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第1話 魔具屋…えぇ?ハプニング?

これは作者の妄想の産物です。

不快に思われた方は申し訳ありません。

面白いという方は

どんどん読んでください!!←


それではどうぞ〜

「暇だ」


 そんな言葉をもらしたのはこの物語の主人公、田中閃(たなかせん)という少年だ。歳は17、黒眼と無造作な黒髪、身長は低くもないが目立って高いわけでもない173cm。そして、どちらかといえばがっしりとした体型なので62キロの体重。容姿は10人に聞けば6、7人が、「うん、まぁかっこいいかな」というぐらいの、『普通』にかっこいいぐらい。間違っても絶世の美少年なんかではない。


 そんな閃がいるのは、うん、道だ。人通りの多い大通りといいやつだ。出店なんかもたくさん出ていて、それなりに賑わっている。

 それなら店を回ればいいじゃないか、と思うかもしれないが、かくいう閃も店を出しているのだ。

 店の名前は


自由空間(フリーゾーン)


 扱っているものは魔具と呼ばれる代物である。

 それは物に魔法を封じ込め、魔力を送ることで誰でも使える道具のことだ。

 ただ魔具にもランクというものがあり、その人の最大魔力量、魔力質、魔力コントロールなどのセンスから、扱える最高ランクが変わってくる。

 E〜Sと分かれており、EとDが低ランク、CとBが中ランク、AとSが高ランクと呼ばれる。

 中でも高ランクを扱える人間は本当に少ない。高ランクを扱えるとしても、使用する魔力量が、全部が全部中ランクの平均約3倍以上のため数回使うだけで魔力が切れてしまう人が多い。そもそもそれ以前に、魔具を使って明かりを点すのと魔法を使って明かりを点すのでは、魔具を使う方が魔法より平均約1.2倍の魔力を使ってしまうのだ。それならば魔法の得意な者は魔法を使った方がお得であるため、魔具を求める者は、補助目的であったり魔法が苦手で習得出来なかったりする者が多いのだ。


 話を戻そう。ランクの話だったか? 次は各ランクの傾向を説明しよう。低ランクで多いものが、日常生活で役にたつものである。火をおこしたり、明かりを点したり、別空間に者をしまったりするものが代表的。これらは魔力消費が少ないため、一度使ったぐらいでは減った気がしない。世界に一番普及し、数の多い物は低ランク魔具だろう。次に中ランク。これは戦闘で使われる物が多い。高ランクも同様かな。主にギルドメンバーや傭兵が買い求める。そういう戦闘用魔具は剣や槍なんかの武器に刻まれて作られているので、戦闘の応用に使う人もいるようだ。


 魔具について説明してきたわけだが、ぶっちゃけると魔力燃費が悪いから魔法の得意な人は買わない、つか買ってもムダ。まぁ、それでもこの世界には必要な物なのだけどね。ちなみにランクは国が定めている。


 そんな魔具を閃は扱っているのだが、『自由空間』はそこらの魔具屋とは少し、いや、大分違う。そのことが閃の横にたっている看板からわかる。


「自由空間  田中閃作の高ランク魔具専門店」


 そう、この店は閃が作った、しかも高ランクの魔具を専門として売っているのだ。高ランク専門というところにも確かに驚くのだが、より驚くところが、閃が作ったという部分である。


 魔具を作るには長い修練が必要になる。刻む魔法の原理理解、刻み方、魔力が流れる回路、籠める魔力大変なのだ。それともう一つ。魔具職人は絶対に自分の扱えるランク以上の物は作れない。ということは、閃は高ランク魔具を扱えるということになる。そんなことは誰も信じない。信じられるわけがない。成人もしてないような少年が作れるはずが、いや、扱えるはずもない。

 だから客もよってこないのだ。


「はぁ〜…。今日何か売れなきゃ野宿なんだが…」


 閃君は文無しらしい。

 そりゃそうだろう。椅子(空き箱)に座り、胡散臭い看板が横に立っているだけ。商品などは物を別空間にしまう魔具<BOX>の中にでも仕舞っているのだろう。そんな商売態度で客が来るはずがない。

 商売ナメてんのか?


 え? さっきかうるさいお前は誰かって?

 そういえば申し遅れた。

 俺は………あー………まあ気にしなくていいよ、うん。

 天の声的な? まぁ、そんな第三者がこの物語をお送りいたしますよっと。よろしくお願いしまーす。



「よぉ、閃。調子はどうだ?」


 ん? 暇そうな閃に声をかける男が一人。30歳前後ぐらいの大剣を背負った男だ。180cmを越えた長身。がっしりとした体型に軽い防具、篭手や胸当てを当てている。

 大方ギルドメンバーであろう。


そういえばギルドとは何か。まぁ、皆さんお察しの通り何でも屋みたいな組織のことだ。迷子捜索、引っ越しの手伝いなどの雑用みたいな依頼から、魔獣討伐までなんでもやってくれる。便利だろ? でもギルドメンバー達にはランクがあり、それによって受注できる依頼の難易度も変わってくる。魔具のランクとだいたい同じであり、E〜Sとなっている。


 そしてさっきちらっと出てきた魔獣だが、動物が己の持つ魔力を暴走させると魔獣へと堕ちる、とされている。詳しくはわかってないんだよ。ただひたすらに暴走するから人間には害でしかない。だから退治をしなければ被害が出てしまうので、討伐系依頼も毎日のように入ってくるのだ。


 さて話を戻そう。今、閃のもとにやってきた男。めちゃくちゃ強そうだ。親しげに話し掛けていたが、どんな関係なんでしょうね?


「おぉ、迅の旦那じゃないですかー。『国の最終兵器』とも呼ばれるようなあなたが、何でこんなところに?」


 国の最終兵器。この国の者なら誰もが知っているワード、らしい。国に降り懸かってくる災厄を、背に背負う大剣一つで叩き潰す、ギルドNo.1 Sランク『武神』の二つ名で通る天地迅(あまちじん)、どいうみたいだ。顔はあまり知られていないためか、大通りを行く人は気づいていない。


「いや、ちょっと見かけたから声をかけただけだ。暇そうな顔しやがって…。大方客なんか来ていないんだろ? なんか買って行ってやろうか?」


 それを聞いた瞬間、今まで覇気も何にも感じられなかった顔がパァっと輝いた。嬉しそうに身を乗り出す。


「本当っすか!? いやぁ助かりますよー。今日なにも売れんと宿代が払えなくて…。今ならオススメの商品お安くしときますぜ?」


「お、そいつはいいな。質の良いものが安く手に入るんだ、買い占めようかね」


「い、いやぁ〜…。それは勘弁してくださいよ」


 そんな軽口を二人でたたき合っている。それなりに仲も良いのだろう。ただの店主とお客さんの関係には見えないから。


「ところで、まだお前は行商人なんかやってんのか? お前ほどの腕なら店の一つや二つは簡単に持てるだろうに」


 どうやら迅は閃の腕を相当買っているようだ。国一番の強者のお墨付きなら良い仕事をするのだろう。

 ……はい、信じられませんね。


「いやぁ、一つの所に留まるのは俺の性にあわないもんで。いろんな国回って、いろいろな人に会って、俺の魔具使ってよかったって言って貰えるのが嬉しいんですよ。魔具作るエネルギーになりますし」


「とは言っても高ランクしか扱っていないんだろ? そんなごくわずかの人間しか使えないの売れないぞ。まぁ、それより下のランクが作れないのなら仕方がないのかもしれんが…」


 そうなのだ。

 閃もこんな高ランク専門の店なんかやりたくない。

 じゃあ何故こんな店をやっているのかといえば、答えは簡単。閃は高ランク魔具しか作れないのである。

 どんなにランクを下げようとしてもAランクが限界。どれだけ籠める魔力を下げても、だ。これは魔力質が関係していると思われる。

 例えば光を点す魔具を作るとしようか。ホタルの光ほどの小さな光を点すつもりで作っても、太陽のように、目で直視できないような強い光が出てしまうのだ。

 そのかわりといってはあれだが、閃の作った魔具は丈夫で長持ちすると常連さんは語る。


「どうしてなんでしょうね?」


 閃は心底不思議だという顔をして迅に聞くが、反対に迅は心底呆れたという顔になった。


「そりゃお前の魔力センスがとんでもないからだろうが…」


 説明タイム!

 魔力センスとは個人の最大魔力量、魔力質、魔力コントロールをまとめた総合的なものを魔力センスと呼ぶのだっ。

 ギルドランク、魔具ランク同様にE〜Sまでで表すが、閃の場合は、


「お前は測定不能。あえてランクを付けるならXランクという規格外だ」


 以前、迅に連れられてギルド内にある測定陣(魔力センス測定のたもの魔法陣。ランクによって光が強くなる)を使って調べたが、どんどん光が強くなっていき最後には魔力が暴走、爆発して陣がめちゃくちゃになってしまった。

 その時の修理費は300万エルでござる。1エル=1円と考えましょう。

 連れてきた迅は修理費を払わされました、まる


「そりゃ作る魔具が相当な物になるよ…。お前もう人間語るな」


「ひでぇっ!! 俺は人間だ!!」


「はいはい、分かった分かった。今度から人間(自称)としような?」


「分かってない!? 絶対分かってねぇよこの人!! うぅぅ…こんな化け物みたいな力のせいで人外認定うけるし…、魔具は売れないし…。あぁ…、神様。あなたは僕が嫌いなのですか?」


 両手を高く上げて空を仰ぎ見る閃。そんな風に少し壊れ始めた閃君に迅は苦笑している。

 やっぱこいつおもしれーわ、と多分思っていますね。俺同様。


「迅の旦那ぁ!! あんたなら俺の魔具使えるでしょう? 今ならお安くしときますから買っていってくださりませぬか!?」


 大袈裟な芝居をうって迅にしがみつく閃。情けなっ。

 金がないならその有り余る才能を使って魔獣でも討伐してくればいいのに。


「絶対にイヤだね!! そんなことするなら座って商売してたほうが楽だもの!!」


 さいですか…。

 この閃という少年はとてつもない物ぐさなのを忘れてた。

 もったいなさすぎる…。


「………どうした? 急に叫んで…」


「あぁすいません。今変な声聞こえて。それで? 買っていってくれるんですかい?」


 ニヤニヤと揉み手をしながら迅に近付く。

 そんな閃に苦笑しながら優しい迅さんはどんな商品があるんだ? と聞いた。


「今日はですね〜、名匠閃様が作った最新作!! 灼熱の魔剣<エンレンガ・ラ・キュラー>です!!」


 閃が取り出したのは炎のような装飾が刃や柄に施された両刃の朱の大剣。とても重そうなその大剣を、片手でくるくる回しながらプレゼンをする閃君。どうやら魔力センスだけじゃなく肉体までチートのようですね。ははは、本当に人間ですか?


「どんな物でも一瞬で燃やし尽くす灼熱の炎を自分の思うがままに操れる!! ほらこんな風に炎の竜も!!」


 大剣を構え魔力を流すと装飾が淡く光り、炎が生まれる。その炎がうねるように空へと昇る。どんどんある形を作っていき、ついに閃を頭上で10メートルほどの見事な炎の竜となった。

 周りは大道芸か何かと思っているのかパチパチと呑気に拍手をおくっている。

 ちなみに現在この場は灼熱地獄です。


「閃、分かったから竜を消してくれ…。暑くてかなわん」


「了解」


 竜を消し、笑顔を向けてくる。どうだ凄いだろ、と言っているようだ。

 いや確かに凄いけども、あれほどの魔力を使って汗一つかかない閃もすげぇ…、と迅の旦那は呟いているが閃は気づかない。

 そんな呟きより商品を買ってもらえるかが重要なのです。


「どうです? この魔剣、Sランクの中でも最高の出来ですよ?」


「全く…。毎回毎回とんでもないもの作りやがって…。それ<サンドルグ>や<アイシム>と同レベルだろ?」


 <サンドルグ>と<アイシム>とは<エンレンガ>同様、閃が作った魔剣のことだ。

 どんな能力かはおいおい出てきた時にでも。

 ただ一つ言えることはすごっ! ということだけです。


「そっすねー。あいつらと同じくらいですかね」


『おい閃!! あんな奴らと一緒にすんじゃねぇよ!! オレの方がつえーに決まってんだろうがぁ!!』


 閃の言葉に、文句を付ける勝ち気そうな女の声が響いた。

 その場になんとも言えない空気が流れていますな。

 俺まで気まずくなってきた…。


「………いやいやいや、いやいやいやいやいやいや! まさかとは思うが、まさかお前がそこまで規格外じゃないと信じて聞くが、<サンドルグ>達同様<意思持ち>ですか?」


「………。すごいでしょへぶしっ!!」


 迅の旦那がスパーンと閃の頭をひっぱたく。今のは綺麗に入ったな。迅の旦那は芸人でもやっていけるのではなかろうか?


「アホかお前ぇ!! 魔具が意思を持つなんて前代未聞なんだぞ!? それを…、それを三つも作りやがって!! 見つかったらいい研究対象になっちまうぞ!! ひょいひょい出してんな!!」


 迅の旦那は心配してくれているのです。

こんな魔具が見つかったら、魔具はもちろん閃本人も研究対象にされてしまうかもしれない。そうなったら閃が気に入ってる今の生活も出来ないのだ。

 やっぱり迅の旦那はいい人ですね。閃はもうちょい考えた方がいいわ。


「むぅ…、それは困る」


 閃はお心遣いが伝わったのか、しゅん…とした感じで答える。

 閃自身も作者、言うなれば魔具達の親であるから、良い使い手に使ってほしいと思っている。研究なんぞに使われるのはかわいそうである。


「だったら簡単にこんな所で出すな。誰が見てるかも分からん」


「そう、ですね…。金がないのと、迅の旦那なら良く使ってくれるだろうと思って焦りすぎました。すんません」


「あぁ、今度から気をつけろ」


 落ち着いたかな?

 二人とも話を終え一段落かと思いきや、そこで声をかける者? 物? がいた。


『おい閃聞いてねぇぞ! オレがなんで売られなきゃいけねぇんだ!! オレはゼッテェお前から離れねぇかんな!!』


 <エンレンガ・ラ・キュラー>は閃がお気に入りらしい。

 そりゃ自身を普通に使ってくれるのは閃ぐらいだ。迅の旦那でも先程の炎の竜を20回以上作れないだろう。閃のチート能力すげぇ。

 あとは閃の魔力がうまいとも今言っている。魔剣は魔力を味わうようです。魔力質が関係しているのだろうか?

 閃に依存するのも分かる。


「我が儘言うなよ。お前だって使ってもらう方がいいだろう?」


『閃が使えばいいだろ? お前以外にオレをまともに扱えるやつなんざいねぇよ。他国に行くときとか、魔具の素材取りに行くとかに魔獣と会うんだからその時使ってくれりゃいいじゃんか!!』


「ん〜…、そうは言ってもな…。なぁ、分かってくれよエレン」


『そ、そそそ、その名で呼ぶなぁ!!』


 閃と<エンレンガ>もといエレンは言い争っていて周りが見えていない。

 周りの人達はまだ大道芸かと思っているらしく、お金が閃の足元に投げられています。面白すぎる。笑笑笑

 迅の旦那は呆れて頭を抱えております。誰かこれを止めてくれ…と呟くが、周りの喧騒に掻き消され誰の耳にも届くことはなかった。




〜10分後〜



「で? 終わったのか?」


「あはは、すいません。結局こいつは売れなくなっちゃいまして…」


『それでいいんだよ!!』


 エレンは嬉しそうに言った。

何だかんだ言って謝っている閃も嬉しそうなのは気のせいではないだろうさ。


「気にするな。どっちにしろ俺には使えなさそうだ。もうちっと燃費がいいものはないか?」


「それならもう一つ新作がありますぜ、旦那」


 また人懐っこい笑顔を浮かべて揉み手をしながら近づいて来る閃。なんかウザい。


「また武器か? おいおい、もう<意思持ち>は勘弁だぞ?」


 迅の旦那は冗談でも言ったのだろう。笑いながら言った。確かにそんなホイホイと出されても困るというものだ。

 しかし冗談で終わらない規格外な男、閃。期待は裏切りませんよ?


「そうですか…。そりゃ残念」


 この反応からも分かった通り、こいつは<意思持ち>をまだ作っていたらしい。どうやったらそんなものが作れるのか疑問である。

 旦那ももう何も言うまい。人前で出さなきゃいいんだから。


「………お前、俺以外に勧めてないだろうな?」


「いえいえ。迅の旦那と天音(あまね)さんぐらいっすよ」


 天音さんとは、ギルドNo.3<水姫>の二つ名を持つSランクの人だ。

 やわらかい物腰で昔っから閃を可愛がっている。つか溺愛している。それに閃の作った魔具を初めて買ってくれた人でもある。閃にとって姉のような存在なのだ。ちなみにとてつもない美人さんです。

 旦那も天音なら大丈夫だろうと思い、話題を変えた。


「ちなみにどんな剣なんだ?」


「いえ、今回は剣じゃなく鎌ですよ」


「鎌? お前鎌なんかも使えるのか?」


 旦那の疑問はもっともだ。

 自分の扱えるものでないと、出来の良し悪しなど分からない。それを心配しているのだが、


「ええ、使えますよ。つか、だいたいの武器なら扱えます」


 あぁ、そういえばそうだ。

 こいつは魔法の原理とかは理解できるのに、何故か魔法は発動しないから魔具職人になったんだっけ。今まで苦労して武術学んだって言ってたなぁ。……俺でも勝てるか分からん。

 以上、迅の旦那の独り言。


「そんなことより、今回の鎌<フウロク・ノ・シラベ>は風の鎌です。風を使って、鎌鼬、竜巻、アイキャンフラーーーイ!! といろんなこと出来るんすよ!! エレンと同じく自信作です!!」


『まあ、オレの方が強いに決まってるけどなぁ!!』


「………閃、そいつしまえ」


「うぃっす」


 うるさかったのかエレンをしまっちゃいました。


「にしても……、ホントにお前はすさまじいな」


「それほどでもあるかな!!」


「うん、まぁ褒めてるんだがムカつくな。やっぱりお前は人間だと認めん」


 調子に乗りまくってる閃と少し顔をひくつかせる旦那。この人たち見てると退屈しんくていいね。


「あっ、そうだ!! 面白いもんがあるんで見てってくださいよ」


 そう言って<BOX>の中を漁りだした。旦那も少し興味を示し、ワクワクした面持ちである。

 閃はようやく見つけだしたのか、じゃじゃーん! と言いながら勢いよく取り出し目の前に持ってくる。


「閃様の自信作第三弾!! <ワールド>です!!」


「<ワールド>? 世界ってことだよな?」


 旦那は名前の意味が分からず首を傾ける。かわいくはない。


「はい。その名通り異世界に行ける魔具です!!」



シーン



 旦那は反応を示さない。

 そりゃそうだろう。いきなり異世界に行けるとか言われても…。普通の人なら笑い出すか、閃の頭の心配をするかだ。

 だが旦那は違う。旦那が考えていることはただ一つ。

こいつならやりかねん…。


「一つ質問だ。なんで異世界に行けると分かる?」


「少し前に空間制御の魔具を作っていたら偶然できまして。石に発信機付けて作動させたら、消えた石はこの世界にはないっぽいんですよ。何回やってもそうなんで、異世界かな? と」


 旦那はこの日何回したか分からない呆れ顔をした。

 こいつの規格外っぷりは世界をも渡りやがった……。以上迅の言葉から引用。


「このボタン押せば発動しますけど…、やってみます?」


「やってみません!!」


 この軽い雰囲気からかいつものように、スパーンと気持ちよく叩いた。

 この行動を旦那は後々後悔するのだがやってしまったものはしょうがない。ボタンの上に置いていた閃の指が叩かれた勢いで動いてしまったのだ。



ポチッとな♪



 やっちゃいましたよ。ええ、閃君押しちゃいましたよ。


「あれ? ……………はっはっはっ、押しちゃったよ…。やっちまったよ…。はぁ…。迅の旦那、離れてください。巻き込まれちゃいますよ?」


 もう開き直り爽やか〜な笑顔で告げる閃。痛々しい!! もうものすごく痛々しい!!

 もう閃君は諦めたようだった。


「お、おぅ…。なんか…すまんな」


 旦那はそろそろと後ろに下がる。光に包まれた閃を見ながら謝罪する。

 さすがの旦那でもどうしようもないみたいだ。


「それじゃ、行ってきます」


「あぁ…。ホント、ごめん…」


 そんな言葉に笑顔で返してくれるのだが、本当に痛々しいです。

 よりいっそう光が強くなり閃がこの世界から消えた。それはもう跡形もなく。

 ほうけた顔のまま空を見上げ、迅の旦那は呟いた。


「やべぇ…、天音に殺される…」



それでは、異世界編ようやく始まりま〜す。

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