婚約破棄された伯爵令嬢は、護衛騎士の一途な溺愛で救われます:シリーズ
婚約破棄された令嬢を娶った護衛騎士は魔物討伐に向かう~無事に帰れますように~
本編はリック視点です。4作目と見比べると、すごく面白いと思います。
1作品目=婚約破棄「N6378MQ」
2作品目=溺愛日常「N7480MQ」
3作品目=王宮事件「N6257MS」
4作品目=魔物討伐「N0414MT」
「リック〜!」
リックの自室の扉をノックもせずにアイヴィーが開ける。
「姉上ぇ…時間考えてくださいよぉ〜…まだ、朝日も昇ってないじゃないですかっ!それに、ノックしてください!」
リックは、ベットからモゾモゾと起き上がり目をこすりながら言う。
「弟の部屋にノックする必要がありまして?それに、緊急事態なのよっ!」
よくみると、アイヴィーの肩は上下に激しく動いている。
ここまで走ってきたのかもしれない。
「緊急事態とは何でしょうか?」
リックは、ベットの横に立て掛けてある剣を右手で握る。
「陛下からの招集がかかったのよ!」
リックは、アイヴィーからの話を聞いてフリーズする。
「は…?いやいやいや…なんで姉上が伝えにこられたんですか?本題別…?」
リックは一気に目が覚めた。
「え〜っと…あなたが…殿下がね、部屋同じなんだけれども従者が来て『リックが魔物討伐に行く』とか言い出すから、飛び出してきちゃったわ!」
アイヴィーの寝巻き姿にはそんな理由があったらしい。
「なるほど…わかりました。で、どこに向かえばいいのですか?」
リックはベットから起き上がり、シャツを脱いで着替える。
「なっ!私の目の前で着替える必要はないじゃないの!」
アイヴィーはリックの筋肉を見て顔を赤らめる。
「部屋の扉をノックしなくていいのならば、かまいませんよね?それで、場所はどこなのですか?」
リックはシャツのボタンを黙々と止める。
「殿下の執務室よ」
アイヴィーはラックに背を向けている。
「わかりました。姉上…一つお願いがあるのですけれども…」
リックは騎士の制服に早変わりしていた。
だが、その表情は暗い。
「なにかしら?」
アイヴィーはくるりと半回転して、首を傾げる。
右手はほっぺたに当てている。
「姉上は僕が向かうことを知らなかったことにしていただけませんか?そちらのほうが......リリアナを混乱させなくて済みそうなので......」
リックは、アイヴィーの肩を左手で叩く。
右手は剣を握っている。
「......えぇそうね」
アイヴィーは小さくうなずく。
だが、この二人が視線を合わせることはなかった。
「一応言っておきますが、貴方の現在の所属は『近衛騎士』ですわよ?それから、私は入室できないそうだから、一人で行きなさい。くれぐれも楚々をしないように」
アイヴィーは部屋を立ち去り際に言った。
「え……?近衛騎士?なんで......僕は伯爵様の騎士だよ?」
リックは戸惑いと動揺を隠しきれないのか、視線が右往左往する。
「いいえ......表では私直属の護衛官なのよ。まぁ、リリアナちゃんも私の侍女だから一緒にね?」
「あ……」
リックは思わず言葉を失ってしまった。
「なんだかうれしそうじゃないの」
アイヴィーは扉に手を掛けながら言う。
「いえ......リリアナと一緒というのが嬉しくて......」
リックは思わず口を左手で覆い隠す。
耳は真っ赤だ。
「リック......貴方、私のかわいい侍女に手を出したらゆるさなわよ?覚悟しておきなさい。貴方たちの雇い主が誰なのかをゆめゆめお忘れなきよう」
そう言って、アイヴィーは部屋を出ていった。
「危うく、剣を鞘から抜いちゃうところだったじゃないか......殺気込めすぎでしょう。というか、妻に手を出して何が悪いんだ?」
リックは、剣をじっと見つめている。
◇◇◇◇
「失礼いたします」
リックは、王太子の執務室に入った。
すると、目の前には国王と王太子が神妙な顔つきでソファに座っている。
「座ってくれ」
王太子は流れるように手で目の前のソファを指さす。
リックは、そのまま席に座った。
「リック…そなたには魔物討伐の先発隊である第一大隊を指揮し、ルーフの森へと向かって欲しい!」
座った瞬間、国王が言う。
その顔はやつれており、目の下のクマが酷かった。
「僕が……ですか?あっ!し、失礼いたしました」
リックは思わず言ってしまったが、不敬罪になりかねないと思い、急いで謝る。
「すまない......新婚の君に行かせたくはないのだが、君の力を借りるほか方法がないのだっ!力不足で申し訳ない。国内の警備もあり、割く人員が……」
すると王太子が、深々と頭を下げてきた。
それに国王も続く。
「一介の護衛騎......近衛騎士などに、頭を下げるのはおやめください!それに、僕にも噂は届いていました......覚悟は出来ています」
リックは、2人の様子に慌てる。
ありえないのだ。
いくら王太子妃の異母弟とはいえ、ただの近衛騎士に王族が頭を下げるなど。
「本当か?!助かる......必ずや褒美を与えよう」
国王は急に顔を上げてリックに向かって言う。
「一つだけお願いしてもよろしいでしょうか」
リックはだめもとで聞いてみる。
国王と王太子は大きくうなずいた。
「妻と姉を......リリアナとアイヴィーを守ってほしいのです。姉上は狙われています。その巻き添えという形でリリアナも……今までは僕が守っていましたが、長期遠征となると不可能なので......その」
「約束する!私も、妻を狙うものを許せない……なぁ、リック。同盟を結ばないか?」
王太子は食い気味に返事をする。
「同盟......ですか?」
リックは瞬きを3回する。
「あぁ......そうだなぁ~『妻を守る会』とでもいうのか?正直私は君がうらやましいよ......どうやったらアイヴィーを止められるのか......教えてほしいものだ」
王太子はどこか遠くを見るような目をした。
「姉上の行動を予測して先回りするのです。おそらく、講義しに来るでしょうからねぇ......」
リックは、笑いながら言った。
「なるほど......さすが弟の言うことは違うなぁ」
王太子は腕を胸元で組み、大きくうなずいた。
「すまないが、リック。其方の実力に甘えるような結果となってしまい、申し訳ない。余の力不足だ。よろしく頼めるか?王命ではない……これは、お願いだ」
国王は、申し訳なさそうに言う。
リックは席を立ちあがり、片膝を2人の前でつく。
「はっ!名に誓って、その任務やり遂げましょう」
リックのその返事に国王は口元をほころばせる。
◇◇◇◇
「じぁあ、行ってくるよ!リリアナ、姉上!そして殿下!」
リックは、馬に乗る。
服は騎士の制服であり腰には剣が下げられている。
(まさか、その日のうちに出発になるとはなぁ。それだけ事を急いでいるのだろうけど、)
「待って!リック…これを!ハンカチを差し上げるわ!手紙もあげる!あと、手紙ちょうだいね?」
リリアナは、泣きながらリックに手渡す。リックは慌てて馬から降りて受け取る。
「ありがとう…愛してるよ、リリアナ!できるだけ早く戻ってくるから、それまで待っててね」
リックは、リリアナの頬にキスをする。
「リック…これを持っていくといい…せめてもの詫びだ」
王太子は、リックに装飾のついた立派な剣を渡した。
「よろしいのですか?」
リックは、その剣を見て言う。
「あぁ」
王太子は優しく微笑む。
「ありがとうございます!王太子殿下!」
リックは笑顔で受け取る。
「『王太子殿下』か。アイヴィーが姉上なら私は兄上で構わないが?なんなら、セルジオでも構わんぞ?・・・・・・・・」
王太子は、右手で顎を撫でながら言う。
後半は、リリアナたちに聞こえないように小声だ。
「流石に恐れ多いので、セルジオ様と呼ばせていただきます。・・・・・・・・・・・・・・」
リックは笑顔で言う。
「ははは!!それでいい!リリアナ嬢のことは任せておけ。アイヴィーの側に置いておけば、護衛を増やしても問題ない…」
リックの耳元で王太子は言った。
リックは、目を見開く。
そして、「ありがとうございます」小さく呟いた。
「期待しているぞ?弟そして・・よ」
王太子は、リックに向かって言う。
「えぇ、必ずや。・・・・・・・・・・」
リックは片膝をつき、王太子の手から剣をもらう。
「では、行ってきます!」
「ご武運を!」
◇◇◇◇
一行はルーフの森につき戦闘態勢に入っていた。
「隊長!前方に大型の魔物の群れです!」
隊員の一人が叫ぶ。
「1人で戦うな!5人一組で1体相手しろ!」
リックは、即座に対応する。
「だめです!数が多すぎます!1組2体相手をしなければ!」
「右が崩れました!」
「ぎゃあぁぁぁあ!」
「けが人複数!」
「うわぁぁぁ!!!」
あちらこちらから声が上がる。
「チッ......俺は右の端にいる!相手できないやつらは誘導しろ!」
リックは、馬を全速力で走らせる。
「隊長はどうなさるんですか?!」
「俺が負けると思うか?」
リックの表情はいつもと違う。口調もだ。
何か、戦場を楽しんでいるような雰囲気が漂っている。
ざしゅ!
ぐさっ!
リックが続々と、魔物を切り倒していると一騎リックのところへと向かってくる。
「隊長!まともに戦える人が半数以下です!どうしましょう」
その男はそういうが、右肩から血がにじんでいる。
リックは、魔物を本隊から反対の方向に追い払う。
そして、急速に方向を変えその男の元へと走らせる。
「前線で戦っていて、無傷で怯えていない者をかたっぱしから連れてこい。残りは帰還し、手当と住民の避難を急げ。広域魔法を使う......直ちに撤退だ!あとは、残った者たちの中から火魔法が使える者に、魔物を燃やせと伝えろ。頼んだぞ!あとお前は帰還しろ。けがを治せ」
リックは早口で言う。
その肩やほほ、全身には魔物の返り血がびっしりだ。
「は、はい!」
その男はそのままさっていった。
「あぁ~きりがない。でも、リリアナのためだ!全部かたずけようか」
リックは、馬を降りる。
馬はそのまま町の方角へと逃げたのを確認し、剣を大きく下に振る。
すると、血が飛び散った。
「まだかなぁ~魔法使えないのに」
ひゅっ
しゅぱ~ん
どんっ
「隊長!!!!」
声がして、リックが振り返るとそこには数十騎がいた。
「はやかったな。早速だが、少し距離を取れ」
リックは、急いで引き下がる。
「魔法使うんですよね?」
隊員の一人が言う。
「ふっ......話が早くて助かるよ。君たちには打ち漏らしを何とかしてほしい……何騎いる?」
リックは、顔の血をハンカチで拭う。
「43騎です!って隊長聞いていますか?」
「......ぁくだ!」
リックは剣を鞘にしまい、ハンカチを見つめる。
「はい?」
「どういう意味ですか?」
「隊長?」
隊員一同は意味が分からず困惑する。
「妻がくれたハンカチを血で汚してしまった......早く洗わねば落ちないじゃないか!」
「え?」
「大丈夫ですか!」
「なんで、泣いてるんだ?」
「なんか、気迫が……」
隊員はリックのその様子にびっくりしている。
「我倒さんことを願う。我が願いにこたえ、凍てつく水となせ。水よ悪しきものを滅ばせ、世界に祝福を与えんことを......アクア・ヴェール」
リックは、詠唱を始める。
すると、リックの周囲は青色の光で包まれ、足元の魔法陣はどんどん巨大化していく。
「嘘だろ......」
「どんだけでかくなるんだ?」
「どんな魔力だよ」
「え……」
「狂犬だ......」
困惑する者、真実を疑う者、幻覚だという風に言う者。
皆が、リックの魔法を信じられない。
ぐわぁぁあぁぁぁぁ!!!!
魔物の叫び声が周囲に轟く。
リックの水魔法は魔物の頭部に張り巡らされたからだ。
「さ、終わったよ!早く戻ろう!……ぴーっ!打ち漏らしは?」
リックは笑顔で振り返る。
そして、口笛を1度吹く。
「1体もないですよ?」
「何も......」
「返り血が!」
「血塗られ隊長......」
隊員の複数人が片手をあげてそういう。
「この中に火魔法使える人いる?」
リックの呼びかけに手を挙げたのは6人だった。
「じゃあ、君たち6人はこの魔物を燃やしてくれないか?」
リックは、笑顔で隊員たちに言う。
だが、隊員はなぜかわからないようできょとんとしていた。
「これにつられてもっと強大な魔物が来かねない。もちろん素材も大切だが、一刻も早くハンカチのために帰還せねばならぬゆえ、頼むっ!」
リックは、大声で言った。
「奥さんは幸せ者ですね~こんなに愛されて」
「いやぁ、本当に」
「僕たちにお任せください!ね、みんな」
『あぁ』
そのまま、隊員たちはすべてを燃やした。
リックは、森の草木に燃え移らないように魔法を巧みに操る。
だだっだだだだ!!!!
馬の足音が遠くから聞こえてくる。
「ルイ~!ここだ!」
リックのその発言に、隊員一同は不思議に思った。(何だろうか)と。
「あぁ......お帰り。待っていたよ」
鹿毛の馬が現れた。
「隊長......ルイって?」
気になった隊員の一人がリックに聞く。
隊員全員の言葉を代弁するかのような一言だった。
「僕の愛馬だよ!可愛いでしょう?今ね、5歳なんだ。軍馬で耳が良くて賢い子だよ。合図を送れば特定の数か所なら自動で連れて行ってくれる。すごいだろう?」
「はぁ......かわいいですね」
隊員はすこし呆れていた。
「さ、ルイも戻ってきたことだし帰還!」
◇◇◇◇
「ただいま~!」
リック一同は、テントに戻った。
「ひっ!」
「うっお!」
「きゃぁぁぁぁぁ!!!」
リックが通るたびに悲鳴があがる。
「あれ?」
リックは、足を止めた。
「隊長血ですよ!!!」
気を使った隊員が言った。
リックは、水で自分の姿を恐る恐るのぞく。
「あちゃ~......そりゃ言われるわ」
リックは、自分の服の色や髪色が変色していることにやっときずいた。
そして、いそいで水を浴びる。
「うわ......色透明じゃなくなった」
リックは水の色を見て、いかに汚れていたのか改めて思い直す。
「間に合わなかった......ハンカチ。リリアナ、ごめん!」
◇◇◇◇
「隊長~!奥様からの手紙が届いていますよ!」
リックがちょうどタオルで体をふいているときのことだった。
「え!」
リックはその手紙を電光石火の早業で開ける。
すると、一気に顔がゆでだこになってしまった。
「隊長?へ......」
「何々?きゃあ~」
「俺も、こんな手紙ほしい」
◆◆◆
私の騎士様へ
元気にしてらっしゃる?
最近は心配で夜も眠れません。
今すぐに会いに飛んでい来たところですが、姉上が許してくれないのです。
本当は今すぐにでも抱きしめてほしいくらいよ。
それくらい、会いたいの。
怪我なんてしていないわよね?
でも、私の旦那様は世界で一番強くて頼りになって、私を助けてくれるもの。
怪我なんてしないわ。
そう思っているの。
思いのほか、王太子殿下が良くしてくださって毎日が楽しいわ。
姉上も楽しそうだもの。
私ね、あなたと結婚出来て世界で一番の幸せ者だわ。
無事に帰ってきてください。
王城にて待っています。
貴方の愛する妻より
◆◆◆
「返事を書くから入ってこないように」
リックは隊員たちにそういう。
「どんな内容書くんですか~?」
隊員が聞く。
「秘密だ」
読んでいただき、誠にありがとうございます。
本作を読み「面白い!」「続きが気になる!」「二人が好き」「リックがかっこいい」と感じていただけましたらぜひ【ブックマーク】や【評価★★★★★】で応援してくださると幸いです。
〜次回予告〜
次回は、リリアナ・リック両方の視点を混ぜようかなと思っています。
お話まだまだ続くので、応援よろしくお願いします!




