ギルド加入?
新は、次に向かうダンジョンを決めていた。
だが、それを皐月にはまだ伝えていない。
理由は一つ。
そこが――
ギルド指定ダンジョンだからだ。
ギルドに属する者だけが踏み入れられる領域。
今の新と皐月は、無所属のソロ。
入るには、どこかに属するしかない。
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白狼。
真っ先に浮かぶのは、トーマスの顔だった。
あの男のいるギルドは、比較的風通しがいい。
縛りは少なく、設備も整っている。
「迷惑をかけなければ自由」
それが白狼の空気だ。
だが同時に、限界もある。
まだ大規模ギルドには及ばない。
指定ダンジョンの中にも、
白狼では手が届かない場所がある。
——中途半端。
今の自分には、少し物足りない。
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レギュラート。
街を巡回する制服。
整然とした本部。
覚醒者の犯罪を取り締まり、
“秩序”を守る巨大ギルド。
聖火の集いから身を守るなら、
これ以上ない盾になる。
だが。
盾であるということは、
監視されるということでもある。
個人の自由は削られる。
白珠の存在が知られれば、
管理対象になる可能性もある。
そしてレギュラートにしか開かれないダンジョンもある。
力は、圧倒的だ。
だからこそ、軽率には選べない。
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レグルス。
強者が集う場所。
そこでは肩書きも過去も関係ない。
強い者が上に立ち、
弱い者は切り捨てられる。
冷たいが、合理的だ。
個人行動も許される。
だが実力主義ということは、
加入時点で値踏みされるということだ。
白珠を見せれば、注目を浴びる。
注目は、波紋を生む。
波紋は、やがて――聖火の集いに届く。
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(問題はそこだ)
皐月の精霊契約。
自分の白珠。
これを、どこまで明かすのか。
隠せば不信を招く。
明かせば広がる。
(……くそ)
思考が絡まり、結論が出ない。
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「新……大丈夫?」
顔を覗き込む皐月。
考え込みすぎていたらしい。
「いや、ちょっとギルドのことをな」
「ギルド!?」
目が一瞬で輝く。
「入るの!?」
新は、今考えていた三つの名前を口にした。
白狼。
レギュラート。
レグルス。
それぞれの空気。
それぞれの重さ。
皐月は腕を組み、しばらく唸る。
「なるほどねー……」
そして、あっさり言った。
「とりあえず見に行けばいいじゃん!」
「……は?」
「だって考えてるだけじゃ分かんないでしょ?」
あまりにも単純な答え。
だがその瞬間、新の頭の中の霧が少し晴れた。
(確かに)
机上で悩み続けても、進まない。
「実際に見る、か」
「うん!!」
即答。
⸻
新は立ち上がる。
「じゃあまずは、レギュラートのギルド長に接近する」
「え? 普通にギルド行くんじゃダメなの?」
「どうせなら、内部まで見る」
新は、わずかに口角を上げた。
「安心しろ。あのNPCの行動パターンは把握してる」
周回の記憶。
巡回時間。
裏口の位置。
人払いのタイミング。
全部、知っている。
皐月はわくわくした顔で頷く。
「なんか潜入みたい!」
「遊びじゃない」
「分かってる!」
本当に分かっているかは怪しいが、
その明るさは悪くない。
⸻
拠点の扉を開ける。
外の空気が流れ込む。
ギルド選択は、
今後の分岐を大きく左右する。
誤れば、皐月を巻き込む。
慎重に。
だが止まらない。
「行くぞ」
「はい!」
二人は並んで歩き出す。
最初の訪問先は――
秩序の象徴、レギュラート。
正義の名のもとに剣を振るう者たちの巣窟。
新は静かに思う。
(俺の“白”は、あそこに馴染むのか――)
答えは、まだ出ていない。




