第3話 ブサイクな子…え?ブサイク?
お待たせしました。
第3話です。
楽しんでください!!
「早くどいて!!」
近付くにつれて段々と言い争っている内容が聞こえてきた。
「だから邪魔なんだってば!!」
「うるせーぞ、どブスがぁ!! お前みたいなのは後ろについてりゃいいんだよ!!」
「そんなの関係ないでしょ! 私が先に並んでたじゃない!!」
ふむふむ…。
喧嘩の内容としては、やわらか〜く言って可愛くはない子の前に心ない男が横入りしたみたいだ。完全に男が悪いですね。
それにしても、女の子の方もなんて勝ち気な事だろうか。なかなかに肝が据わった女の子だこと。
そこでようやく閃君到着のようで。野次馬がおり見えないんで見える位置に移動、そうしたら調度女の子の後ろに来た。
「おぉ、抜群のプロポーション」
この街でちらほら見る制服、学生服だろうか、そのような服を着た背の高めな女の子だ。
160半ばの慎重で、スカートは今時の女の子らしく短め。そこからはスラッとした足が覗いていて、髪は肩まで伸ばしたサラサラストレートな金髪、後ろ姿は完璧である。
顔が残念なのが勿体ない…。
「もったねぇ…」
閃も同じ意見のようで。
物ぐさですが閃も男だ。キレイな女の人とすれ違えば振り向いちゃうし、目で追ってしまうことだってある。
ちなみに閃君は、
「俺的に天音さんがどストライクだ」と言っている。
確 かに天音さんは美人だし、優しいし、おまけにスタイルも抜群だし。年上のお姉さんがお好きなようで、
「年上にしか出せない女の色香が堪らないんですよ。あ、年上と聞いて『お前Mなんだ、年上お姉さんに罵れるのがいいんだろ?この変態野郎』と言うやつもいるだろうが、つか言われたが断じてそんなことはないですから!! どちらかと言えば罵りたい!! いつもは大人ぶってるのにいじられてる時はドMを発揮して涙目だけど嬉しそうなんていうのは最高だね!! 後は…(省略)もう天音さんは完璧なんだよ!! あの天使のような微笑みは俺の疲れを吹き飛ばすぅ!! あの人は昔っから俺の事気遣ってくれてさ…。魔具も一番に買ってくれて…。ぐすっ、今の俺がいるのは天音さんのおかげといっても過言ではないよ…うぅ…。(また省略)天音さんはドMだったりするかな…? あ、それと熟女はパス、ボール球だから」
と、いつもはめんどくさそうに喋るのにこの時だけやけに饒舌になり迅の旦那に語ったのはいい思い出だそうだ。
こんな変態な主人公いいのか? と思ってしまいますが、こんな状態になったのはこの時だけだから。ちょっと迅の旦那の閃を見る目が、汚物を見るような目だったのに気付いて気をつけるようになりました。魔具が何個か売れて、お客様からお礼言われて、酒も入って、テンションMAXだったんですね、わかります。
普段はこんなんじゃないですから。
閑話休題
野次馬たちには
「ホントにブサイクだな。助けようという気もおきない」
とか言ってるやつもいる。
ひどい奴ら。ブサイクは助ける価値もないってか?
「ああ〜、うるせぇな!! 引っ込んでろ!!」
「きゃっ!」
女の子が突き飛ばされて閃の方に倒れてきた。
閃はこっちにきた体を出来るだけ優しく受け止めてあげる。閃は基本差別なんかしません。いくら顔がひどくたって同じ人間なのだ、それに差別とかめんどい(これが8割)。まぁ、生きる価値がないようなやつには別だがな、だとか。
「よっと」
受け止めた体を降ろしてあげると、女の子は閃の方に振り向きながら頭を下げてきた。
「あ、ありがとうございます!! 助かりました!!」
「いいっていいって、調度ここにいただけだから。ケガはないか?」
「はい、大丈夫です!」
そう言って女の子は、顔を上げて笑顔で応えてくれた。
「………は?」
瞬間、閃の時間が止まった。
それもそうだろう。
原因は目の前にいる女の子で、周りから散々ブサイクと言われ続けてきた顔はとてつもなく美しかったのだから。
16歳ぐらいの外見で、ぱっちりとした青い眼はキラキラと輝き、形のいい眉とシュッと通った少し小さめの鼻、みずみずしい唇、その子を形作っているもの全てがバランスよく整い、ものすごい美少女を作り上げております。ちなみに胸も大きめ。ここ重要ポイント。
誰だ!! こんなキレイな子をブサイクって言ったやつは!!
この子は国宝級の美しさだぞこらぁ!!
カワイイとキレイは誰もが皆護るべきものなんだよ!!
それは決してこの世界から失ってはいけない。
それがあるから世界が鮮やかに見える…、自分のつまらない世界が彩られるんだ!!
それを壊そうとするやつは俺が許さん!!
この子をブサイクなんて言ったやつ、ぶっ殺す!!
………すいません、取り乱しました。
「あのー…、どうかしました?」
その女の子の言葉のおかげで正気に戻った閃。
ブサイクなんだと思っていたら美少女だったので仕方がない、男ならみんな絶句するだろう。
「ハッ、…い、いや! なんでもないなんでもない。ケガがないなら良かったよ」
ぎこちないながらも閃は笑顔で応えた。
「それよりもいいのか? こんな所で話しててもさ。もう並ばれちゃってるぜ?」
「あっ!!」
女の子は慌てて列を振り返るが遅かった。
男は何事もなかったかのように並んじゃっております。図々しいにも程がある。
「うぅ…ブサイクって損だなぁ…」
女の子が悲しそうに呟くが、ちょい待ち、ブサイクか? その神の域にも達しているというような美しさで?
「ねぇねぇ。質問なんだけどさ、君ってブサイクなの?」
マナー・モラル・デリカシーのかけらもない男、閃。
そんなこと初対面じゃ絶対聞かない、いや初対面じゃなくてもそうそう聞けない。
でもまぁ、疑問に思ってたから調度いい。ナイスだ閃!!
「………フツー聞きませんよね? そういうこと」
女の子はジト目で閃を見る。
「あ、いや、本当に不思議でさ。君、すごい美人さんだから」
「ふぇっ!?」
閃は別に口説こうなどとは思ってません。
思ったことはあんまり意識せずに言っちゃう人なんです…。
飾るなんてめんどくせーだろ? それなら正直に生きるさ。
閃の座右の銘。
言ってることはカッコイイのだが、そのせいで余計めんどくさくなっている気がしないでもない。
と、そんな台詞を吐かれた女の子はめちゃくちゃあたふたしている。こんなにキレイなのに一度も言われたことのないような反応である。
でも、照れてる姿はすんごくかわええ…。
「そ、そんな、キレイだなんて…。いきなりはダメですよぉ!! まだ知り合って間もないのに付き合ってくださいだなんて…。キャー!!」
少女暴走中。
一言も言ってもいないことを妄想してキャーキャー言ってますね。
閃も、そこまで言ってないよ? と言うが、トリップ中なので届いていない。
この子いろいろとすげぇ…。
「…まぁ、とりあえず横入りをどけてきますか」
物ぐさな閃君も困ってる女の子のためなら人肌脱ごうというのか、手を引いて男のもとへ。
あ、ちなみに女の子のほうは、
「あぁ! 手を握られた! んもぅ、大胆なんだから…」
未だ暴走中でした。
「おい、そこのお前」
「あぁ? なんだよ?」
近くで見るとなかなかでかい。
180㎝ぐらいで、顔もカッコイイ方である。性格がもうちょっと良ければなー。
「この子が先並んでたんだろ? どいてやれよ」
「関係ねーし。俺は早く彼女にアイスクリームを買っていってやらないといけねぇんだよ」
それを聞いて、ここアイス屋なのか…、と的外れなことを閃は言っている。
マイペースだなぁ…。
もうちょっと女の子のために頑張ろうとか思わんのかね?
「いや、でも順番ぐらい待てっつの。一人や二人すぐだろうが」
「うるせーな、固いこと言うなよ。つか、なんでお前はそんなやつ庇うんだ? ブスにそんな価値ねぇだろ」
怪訝な顔をして閃に問う。
こいつ…、信じられねぇこと言いやがった…。
てめぇブスってどこにいんだよ。この子はもういつまでも見ていたくなるような、絶世の美少女だろうが!!
「………目が腐ってんのか? 眼科行った方がいいって」
さらっと酷いことを言う。
まぁ、俺もその通りだと思うね!! この子を見てブサイクだとかほざくやつは目が腐ってるとしか思えないねっ!!
だが、周りの野次馬共もブスという言葉に共感しているようなそぶりを見せるのだ。
なに? ドッキリ?
「なんだと!? どういうことだコラ!!」
「お前声でけーよ…。もう少し静かに喋れや。大きな声出せば相手はビビるとでも思ってんのか? 知能低すぎんだろ」
「て、てめぇ!! いい加減にし「ねぇー、アイスまだー?」おお、来ちまったか。もうちょいだから待っとけ」
閃の挑発(たぶんそんなこと考えていなかっただろうが)にのり、男がキレた所に一人の女が現れた。
周りが、おぉー、やらキレイな人だな、など言っているが閃にはとてもじゃないがそうは見えない。というか目を反らして、見ないようにまでした。
「やっぱり目が腐ってたんだな…。かわいそうに…」
同意見です。
そっちこそブサイクだろうが。何なの? 頭に蛆でも湧いてるの? 一遍死んで出直してこいコラ。
んー、でも、周りのやつらもキレイとか言ってるし…。
これはこの世界がおかしいというわけか?
今までの情報を纏めると…
・国宝級の美しさをもつこの女の子はブサイク
・目が腐ってる男の彼女はすんごいブサイクなのに、周りのやつらはキレイと言っている
・俺としては狂ってるとしか思えないが、この世界ではこれが一般の常識らしい
なるほど…。
ようするに、この世界ではブサイクなやつが美人で、美しい人がブサイクの扱いを受けるということですね。
閃もその考えに至ったようで、ふむふむと頷いている。
「こりゃまた、すげぇ世界に来ちまったな…。ん? つーことは、今周りから俺は………。うがぁぁぁ!!!」
ブス専に見えるわけですねわかります。
「あぁ? なんだこいつ。突然叫び出しやがって…。ははぁん、俺の彼女がキレイだからって嫉妬かぁ?」
ニヤニヤと嫌みったらしい顔で自慢してくる男。
腹立つ!! 無性に腹立つ!!
「んなわけねーだろ!! そんなブサイク女!!」
「はぁ!? ブサイク!? ふざけやがって…。てめぇもブサイク庇ってんだろ!! ブス専か?」
「てめぇぇえぇ!!!! 言っちゃったな!? 言っちゃいましたねぇ!? 俺が今最も言われたくない言葉をっ…!! この子はブサイクじゃないけど…、違うけど…、めちゃくちゃ悔しいっ!!」
そのあともいろいろ言い合うこと5分後。
「ハァ…ハァ…。てめぇこらハゲこらぁ…」
「ハァ…ハァ…。このブス専野郎がっ…」
「「勝負だ!!」」
なんか勝負することが決まりました。