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最短ルートに、君はいなかった  作者: りな


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16/25

新たな能力

 新と皐月は、拠点へと戻ってきた。

 あの場所に、これ以上留まるのは危険だと判断したからだ。


「……戻ってきましたね」


 皐月が、小さく息を吐く。


「ああ」


 新は周囲を確認してから言った。


「まずは確認だ。スキルウィンドウを開け」


「はい」


 皐月が頷き、意識を集中させる。


 一瞬遅れて、

 彼女の表情がわずかに変わった。


「……増えてます」


「読め」


 皐月は表示をなぞる。


「《ライフ・ツリー》……強化」

「《グレート・ウッド・ウォール》……拡張」


 そこまでは想定内。


 だが。


「……水、系?」


 皐月が首を傾げる。


「《クリア・ウォーター》」

「状態異常の軽減……?」

「《ミスト・ヴェール》……視界遮断?」


 新は、少し考えてから言葉にした。


「あの上位精霊は、水の精霊だったらしい」


「じゃあ……」


 皐月は目を瞬かせる。


「これからは回復だけじゃなくて……」


「ああ」


 新ははっきりと言った。


「支援、妨害、防御。

 完全にパーティ向けの構成だ」


 皐月は、少しだけ複雑そうな顔をする。


「……派手じゃないですね。

 攻撃系の力、欲しかったなー」


 新は思わず苦笑した。


 自分が初めてこのゲームを始めた頃、

 まったく同じことを考えていた。


「お前の力は特別だ」


 新は、真剣な目で言う。


「それに、今後攻撃系の力が手に入る可能性もある」


「……!」


 その言葉に、

 皐月はぱっと表情を明るくした。


「じゃあ、そのためにも……」


「ああ」


「レベル上げ、頑張らないとですね」


 皐月は、その言葉を噛みしめるように頷いた。



「MP消費は?」


「……高いです」


 即答だった。


「水系スキルも、結構持っていかれます」


「なら運用は変わらない」


 新は淡々と言う。


「前線は俺。

 皐月は後方で制御だ」


「了解です」


 その返事には、

 もう迷いはなかった。



 一方その頃。


 生活区画。


 人の往来が多い通りで、

 白を基調とした服を着た集団が動いていた。


「おはようございます」

「道、汚れてますね。今、片付けます」


 穏やかな声。


 彼らは黙々と道を掃き、

 壊れた街灯を直し、

 重そうな荷物を運ぶ老人に手を貸す。


「助かるよ」

「最近は物騒だからねぇ」


「いえいえ。困ったときはお互い様です」


 笑顔。

 丁寧な所作。


 誰もが、

 好意的に彼らを見ていた。



 通りの一角。


 簡易的な祈りの場。


 白い布。

 火を模した紋章。


 人々が、自然と集まってくる。


「恐れなくていい」


 穏やかな声が響く。


「火は、浄化です」

「火は、再生です」


「迷える者を、温めるもの」


 人々は、静かに頷く。


「聖火の集いは、皆さんの味方です」


 拍手はない。

 歓声もない。


 ただ、

 安心した空気だけが残る。



 その輪の外。


 フードを深く被った男が、

 地下へ続く方向を見ていた。


「……何者かが地下に潜入しました」


 信者が、小さく囁く。


「奥にあった、あの空間も消失したようです」


 男は、ゆっくりと口角を上げた。


「興味深いね」


 フードを取ると、

 周囲の信者が思わず息を呑む。


「いらっしゃったのですね?」


「もちろんです」


 男は微笑む。


「祈りを、届けましょう」



 ゾクリ、と。


 理由のない寒気が、

 新の背筋を撫でた。


(……今、見られた)


 根拠はない。

 だが、経験だけは否定しなかった。


 新は、無意識に拳を握る。


 聖火の集い。


 善意。

 救済。

 福祉。


 どれも、間違ってはいない。

 だからこそ、厄介だ。


(あいつらは、躊躇しない)


 信じているからだ。

 自分たちが、正しいと。


 そして——

 正しいと信じる者ほど、

 死を恐れない。


「……新?」


 皐月が、不思議そうにこちらを見る。


「どうかしました?」


「いや」


 新は、すぐに表情を戻した。


「少し、嫌な予感がしただけだ」


「嫌な予感……」


「ああ」


 新は外に目線をうつす


「だからこそ、力をつける必要がある」


 それは、

 独り言のようでもあり、

 誓いのようでもあった。


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