第11話 依頼…は?案内人?
ご無沙汰です。
ちょっと今回短めです。
区切りがよかったものでして。
それではどうぞ。
「マジで潰してやるよ…」
明らかに怒りを含んだ目をして、乱暴に依頼書をひきちぎり受付に持っていく閃。
掲示板に歩いて行くところからずっと閃を見ていたイリスは、突然凄まじい量の殺気を感じて涙目になってしまってます。
いつ自分が死んでもおかしくないような感覚がずっと纏わり付いてくる。
今まて数々のギルドメンバーを見てきたイリスであったが、ここまで濃密な殺気を放てる者はいなかった。
この人は本当に何者なんだろう、と考えているところに閃がやってきた。
近くに来た閃が怖くてイリスはビクビクしている。
おい、いくら怒ってるからってイリスを怖がらせてんじゃねぇぞコラ!!
殺気引っ込めろや。
「イリス、俺はこの依頼を受ける。場所がわからないから地図をくれないか?」
「い、いえ。それには及びません。王城から案内人の方がこの街に来ておりますので、そちらの方に案内していただきます」
「そうか。それでその案内人はどこにいる?」
「現在はギルド内のお部屋に泊まっておられまして、多分今ならお部屋の方にいると思います。お呼びしましょうか?」
「あぁ、頼む」
イリスはすぐに奥の方へと入って行った。
待っている時間、閃は受付に立っていたが、段々と落ち着いてきていた。
怒りに身を任せるのはまずい。
動きが単調になり、先も読まれやすくなるからね。
まぁ、閃はその怒りもコントロールして力へと変えられるが、この宗教団体の壊滅という依頼では冷静でいたほうがいいだろう。
情報収集のため、構成員から情報を聞き出し、取捨選択することも重要になってくると思うから。
そもそも奴らの拠点が、今から行く拠点だけとは限らないし、より多く情報を獲得する必要があるだろう。
あと子供達も助けなきゃならない。
冷静な判断を下せず、子供達を人質に取られたり、殺されたりしたら最悪だ。
だから今回熱くなることは避けたほうがいいかもね。
「みんな…、助けを求めてんだよな…」
と、ここでイリスが戻ってきた。
閃の雰囲気が戻っていることに安堵の溜め息をはいております。
怖かったものね。
しゃあないです。
「お待たせいたしました。こちらが王城からの使者の方にございます」
「どうも初めまして。クロア・ヴェストリよ。王宮魔法騎士団副団長をしているわ。よろしくね?」
はいキター。
また美女ですよー。
この世界ではブサイクがきれいであり、皆さんそれを目指しているわけだから、おのずとブサイクが増えるはずだが、なんでこうも美女とのエンカウント率が高いんですかー?
役得だね羨ましいから溺れろ
今来たお姉さんはショートの紫色の髪で、薄いイエローの小さなピアスが見えている。
そして吸い込まれそうな大きく黒い目にはアイシャドーやアイライン、形のいいみずみずしい唇にはリップを塗り、眉毛を書いたり、と自分をブサイクではなく美しく見せる化粧をしている。
こやつ…、絶対に俺達と同じ感性の持ち主だ!!
黒の胸当てをしているが、それを押し上げる自己主張の激しい胸は満点でごさる。
素晴らしいプロポーションと相まって、絶世の美女ですね。
後は身の丈ほどの杖を、篭手を装備した右手で持ち、高級そうな黒いローブを羽織っている。
ちなみに背は閃君と同じぐらいですかね。
ぶっちゃけ俺の好m(自重)
戦闘は、杖を持っているから後衛専門だろう。
「俺は閃。セン・タナカだ。よろしく」
お互いに握手をして挨拶。
「さて挨拶はこんなもんでいいだろ?早速依頼遂行といくか」
「ええ、そうして貰えると嬉しいわ。現在も被害が増える一方で困っているのよ」
「それとあなた個人でもお怒りのようだな」
「…そうね。被害者の一人に友人の一人娘もいるから」
クロアさんは悲しそうな、恨めしそうな表情で呟く。
友人というのも親友とか、かなり親しい友人なんだろう。
その娘も被害者の一人とは、なんとも世界は残酷なんだろう。
「その娘はどうなった?」
「山中、遺体で発見されたわ」
「そうか…」
思わず閃は歯ぎしりをする。
怒っているのは見て明らかだ。
「あなたは優しいのね。見ず知らずの子供のことで怒れるなんて。そんな人は珍しいわ」
クロアさんはそんな閃の姿を見て、自然と言葉が出てきた。
まだ会って間もないのに、そんな言葉をかけるつもりはなかっただけクロアさん本人も驚いているご様子。
「…まぁ、俺の勝手な考え方なんだけど」
そう前置きをして語り始めた。
その考えは閃の生き方をそのまま表していた。
「俺と少しでも関わったやつは、俺の器に入る。俺がそいつのことを好きでも、嫌いでも、何も思わなくても。その逆で俺がどう思われていようとも。俺は器に入ったやつには生きていてほしい。そりゃ悪いことやったなら、その罰は受けなきゃならないけど。俺が手を下さなきゃならないなら、それもするけど。ちゃんとそいつらのことは覚えとく。ちゃんと俺の中で生きていけるようにな。でも、やっぱりみんなには生きていてほしいよ。生きてなんぼの世界だ。生きてりゃ楽しいことしたり、笑ったり、大切なモノ見つかったり、愛したり。やっぱそういうこと体験すんのは最高だよな。だから俺は、器に入った奴らが助けを求めるなら全力で助ける。泣き顔なんか見たくない。笑顔に変えてやる。俺の器からこぼれ落ちるやつなんか、いねぇよ」
そう閃は虚空を眺めながら言った。
何これ?
閃君かっこいいんだけど。
クロアさんやイリスなんか惚けちゃってますけど。
つか、見惚れてるんですが?
「もちろん、クロアさんやイリス、あんたたちもすでに俺の器の中だ。勝手に死んでいくなんか許さない。俺のために生きてくれ」
オィィィィイイイイ!!!
その言葉ダメ!!絶対!!
この世界の美女、美少女達はそういう言葉に慣れてないんだからね?
そんなこと言っちゃったら、
バタッ
倒れちゃうだろぉ…。
双方共に顔真っ赤だよ。
あんな言葉誤解するなってほうが無理だろうが。
考えろよ。
脳みそ使って考えろよバカ。
「あれ?おい!!なんで倒れてんだ?って顔真っ赤じゃねぇか!!熱か?……うん、熱いな。このギルドに治療室とかあんのか?運んだ方がいいな。すいませ〜ん。治療室何処っすか〜?」
閃、自覚なし。