協力プレイ
拠点の端。
人の気配が薄い場所で、新は皐月を呼び止めた。
「……さっきのことなんだけど」
「うん?」
皐月は、少し緊張した顔でこちらを見る。
「お前さ」
新は一度言葉を選び、
それから、はっきり聞いた。
「プレイヤーか?」
皐月は、目を見開いた。
「え?」
数秒の沈黙。
「……なんで、それ知ってるの?」
新の胸の奥で、何かが噛み合った。
——当たりだ。
皐月は、
“プレイヤー”という言葉を知っている。
「やっぱりな」
新が呟くと、
今度は皐月が戸惑ったように眉を寄せた。
「……え?
じゃあ新は?」
恐る恐る、聞いてくる。
「NPC……じゃないの?」
その言葉は、
新の中で妙な響きを残した。
「どうして、そう思った?」
「だって……」
皐月は視線を泳がせる。
「新、全部知ってるし。
それに、そもそもプレイヤーって
私だけだと思うじゃん!」
新は、思わず苦笑した。
「まあ、俺も皐月のこと
NPCだと思ってたけどな」
沈黙が落ちる。
ただ、一つだけ疑問が残った。
「皐月。
お前、このゲーム……やったことあるよな?」
「え? ないよ。
初めてだけど……新は?」
新の思考が、一瞬止まる。
「……初めて?」
「うん。
クソゲーって噂は知ってたけど」
軽く笑う。
「正直、ここまでとは思ってなかった」
初心者。
初プレイ。
——それは、おかしい。
精霊術師。
隠しエリア。
システムウィンドウ。
どう考えても、
周回前提のプレイヤー向け要素だ。
「……なるほど」
新は、ゆっくりと思考を巡らせた。
「ちょっと!
私の質問にも答えてよー!
おーい!」
皐月の声が、遠く聞こえる。
新は、それを半分無視して考える。
隠しエンディング。
ログアウト前に表示された、
あの選択肢。
プレイヤー同士の協力が必須なのではないか。
だが、皐月は初心者だ。
とても周回プレイヤーには見えない。
なら、答えは一つ。
「……新規プレイヤー限定、か」
「え?」
「隠しエンディングの条件」
新は言葉を整理する。
「俺、このゲーム
全エンディング周回して見たんだ」
「え? ……あ、すご」
皐月が、若干引いた顔をする。
新は気にせず続けた。
「そのあとで、
隠しエンディングが出た」
「新規プレイヤーと、
“全エンディング踏破済みの存在”が
同時に条件を満たしたときだけ、だ」
皐月は、ぽかんとした顔で聞いている。
「このゲーム、クソゲーだろ」
「うん」
「だから新規プレイヤーが少ない。
しかも、最後まで全エンディング回収するやつは、
もっと少ない」
だから。
「この二つが重なるタイミングが、
ほとんど存在しなかった」
——隠しエンディングが、
誰にも知られていなかった理由。
皐月は、息を呑んだ。
「……じゃあ、今ってもしかして
通常ルートじゃない?」
「ああ」
新は、静かに頷く。
「皐月が
特殊な覚醒をした理由も説明がつく」
「初心者へのアドバンテージとして、
必ず特殊覚醒になるよう
仕組まれてたんだろ」
「……まだ仮説だけどな」
今は、確認が先だ。
「皐月。
精霊術師の能力、試すぞ」
「え、今?」
「ああ」
新は立ち上がった。
「隠しエンディングが本物なら、
そのジョブ、絶対に普通じゃない」
皐月は、不安そうに頷く。
新は周囲を見回した。
トーマスの姿はない。
「……トーマスにバレるわけにはいかない」
新は低く言った。
「拠点の外に出る。
人目のないところで試すぞ」
「う、うん……」
皐月は立ち上がり、
新の後ろに続いた。




