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最短ルートに、君はいなかった  作者: りな


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19/26

突然の訪問者

夜。


 拠点は静まり返っていた。


 装備の手入れを終え、

 皐月が水を飲もうと立ち上がった、その時——


 コン、コン。


 乾いたノック音。


 二人の動きが、同時に止まる。


 新の脳裏に、

 真っ先に浮かんだのは——聖火の集いだった。


 新は即座に立ち上がり、

 無言で皐月の前に手を伸ばす。


「下がれ」


 低く、短い声。


 皐月は何も言わず、

 一歩、後ろへ退いた。


 新は扉の前に立ち、気配を探る。


 敵意はない。

 だが、安心できる要素もない。


 新は、扉を開けた。



「やっほー」


 場違いなほど明るい声。


「メイトだよー。

 お邪魔するね!」


 そこに立っていたのは、

 相変わらず人懐っこい笑顔の少年だった。


 皐月が、思わず目を見開く。


「……え?」


「ここが、どうして……?」


 メイトは肩をすくめる。


「僕は割と凄腕の情報屋だよー。

 居場所くらい、すぐ分かるって」


 そう言うと、

 まるで自分の部屋のように中へ入り、

 テーブルに腰掛ける。


 新はため息をつきながら、問いかけた。


「……何の用だ」


「お金」


 即答だった。


「前に話してた代金を、払いに来たよ」


 新の視線が、鋭くなる。


「……師匠を殺したか」


 空気が、一瞬だけ凍りつく。


 だが。


「えー!」


 メイトは大げさに目を丸くした。


「そんな物騒なことのために

 探してたわけじゃないよー」


 ニコニコと笑う。


 その笑顔に、

 一切の温度はなかった。


「嘘をつけ」


 新は言い切る。


「殺せなかったか、

 取り逃したかのどっちかだ」


 メイトは楽しそうに手を叩く。


「いやー、驚きだよ新くん」


 テーブルから立ち上がり、

 覗き込むように新へ近づく。


「情報屋の僕ですら知らないことを、

 どうやって知ったのか……」


 笑顔のまま、

 目だけが冷える。


「気になるなー」


「企業秘密だ」


「残念!」


 即座に、軽い笑顔に戻る。


 メイトはテーブルの上に、

 袋を置いた。


 じゃらりと、金属の重たい音。


「お金は、ここに置いておくね」


 皐月が、思わず息を呑む。


「……これ、全部?」


「うん」


 メイトは軽く頷く。


「約束だから」



 踵を返しながら、

 メイトは振り返った。


「また情報があるときは声かけてよ」


 にこやかに。


「もちろん、

 欲しいときもね」


 そして、ほんの少しだけ声を落とす。


「友人割引、してあげるから」


 扉が閉まる。


 気配が、完全に消えた。



 沈黙。


 しばらくして、

 皐月がようやく口を開く。


「……今の人」


「情報屋だ」


 新は短く答えた。


「信用していいんですか?」


「するな」


 即答だった。


「だが、使える」


 新はテーブルの金袋を見る。


「敵でも味方でもない」


 少し間を置いて、付け加える。


「……俺が、

 あいつの欲しい情報を持っているうちは平気だ」


 皐月は、

 静かに頷いた。


 拠点には、

 金属の重さと、

 言葉にできない不穏だけが残っていた。


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