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最短ルートに、君はいなかった  作者: りな


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白珠-第二条件


 白い光に包まれた瞬間、

 新の足元から感覚が消えた。


 落下ではない。

 移動でもない。


 ――切り替わり。


 次に視界が戻った時、

 新は石造りの広間に立っていた。


 天井は低く、

 外界の光は一切届かない。


 壁には無数の亀裂。

 床には、黒く乾いた血痕。


 そして――


 目の前に、白い剣士が立っていた。



 数は多くない。


 三体。


 だが、どれも明らかに格上だった。


 一人なら善戦できたかもしれない。

 だが、三人同時は――


(……負けイベントだ)


 理解している。

 それでも、ここで戦う意思を見せなければ

 次の試練には進めない。


 剣を交えた瞬間に、確信した。


 勝てない。


 それでも――

 斬撃は届く。

 技も出る。


 新は歯を食いしばり、

 自分を奮い立たせて剣を振るった。


 しかし。


 相手の動きは鈍らず、

 削られていくのは新の体力だけだった。


「……っ」


 一撃。


 肋骨に、鈍い衝撃。


 二撃。


 視界が揺れ、膝をつく。


(くそ……!)


 あまりの痛みに、

 ここがゲームだという感覚が薄れていく。


 白珠の試練は、

 辿り着くまでが大変なのではない。


 入ってからが、本当の地獄だ。


 完全没入型ゲーム。


 味覚も、触覚も、聴覚も現実と同じ。

 唯一、痛覚だけが通常は三分の一に抑えられている。


 ――だが、この試練では違う。


 痛覚は、三分の二。


 想像以上の痛みが、

 リタイア者を量産する理由だった。


 三撃目は――


 来なかった。



 代わりに、

 声がした。


「……助けて」


 背後。


 振り返ると、

 そこに“人”がいた。


 幼い少女。


 血に濡れ、

 震えながらこちらを見ている。


 三人の剣士のうち、一人が少女に刀を向け、

 残りの二人が新を囲む。


 足元に、

 白い光のラインが浮かび上がった。


 選択肢は、二つ。


 剣を握り続ける。

 ――少女を見捨てる。


 剣を捨てる。

 ――少女を庇い、無力になる。


(……)


 新の喉が鳴る。


 この剣は、

 何度も命を救ってきた。


 迷いなく振るい、

 斬り、進み、生き残ってきた相棒だ。


 それを。


 ここで。


(……捨てなければ)


 そして、捨てた後に何が起こるかも

 新は知っている。


 だからこそ、

 選択は重かった。



 敵が、一歩踏み出す。


 少女が、目を閉じた。


「……お願い」


 その瞬間、

 新は覚悟を決めた。


「……大丈夫だ」


 そう言って――


 剣を、手放した。



 金属音。


 床に落ちるはずだった剣は、

 空中で白い光に包まれ――


 砕けた。


 音もなく、

 粉々に。


 光の粒子となって、完全に消滅する。


 戻らない。

 修復も、回収も、不可能。


 新は、丸腰になった。


 待っていたかのように、

 剣士たちが襲いかかる。


 正面の二人が、容赦なく剣を突き立てた。


 激痛。


 意識が、遠のきかける。


(耐えろ……まだ、終わってない)


 三人目が、崩れた新に追撃をかける。


 その瞬間――

 新は地面を掴み、砂を掴み取った。


 思い切り、投げつける。


 一瞬の隙。


 新は転がるように立ち上がり、

 少女のもとへ駆け寄った。


 白いゲートが、現れる。


「大丈夫だ」


 息を切らしながら、少女に言う。


「さあ、逃げろ」


 剣士たちの攻撃を受けながら、

 少女がゲートに飛び込むのを見届ける。



 次の瞬間。


 忌々しい剣士たちは、

 霧のように消え去った。


 新の傷も、

 まるで最初からなかったかのように癒えていく。


 静寂。


 自分の呼吸音だけが、広間に響く。


 新は、膝をついた。


(……これでいい)



 白い光が、再び集まる。


【第二の条件、確認】

【合格】


 その表示が消えた直後。


 新の前に、

 新たな祭殿が現れた。


 円形の舞台。

 観客席のような、影。


 そして中央に――


 宙に浮かぶ、

 白く透き通った一振りの刀。


 白珠。


(……次が、最後だ)


 美しさ。


 誤魔化しは効かない。


 力でも、知識でもない。


 剣士としての――

 在り方そのものが問われる。


 新は、深く息を吸った。


「……来い」


 影の中で、

 魔物たちが、静かに動き出す。


 白珠の試練――

 第三条件が、始まろうとしていた。


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