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最短ルートに、君はいなかった  作者: りな


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12/16

管理外

 拠点に戻ると、

 ようやく緊張が抜けた。


 新は装備を外し、

 簡易テーブルに端末を置く。


「……弾痕の位置」


 表示されたマップに、

 新は印をつけていく。


「射線、斜め上。

 距離は中距離。

 遮蔽物を把握した上で撃ってる」


 皐月は黙って聞いていた。


「警告射撃だった」


 新は断言する。


「殺す気なら、

 あの距離で外さない」


「……人、ですよね」


「ああ。厳密に言うとNPCだがな」


 新はため息をつく。


「しかも、慣れてるやつだ」


 皐月は、少しだけ肩をすくめた。


「旧生活区画って、

 誰もいない場所だと思ってました」


「“誰も管理してない”だけだ」


 新は端末を閉じる。


「住んでないとは限らない」



「精霊の痕跡は?」


 新が聞く。


「ありました」


 皐月は即答した。


「でも、近づくと……

 遮られる感じがしました」


「……だろうな」


 新は、

 ジョブが発動しなかった皐月の様子を思い出す。


「地上じゃ、遠すぎたんだろう」


「じゃあ……」


「地下だ」


 新は言い切った。


「撃ってきたのが誰であれ、

 地上では無理だった。

 潜るしかない」


 皐月は、少し迷ってから頷いた。


「……分かりました」



 一方、その頃。


 居住地区の別拠点。


 トーマスは、

 ギルドの共有端末の前に立っていた。


「旧生活区画?」


 通信越しに、

 渋い声が返ってくる。


「ええ」


 トーマスは落ち着いた口調で答えた。


「探索者が近づいた際、

 不審な発砲があったとの報告です」


「聖火の集いか?」


「可能性は高いです」


 端末の向こうで、

 短い沈黙。


「……被害は?」


「今のところ、

 死者も重傷者も出ていません」


「なら、

 優先度は低い」


 あっさりとした判断だった。


「旧生活区画は、

 元から管理外だ」


「ギルドとしても、

 介入予定はなし、ということでしょうか?」


「なし」


 即答。


「ギルドに特に関係しない。

 報酬も、実入りもない」


 トーマスは、

 わずかに眉を動かした。


「……了解しました」



 通信を切る。


 トーマスは、

 端末の画面をしばらく見つめていた。


「管理外、か」


 呟く。


 その言葉は、

 便利でもあり、危険でもある。


 誰も見ない場所。

 誰も責任を持たない場所。


 だからこそ、

 何かが残る。



 新の顔が、脳裏に浮かぶ。


 理詰め。

 判断が早い。

 無駄な行動をしない。


(……深入りするなよ)


 トーマスは、

 小さく息を吐いた。


 助言はできる。

 だが、止める権限はない。


 それが、

 今の距離感だった。



 夜。


 新と皐月の拠点。


「トーマスに、

 一度情報を探らせよう」


 新は言った。


「情報を、

 そんな簡単に渡すでしょうか?」


「渡すさ」


 新は即答する。


「ギルドは、

 旧生活区画を問題視してない」


「……ですよね」


 皐月は苦笑した。


「分かりやすい危険じゃないですもんね」


「ああ」


 新は立ち上がる。


「だから、

 解決してくれたら万々歳。

 解決しなくても、別にどうだっていい」


「……割り切ってますね」


「ギルドってのは、そういうもんだ」



「明日、

 トーマスに話を聞いたら、

 そのまま動く」


「地下、ですよね」


「そうだ」


 新は地図を開く。


「入口は、

 あの管理事務所の近くだ」


 皐月は、

 少し緊張した顔で頷いた。


「……明日、行きましょう」


「ああ」


 新は短く答えた。


 地下がどうなっているのかは分からない。

 だが、安全であるはずがない。


 管理されていない場所には、

 管理されていない“意志”がある。


 それを確かめに行くのは、

 ギルドじゃない。


 ——自分たちだ

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