」